町で見つけた感動のすごい店:大阪市西成区「スーパー玉出 岸里店」
大阪市西成区は、簡易宿泊施設が立ち並ぶ愛隣地区や、赤線の名残りそのままの飛田新地を抱えるディープインパクトな地域だ。その西成地区の近辺で、パチンコ店そっくりの大看板と色とりどりのネオンがきらめくド派手な食品スーパーを発見。大阪のオバちゃん顔負けのパワーが炸裂する浪花の下町スーパーは、まるで30年前のダイエーやニチイのような活気に満ちていた。
◆ド派手な看板と装飾で集客
街の灯りが減った深夜の西成区岸里付近を走行中、煌々と輝く黄色の巨大看板に赤色の文字で「スーパー出玉」と書かれた店を発見した。最初はパチンコ店かと思ったが、よく見ると「出玉」ではなく「玉出」で、深夜営業中の食品スーパーである。なんとなく面白そうな予感がし、夜食を買いに立ち寄った。
店内は至る所に明るいネオン管が張り巡らされていて、ラスベガスに来たような雰囲気。ディスカウントストア「ドン・キホーテ」にも似ているが、大阪だけにもっとコテコテだ。「玉出名物1円セール!」とうたった激安チラシの商品が目につく。多少の条件付きだが、豆腐やアルミホイルなどの特売商品がたったの1円で買えるのだ。深夜なのでコンビニと同様にお客は若年層が中心、外国人のアルバイト店員が黙々と作業をこなしている。
◆創意工夫が光る惣菜弁当
惣菜弁当コーナーはボリュームタップリの激安商品が満載だ。手作りのお値打ち品も多い。造花やでんぶで店の装飾と同じくらい派手に盛り付けた「ウナギ弁当」や「エビづくし弁当」、はみ出した具と複雑な形のバランとで門松のように飾った「サラダ太巻き」など、手の込んだ力作も結構ある。
「鮭ごはん」ひとつとっても、長方形の容器に詰めた白飯の両端にサケフレークをのせ、真ん中に昆布の佃煮を置いている。赤・白・赤と並んだツートンカラーはカナダ国旗、昆布はさながらメイプルリーフだ。たかが128円の「鮭ごはん」でも決して手抜きはしていないし、「麻婆豆腐」とて真ん中に鮮やかなピンク色のエビをのせた特別仕様になっている。
いろいろなところに創意工夫が施され、豊かな個性をいかんなく発揮している。仕事柄日本中の惣菜弁当コーナーを見ているが、これほど活気のある売場は珍しい。思わず弁当を4個も買ってしまった。
◆大阪最強のローカルスーパー
あまりの感動に、翌日も岸里店周辺にある「スーパー玉出」の店を何軒か見に行った。「スーパー玉出」は本社のある西成区だけで9店舗出店しているが、同じ区内でも地区によって客層がことなるため、品揃えだけでなく価格や盛り付け方まで店によって変えているようだ。効率化のために日本全国どこの店でも同じ商品しか取り扱わない大手量販店とは対極的だ。
確かに店によって商品のバラツキはある。大阪に住む中流以上の人にとっては安かろう、まずかろうの店なのかもしれない。でも支持するお客は確実にいる。「スーパー玉出」のおかげで食生活が豊かになった人もたくさんいるだろう。
今から30年前、全国展開して大きくなり過ぎる前のダイエーやニチイは、関西のローカルスーパーとして地域住民と密着し、どの店も輝いていた。この「スーパー玉出」は、浪花の偉大なるローカルスーパーとしていつまでも輝き続けてほしいものだ。
「スーパー玉出 岸里店」/所在地=大阪市西成区潮路1-7-5
(繁盛店評論家 谷やん)