転換期のファミリーレストラ市場戦略 「デニーズ」
デニーズはイトーヨーカ堂系列のファミリーレストランとして知られており、首都圏を中心に手堅い出店をおこなっている。
九三年2月期現在、東京一二七、神奈川七六、千葉五一、埼玉四九、茨城九、栃木七、群馬九、山梨四、その他六六店と計三九八店を出店。売上げ八五八億円、営業利益五六億二〇〇〇万円、経常利益六四億六〇〇〇万円の実績を上げている(九四年2月期目標は売上高九〇〇億円、営業利益五八億円、経常利益六六億円)。
出店については今期四五店舗を策定しており、すでに上期の時点で三五店舗を開設している。
これら新規出店のうち、二三店舗はグループチェーンの和食レストラン「ふあみーる」を業態変更したもので、この出店形態はすかいらーく同様に、収益力の高い業態へのシフトということだ。
デニーズの立地戦略は「郊外型」「インストア型」の二タイプで展開しているが、標準的な店舗規模は一〇〇坪、客席数一一〇~一二〇席で、投下資金約一億三〇〇〇万円、売上げが平均月商一九〇〇万円、粗利六六・五%といったところで、収益力は大きい。しかし、消費の低迷で九一年夏以降、客数、客単価とも一、二割減になっているので、集客力を高めるために店舗運営やメニュー政策の面で、徹底した市場戦略を導入している。
この最大のものは、九二年3月から全店で導入している「時間帯別メニュー」の考えで、これは朝(6時~10時)昼(10時~15時)、夜(15時~翌朝6時)と文字どおりに、時間帯別にメニューを取り入れているもので、消費者の飲食メニューにキメ細かく対応しようとしている。
これらメニューはトータルで一二〇~一三〇アイテムをラインアップしている。たとえば、朝は「デニーズブレークファースト」(スクランブルエッグ、ベーコン、ソーセージ、サラダ、トースト、コーヒー、一口ジュース)五八〇円、「目玉焼セット」(ごはん、目玉焼、味噌汁、海苔、おしんこ、コーヒー)五八〇円。
昼は「和風ハンバーグランチ」(ハンバーグ、ライス、コーヒー)八八〇円、「ポークスタミナランチ」(ライス、コーヒー)八八〇円、「ロースカレーカツランチ」(コーヒー付き)九八〇円。
夜はステーキ類が主体で、「一口ヒレステーキ」一三八〇円、「サーロインステーキ」一五八〇円、これに二五〇円をプラスすれば、洋風セットでごはん、スープ、和風であればごはん、味噌汁、漬物が付くというメニュー内容となっている。
このメニュー戦略は、時間帯別にいわば“売れ筋メニュー”を強くアピールするという考え方であるわけだが、もちろん、他の定番(基本)メニューもあり、客は好みのメニューをチョイスすることができる。
このほか、デニーズのメニュー戦略は、地域や店によって味付けを変えたり、シーズンや祭事メニュー、また独自のメニュー(個店対応メニュー)を付加するとか、常に店舗サイドに立った考え方で、チェーン店でありながら、画一的なシステムにとらわれないというフレキシブルな側面も残している。
つまり、地域の飲食ニーズ(し好)にキメ細かく対応していくために、全店統一の基本的なシステムの中に、店舗(地域)サイドでの選択の幅を持たせているということだ。
今年10月から導入した個店対応メニューはその一つの例だが、今後とも基本メニューの見直しなどによって、タイムリーなメニュー開発を進めていく考えで、デニーズメニュー戦略は徹底している。