高度成長する惣菜・デリ レッドロブスターが和風弁当を販売
ファミリーレストラン(FR)、ディナーレストラン(DR)が曲がり角に立たされている。バブル崩壊後の長期的な消費不況から、客数が減少し売上げ不振が続いている。消費不況ばかりが原因ではない。消費者ニーズとFR、DRの経営の方向性に食い違いが生じているのである。低価格志向を強めながらも品質への妥協を許さない今日の消費者を呼び戻すにはどうすればよいのか。これはFR、DRに限らず、全ての外食企業が抱える大きな課題である。
大手FR、DRの九二年度決算状況を見ると、減収減益のオンパレードだ。九三年度のスタートに当たり、各社とも生き残りを賭けた大幅なリストラ策を打ち出している。業態コンセプトやメニュー、価格の見直しなど課題は山積みだ。
そこで、今回はかつて成長率ナンバー1といわれた大手シーフードレストランの『レッドロブスター』の新展開を紹介することにしよう。
レッドロブスタージャパンは一九八二年には、ジャスコと米国大手食品複合企業ゼネラルミルズ社の共同出資により設立した。本物のロブスターを提供する“シーフードディナーハウス”をコンセプトに首都圏を中心に出店。現在五二店舗で売上高一三〇億円(九二年度)の実績を持つDRの代表的存在の外食企業である。
《 》 “アメリカンスタイル・アメリカンテイスト”のイメージで押してきた同社が、今年6月から和風弁当「カニめし」の全店販売に乗り出した。消費者の根強い和食志向に着目し、二年前から米飯に合うシーフードメニューの開発に着手。店内メニューとして「カニめし」にお新香、味噌汁が付いて一四八〇円でテストを開始した。
平均メニュー単価が二〇〇〇円を超えるDRとしては、かなり手項な価格のメニューである。
そこで、顧客からのテイクアウトサービスを求める声が高まったことと、今日の中食ニーズへの対応として、今年3月から一部店舗でのテスト販売を経て、今回の全店舗展開に至った。
《3年後には柱 商品へ育成へ》 「カニめし」の特徴は何と言っても、贅沢な材料と味付けにある。福島県産の特選コシヒカリ(二七〇㌘)と、低脂肪で高タンパク質なアラスカ産の旬のズワイガニ(約三六〇㌘)を材料に、コシヒカリに貝スープ、日本酒、魚醤油(小魚を塩漬けして一年間ほど寝かせて上澄みを熟成させた、タイ国独特の調味料)を加え、ズワイガニの爪や足、肩をたっぷりのせて炊き上げた。
素材の持ち味を損なわないことと、本物感、ボリューム感を重視し、あえてカニの殻を付けたままにしている点も特筆できる。カニの身を取りほぐし、炊き込みご飯の上に散らせてから食べるのが一般的。
また、消費者の健康志向に対応して、塩分を抑えた薄味に仕上げていることはもちろんだが、カニ本来のヘルシー性にも注目したい。
カニは、カロリーが少なくタンパク質、カルシウム、鉄、ビタミンB1、B2を多く含んでいる。例えば、「カニめし」で使用しているズワイガニの場合、一〇〇㌘中のエネルギー量は八〇㌍しかないが、タンパク質は一六・四㌘も含まれている。ベーコン一〇〇㌘の場合、エネルギー量四二三㌍だが、タンパク質はズワイガニより少なく一二・九㌘。これは脂質量の違いによるもので、カニは一〇〇㌘中に〇・五㌘の指質だが、ベーコンは三九・一㌘も含まれている。
ズワイガニは、エネルギー量を抑えタンパク質を摂取できるヘルシーフードと言うわけだ。
テイクアウト「カニめし」は、一・五人前一九八〇円、一人前一四八〇円の二アイテム。現在、一週間一店舗平均七五~一〇〇食ペースで売れている。店内メニューとしても引き続き提供し、三年後には「カニめし」だけで売上高の一〇%前後を占める柱商品に育成したい考えだ。
また、従来のフライ類を主軸としたアメリカンスタイルのメニューだけでなく、米飯とのマッチングを考慮したインターナショナル・シーフードメニューを開発、季節に合わせて提供したいとしている。
「レッドロブスター」は、DRが本来持つべき“ハレの日のレストラン”のコンセプトを十二分に吸収した外食店だった。
あくまでもアメリカンスタイルを踏襲して、エビ、カニの揚げ物類中心のメニュー構成と、食べ放題で人気を集め、急成長してきた。
しかし、消費不況をきっかけとしながらも、中食マーケットの拡大が“お値打ち感”重視の食消費行動を生み、「ハレからケ」へのパラダイムシフトとなった。「日常的食を担うレストラン」へと軌道修正するに当たり、「米飯」「弁当」というキーワードは、DR、FRにおいても十分に身近でかつ直接的なコンセプトワードとなっているのである。
「レッドロブスター」が和風弁当を販売するというトピックスは、惣菜・デリ市場がいかに多面的拡大をしているかを物語る好例と言えよう。