企画特集=持ち帰り寿司・回転寿司の市場戦略 東京小僧寿し

1993.12.06 41号 12面

すしの市場規模は一兆五〇〇〇億円、外食マーケットの五%強という規模だが、一口にすしショップといっても、これは高価格のすし店から、FF機能で低価格の持ち帰り専門店、回転すし、あるいはケータリングサービスと業態が多様化しており、市場は一つの業態ではくくれない。

しかし、チェーン戦略によって、根強いすし需要に対応しているのは、持ち帰りや回転すしといった業態で、低価格路線によって市場の底辺を大きく拡げることに貢献している。

とくに持ち帰りすしは「小僧寿し」や「京bM」という強力なチェーン企業が存在し、価格の明朗さと小回りの効く出店形態で、消費者のすしニーズを強く掴んでいる。

しかし、ここにきてバブル経済の破綻による消費の低迷、冷夏による米不足とそれによる仕入れや食材価格の上昇という問題を抱えて、店舗の出店と共に市場の伸びは鈍化の方向にあり、量的な拡大戦略は困難な状況になってきている。

このため、各企業とも質的向上を図って客の満足度を高めること、店舗オペレーションの効率化、低価格路線の遺児、客数の拡大といった考え方で、店舗の収益アップに企業努力とチエを絞っているところだ。

㈱東京小僧寿し(本社東京、山木英樹社長)は、昭和49年9月、小僧寿しチェーン(本社大阪)の東京地区本部(㈱小僧寿し東京本部)を設立したのを出発点としており、首都圏をテリトリーにしてチェーン展開を推進している。

平成3年1月には現在の社名に改めたのだが、大阪の本部とはフランチャイズ契約に基づいてのチェーン展開で、市場戦略においては大きな変化はない。

小僧寿しは今年3月現在、全国に二〇〇〇店以上を出店しているが、このうち東京小僧寿しは首都圏では三割の六〇〇店を出店、グループ内では全国トップのシェアを誇っている。

店舗出店は直営とFC店の二本立てだが、ここ二、三年来は直営出店に力を注いできており、フランチャイズについては表立っては募集はしていない。

これは加盟店の希望があり、条件面が整っていれば出店を認めるという考えで、FC店を出店しないということではない。直営出店の方が収益力が大きいこと、チェーンシステムとしてのコントロールが容易になるという考えから、直営店展開を積極化しているということだ。

店舗展開は一店舗の商圏を徒歩、自転車、車で一〇分前後で来店できる範囲と設定し、近接地に住宅街があればベストロケーションで、この立地条件は基本的には郊外ロードサイドを主眼にしている。

店舗の出店形態はオープン形式(サービスカウンターのみ)、インドア、イートイン、CT‐21と四つのパターンがあるが、積極展開しているのはCT‐21。

この店舗は、すしの購買者の七割が女性という点に着目して、花と女性の感性をコンセプトにしたハイセンスな造作で、「SUShi花館」と称している客席付きの店舗だ。

店舗面積三〇坪が標準で、この出店コストはビルインで二〇〇〇~二五〇〇万円、フリースタンディングであれば三〇〇〇万~三五〇〇万円。売上げは月間六六〇~七〇〇万円が平均的レベルで、純益ベースでは二年での資本回収といい、資本効率にすぐれている。

メニューは江戸前のにぎりをはじめ、手巻、ちらし、いなり、バッテラなど、このほかにはセットメニューで日本そば、うどんなど麺類もラインアップしている。

麺類の導入は、すしネタや米などの食材に比べてコストが比較的安価で安定していることで、これらメニューの売上げ増によって、主力の食材コストの上昇分を吸収できると判断しているからだ。

持ち帰りの人気商品は、山かけザル(にぎり、手巻+トロロ付)五〇〇円(売上げ貢献度一〇%、スーパーランチA(にぎり、いなり+ザルそば)五五〇円(同一〇%)、しょうぶ(厚切ネタのにぎり)八八〇円(九%)、あじさい(同)六八〇円(九%)、さくら(パーティ用にぎり)二七〇〇円(同八・五%)などで、これら五商品で全体比五〇%に迫る売上げ貢献度をみせている。

客単価は一六〇〇円で、客層は主婦など女性客が七割を占め、ランチや夕食、パーティなどに根強いテイクアウト需要をみせている。

テイクアウトすしショップで客単価一六〇〇円というのは高い。これはそれだけ小僧寿しの商品が強く支持されているということだが、店の清潔感に加えて、三分以内というスピーディでありながら、手づくりの調理サービス、商品は六時間を過ぎるとすべて廃棄処分にするという徹底した品質管理、こういったクオリティ志向の店舗オペレーションが、消費者のストア・ロイヤリティを高めているということだ。

年間売上げ三三〇億円、経常利益一七億円(九三年3月期)、この9月には日本証券業協会抜い店頭登録に踏切った。先行きは上場ということになるわけだが、小僧寿し今後の発展がさらに期待されるところだ。

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