食品メーカー開発奮闘記(9)キッコーマン 大手飲食企業と一体で拡販

1993.07.19 32号 9面

醤油の名門というよりは、食品業界を名実ともに代表する企業がキッコーマン㈱。

世間一般では“複合不況”が長期化、食品各メーカーにおいても価格、簡便性、内食化などの消費動向に対応させた経営戦略をとっているが、このような状況下でも同社はあえて外食市場、業務・加工用分野への販売力強化に取組んでいる。

社内的には昨年4月からスタートさせた業務用営業本部の新設もその対策の一つ。特に全国でも最大の外食消費地である首都圏、それに大阪では業務用・加工用を扱うセクションを業務用営業本部として独立させ対応している。

また、本社は業務用営業本部を一般外食市場を担当する「業務用販売部」それに原料供給業務として「加工用販売部」を設置、さらに業務用販売部は販売先から分類して一課(ナショナルチェーン店、産給、学給、酒販店など)、二課(ホテル、レストラン、居酒屋など)、三課(外食専門卸)とそれぞれきめ細かいフォローをしている。

同社の平成4年3月期の業績概況だが、醤油部門が八一五億六八〇〇万円(構成比五五%)、食品部門一四一億二六〇〇万円(同九・五%)、デルモンテ部門二七六億六八〇〇万円(同一八・六%)、酒類部門二三九億七八〇〇万円(同一六・二%)、その他一〇億九五〇〇万円(同〇・七%)計一四八四億三七〇〇万円(前期一四五六億八〇〇万円)。

また、昨年は景気後退の中で外食市場が不振、食品メーカーは各社とも業務用部門については伸びが鈍化、その取組みではやや苦戦を強いられたが、この面では同社は醤油というベーシック調味料をメーンに中華ソース、昆布、鰹などの「だし醤油」、焼鳥、どんぶり、かばやきなどの「各種たれ類」、そして経済性もあり酒類の「各種焼酎類」が貢献、業務用部門でも前年対比約六%増という手堅い数字を確保した。

一方、こうしたなかで今期以降の外食分野への取組み姿勢だが、メーンの醤油ではローリー、一㎏コンテナなどで納入する、加工用では色、香りを変えるなどユーザーに対応させた商品アイテムの開発、一般業務用についても小袋商品の拡充強化など、より小回りをきかせた販売、さらにここ数年伸びが高い各種たれ類についても、大手飲食企業などと一体となっての拡販など力を入れていきたいとしている。

さらに同社、ヒゲタ醤油の販売も兼ねているだけに、この面ではそば屋ルートはヒゲタ、中華ルートではキッコーマンなど、それぞれの特徴、持ち味を生かした拡販、企業努力を重ねていく方針。

いずれにしても、キッコーマン、従来はともすれば市販用が圧倒的に強く、外食・業務用、加工用分野への取組みが不得手、弱かっただけに、その意味では昨年の業務用営業本部の設立を機に、業種、業態など複雑、多様化、しかも幅広い外食市場の中でどう商品開発など生かされていくか、動向、期待は大きい。

《会社メモ》▽キッコーマン㈱

▽本社・千葉県野田市野田三三九、℡0471・23・5111

▽代表者・中野孝三郎

▽主要業務用商品‐各種たれ類、中華ソース類、ステーキソース類、加工調味料、醤油類

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