喫茶店経営の新戦略(2) メニューは簡単調理に限定
ドトールコーヒー(本社‐東京)は、スタンド型式の「一八〇円コーヒー」で、喫茶業界に新風を吹き込んだチェーン企業として、独自のマーケットを切り拓いており、注目に値する。
この9月末現在、店舗数は直営三六店、フランチャイズ二八二店の計三一八店で、消費不況にあってもチェーン展開は順調に推移している。
ビジネスマンが主力ターゲットであるだけに、最近は都心のオフィス街や駅前、商店街で、例のイエロカラーの外装をよく見かける。
標準店舗の大きさが二〇坪であるので、小回りの効く出店が可能となっているわけだが、それだけにFC店の希望者も多いということだ。
店舗は「ファストフード」のオペレーションシステムを採り入れているので、明るく清潔そのものだ。それに一八〇円のコーヒーは安いし、しかもコーヒー専門店のたしかなおいしさがある。
ホメ過ぎかも知れないが、ビジネスマンが朝昼夜とぎれなく利用しているのは、このチェーン店の商品とサービスを強く支持していることを物語っている。
店の営業は朝7時30分から夜9時まで。主力商品のコーヒーに加えては、客の食事ニーズに対応してジャーマンドック一九〇円、レタスドック二二〇円、バタートースト一五〇円、チーズエッグ二四〇円、ミラノサンド(A・B・C三種類)三五〇円など六種のフードメニューも提供している。
これは全店共通メニューで、アルバイトの従業員でも簡単に調理(スピードクッキング)できるというパン類のメニューに限定しており、ごはんものなど、手の込んだものは一切おいていない。「パン、サンドイッチ類であれば、トースターで焼くとか、具を挟むだけの簡単な作業で済みますし、店のコンセプトの一分以内のメニュー提供ということを考えますと、手間のかかるもの、また店の規模やフロア構成からしても、滞溜時間の長くなるような料理は提供できないわけです」(ドトールコーヒーチェーン本部)。
これらフードメニューの売上げ構成比は三割で、コーヒー六割、売店(コーヒー豆などの販売)一割のウエートからみるとコーヒー専門店としてのバランスはとれているといえる。
ドトールコーヒーは、ある一定の業態の中ではメニューを拡大していかないという基本方針を守っており、メニューを拡大する場合、あるいは店の規模が大きくなる場合は、別個の業態としての出店戦略を採っている。
「カフェ・コロラド」をはじめ「オリーブの木」「カフェ・ドトール」「カフェ・エクセシオール」といった業態がそれで、狙う客層、店の規模、立地条件、メニュー構成によって、業態を創造し棲み分けをしているということだ。
アートコーヒー(本社‐東京)や三本コーヒー(本社‐横浜)といった大手チェーン店も、ホットドック、サンドイッチといったスナックメニューを導入しており、収益向上に貢献している。
アートコーヒーは直営一二〇店、フランチャイズ店八店の計一二八店をチェーン化しているが、FC店は「アートサンド」のストアブランドで出店している。
スナックメニューは、直営店においてはホットドック六種(一九〇~四五〇円)、FC店ではサンドイッチ六種(同)といった導入形態で提供しているが、これは二者間で競合しないための出店戦略だ。
コーヒーはスタンド型式で二〇〇~二五〇円、客席スタイルの店であれば四五〇円で、これにフードメニューを加えれば、客単位は四〇〇~一〇〇〇円以内といったところだ。
「一店舗当たり月間五〇〇~六〇〇万円の売上げだが、フードメニューの貢献度は多いところで全体比五割、平均的には三割から四割内のウエート」(アートコーヒー本部)という。
三本コーヒーは直営五〇店、FC一一〇店の計一六〇店を展開しているが、フードメニューはスパゲティ六種(六八〇~七〇〇円)、ピラフ三種(六〇〇~七三〇円)ほか、トースト、サンドイッチ類一四種(四〇〇~六八〇円)などをラインアップ。喫茶店としてのイメージを壊さない範囲で、独自の飲食ニーズに対応している。
このほか、新業態として八年前から多店舗化を推進中の「カフェドール」でもホットドック、ハンバーガー、ローストビーフ(ハム)などのメニューを導入しており、ファストフード的なストアイメージを訴求している。
コーヒーはブレンド一八〇円、アメリカン二〇〇円。ドトールと同じ価格帯で、現在東京二店、札幌三店の計五店舗を出店している。フードメニューは、地域によりパン、サンドイッチ類に限って、独自のものを加えることができるというシステムだ。