メニュートレンド:ニュースタイルのムシパン専門店 「ムッシュムシパン」
蒸しパンといえば、パンメニューのなかでも脇役のイメージ。その地味な存在を主役にすることで人気を博しているのが、大阪市の「ムッシュムシパン」である。目立たない商店街のなかという立地ながら、お昼過ぎには売り切れてしまうことがほとんどという。多彩な味で蒸しパンの可能性を追求する姿勢を取材した。
ムッシュムシパンがあるのは、大阪市阿倍野区のあべの王子商店街。最近の多くの商店街と同様に、こちらもけっして活気いっぱいの商店街とはいえない現状である。しかし、そのなかで異彩を放つのがこの店。「ムシパン専門店」という、ユニークなスタイルが注目を集め、連日客足が絶えない。
商品は、蒸しパンではなく「ムシパン」。あっさり系からスイーツ系、惣菜系と、色とりどりの15種類の商品がズラリと並び、従来の蒸しパンのイメージからは程遠い。
「追求しているのは、古くて新しいパンとしての蒸しパン。今までの蒸しパンとは一味違う商品として開発しています」と、オーナーシェフの渡辺祐介さん。
ムシパン専門店を開く転機は、パン職人として修業後に独立を考えたとき。大阪にはすでに良いパン屋が多いこともあり、未開拓の分野での専門店づくりを目指したという。今までにないムシパン専門店は地元で評判になり、マスコミにも取り上げられることで遠方からのお客も増加。売上げも順調にアップ中という。
その人気を支えているのは、目新しさだけではなく、商品自体のおいしさもポイントだ。ふっくらとモチモチ感のある生地は、甘さ控えめ。ムシパンの具材には、フルーツや野菜も取り入れられており、多彩な味が生地にマッチしている。
小麦粉は九州産のチクゴイズミ、砂糖は十勝産のてん菜糖、塩は沖縄産のシママースを使用。食感や柔らかな味わいを実現するために、原材料にもこだわって選択している。
生地は、低温で長時間発酵させ、一定の湿度を保ちムラなく蒸すために、木製のせいろを使用。蒸し上げまでの製造を店頭で行い、お客が工程や安全性を確認できるのも特徴だ。
今後は、メニューを常時30種類用意することを目標に、より充実を目指したいという。
「ここで頑張っていきたいので、店を増やす気はありません。この商店街には、良いものを作れる店がいっぱいあることを、ムシパンを買いに来たお客さんにも紹介していきたい」と、渡辺さん。街づくりに貢献できる店としての成長も考えていきたいという。
◆ムッシュムシパン(大阪市阿倍野区王子町3‐9‐1、電話06・6629・6086、受け付けは午後5時以降)開業=2005年3月/営業時間=午前8時~午後4、5時ごろ(売り切れ次第閉店)、火曜定休/坪数=約7坪/客単価=約500円/1日来店客数=100~150人/スタッフ=4人