外食史に残したいロングセラー探訪(8)つばめグリル銀座本店 ハンブルグステーキ

2007.06.04 329号 12面

「特急つばめ」にちなみ名付けられた「つばめグリル」は、1930年創業の洋食レストラン。開業当時のメニューには、すでに「ハンブルグステーキ」がのっていたという。こうした歴史ある「つばめ風ハンブルグステーキ」は、おいしさはもちろんのこと、独自の提供方法からも多くのファンを魅了し続けている。

(株)つばめの専務取締役、石倉啓吉氏によると、「つばめ風ハンブルグステーキ」が生まれたきっかけは、今から33年前、つばめグリルの総料理長小浦安巳氏が、あるレストランの開業レセプションで出合ったパピヨット料理(紙包み焼き)だという。

包み焼きは食材の味が凝縮され、水分が逃げることなくパサつかない。そして多少時間がたっても、熱々の状態で食べられるといった特徴がある。これに衝撃を受けた小浦氏は、この手法を使って新しいメニューを作れないものかとチャレンジすることとなった。

まず、紙で包んだハンバーグをオーブンで蒸し焼きにしてみたが、時間がかかりすぎた。次に、鉄板にのせて直火にかけたところ、紙が燃えてしまった。そこで、紙のかわりにアルミホイルで包み、端を折り返し密封して鉄板の上で温めたところ、うまくホイルを膨らませることができた。

だが、ある程度ソテーしてから蒸し焼きで仕上げようとすると、肝心のハンバーグが焦げ付いてしまう。火を通す割合を変えるなど何度も試みてみたが、最終的には蒸し焼きにこだわらず、ハンバーグは完全に火を通して、ホイルに包んでからは温めるだけという方法に落ち着いた。

包み焼きの特徴のひとつに、包みを開いたときの「辺り一面に広がる食欲をそそる香り」が挙げられるが、これは素材のよしあしがダイレクトに伝わってしまうということでもある。

実際、試作品では肉の臭みが目立ってしまった。というのも、この店では鮮度の分かりにくい、ひき肉の状態で仕入れていたために、品質が安定していなかったのだ。

そこで、牛を1頭買いし、ハンバーグに適した部位として肩ロースともも肉を自社でミンチにして牛7に対して豚3の割合でブレンドすることで、常にいい状態の肉でハンバーグを作れるようにした。

味の決め手となるソースには、ケチャップやウスターソースを試してみたが、「重い」「くどい」といった感想が多かったため、一頭買いした牛から取れるばら肉やすじ肉でフォンから作り、5日間煮込んだビーフシチューを使うことで、軟らかく、コクのあるソースがハンバーグのおいしさを引き出す結果となった。

こうして出来上がった「つばめ風ハンブルグステーキ」は、たった3ヵ月で一番の人気メニューとなり、30年以上たった今でも変わらずに、老若男女を問わず多くのお客から支持され続けている。

●店舗データ

「つばめグリル銀座本店」/経営=(株)つばめ/店舗所在地=東京都中央区銀座1─8─20 /創業=1930年/現在、「つばめグリル」10店舗、「つばめキッチン」2店舗のほか、惣菜専門店、

○つばめ風ハンブルグステーキ 「自然のバランス」を考えた食材選び

(株)つばめでは「自然のバランスにまさる味や安全はありえない」という考えを、食材選びにも貫いている。

1頭買いする牛は、青森県産をはじめとした国産のホルスタイン種。「つばめグリル」の店頭では、その日に使用している牛肉の生産者を表示している。生産者に肉の質についてフィードバックを行うことで、いい肉を作ってもらい、仕入れることができるようにと努力を続けている。

つなぎには、メーカーに依頼した専用の無添加の生パン粉を使用して、肉のうまみや食感を高めている。

そして付け合わせの域を越え、多くのファンを魅了する「ベークドポテト」には、でんぷん質が多く、加熱するとホクホクとした食感の北海道産の男爵芋を使っている。

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