関西版:とことん味を追求する神戸発信の中華ブランド「皇蘭 南京町本店」
港町神戸の南京町は、横浜に次いで本格中華が味わえる。中華店が所狭しと並ぶその最西端に22年前、初めて日本人がオープンさせた中華店が「皇蘭」だ。観光客でにぎわう「皇蘭南京町本店」は、テークアウトや土産品を中心に販売しており、2号店の新大阪店はイートイン中心として平均月商1500万円を誇っている。
微妙に配合された豚骨醤油ラーメンのスープが門外不出なので「皇蘭」の店舗は2直営店だけ。だが、「皇蘭」ブランドの豚まん、餃子、焼売などが神戸土産として定着し、毎年順調に売上げを伸ばしている。一番人気の豚まんは、中具を鹿児島産豚肉と淡路島の大玉玉ネギと少量の調味料から、生地(皮)は中国大陸から持ち帰った「たね生地発酵」を使用し作っている。甘みのある皮とジューシーな中具でひとつひとつ手作りする豚まんは、家庭で店の味が簡単に再現できるよう電子レンジ対応。特売をせず、主に空港やJR駅の土産物店、百貨店の物産展などで販売している。
皇蘭の豚まんにお墨付きをした人物が料理研究家の小林カツ代氏。「少ない調味料で素材のうまみを最大限に出している」と同氏が手紙をしたためたことがきっかけとなり、今では「小林カツ代プロデュース」の豚まん、焼売、餃子を製造販売している。
「皇蘭」の親会社(株)北海は、1959年にアイスクリームメーカー・販売会社としてスタート。以降、メーカー卸としてさまざまな食品を生産するが、日本人の味覚にマッチし季節変動が少ない「麺」に的を絞り、72年に製麺製造をスタートさせた。同年に社名「北海」から生まれた「北海ラーメン」店をオープンさせ、外食産業にも参入した。
メーカーと外食部門を備え、3ブランドを柱に物販用商品開発を行っている。土産用の高グレード品の「皇蘭」、神戸を前面に出した量販店向けの「神戸点心」、神戸地下鉄西神南駅に店舗を持つ「包鼎苑」はスーパー向けと、ターゲットを定めて差別化し、ブランドを育成している。
同社の商品はすべて自社生産。生産拠点は本社工場と、約5億円を投資し1月末に竣工したHACCPレベル対応の大石工場で作られる。これまで豚まんを毎日4万個生産し京阪神で販売してきたが、新工場の本格稼働で日産が倍以上になる今後は、関東と北海道地区への販売も積極的に行うという。
外食部門は「北海ラーメン」「皇蘭」「山神山人」など10業態で、直営11店舗、FC23店舗、準会員6店舗の計40店舗展開。30年前に同社社員が直営店を譲り受けスタートしたFC事業だが、増えた店舗はすべて口コミ。元社員の独立運営店以外は、すべてフランチャイジーが同社のラーメンを食べ、自らコンタクトを取ってきた。
「これからも『北海ラーメン』『山神山人』の味が気に入った方にファミリーになっていただき、無理をせず1店舗1店舗実直に増やしていきたい」(田鍋郁夫社長)と、大々的な募集は行わない計画だ。それでも今年は、直営・FCそれぞれに2店舗の出店計画がある。
田鍋社長は同社を「モノ作りのシビアな目を持つ会社」とし、「新工場建設や社内教育を行っているのは、おいしくていい商品を作る社員やパートこそが宝物と思っているから。同社の商品を愛する仲間に長く勤めてもらいたい」と、60歳を過ぎても再雇用したメンバー24人を含め、グループ全体の約200人をファミリーと呼んでいる。
◆(株)北海(兵庫県神戸市灘区、電話078・861・1656)を親会社とし、皇蘭ブランドを育てる「皇蘭フーズ(株)」、スーパー関連に提案する「神戸点心(株)」、外食を中心に運営する「北海ラーメン(株)」の4社でグループを形成。全体売上げは約22億円。売上高構成比としてはメーカー部門で約60%、外食部門が約40%。