食の視点 FF丸かじり(1) 再び登場

1993.12.20 42号 11面

▽潜在市場は大きい△

冷凍食品がはやっている。一人の食事の時、調理や後片付けのいらない冷凍食品が便利、というのが理由だ。実際、あるメーカーの調査では、冷凍ピラフの消費量の約半分は主婦の昼食だったという。

これだけ一人の食事を簡単に済まそうとする市場があるのだから、冷凍食品よりもずっと手のかからないテークアウトやコンビニ調理品、そしてファストフード(FF)にもチャンスはあるわけだ。それなのに、FF、ことに洋風FFの各企業の成長は鈍い。不況だから、といってもデリカ系やコンビニ系のテークアウトは伸びているのだ。FFが遅れを取る理由は薄い。

ここ二、三年言われ続けているので、客足が遠のいたこと。マクドナルド銀座店オープン当初の、そして三九セット時代のあの活況がそう簡単に戻るとは思えないけれど、何かがおかしいのでFFに客が集まらないのではないか。

▽まじめな日本人△

ファストフードは、読んで字のごとし。早く(ファスト)出てくる、早く食べられることが絶対条件で、従って価格も安く、代わりに(?)味のほうはソコソコで許してもらうことで成り立っていた。

サービスや設備には極力手をかけず効率的に料理を生産することを考えていれば良かった。FFの出発点が、ほんの数十分の列車停車中の乗客の空腹を満たすことであったと考えれば、それはそれ、一つの見識だった。

米国から起こったこの食べ物に対する画期的な考え方は、現在の世界の料理界をメリット、デメリットの渦の中に巻き込んで、それなりの成長を遂げている。元祖FFの米国では、ポップコーンやポテトチップスと並んで、高カロリーだが低栄養の下らない食品、ジャンクフードとして、国民から愛されている。

しかし、日本人は食物をジャンク扱いするにはちょっとまじめ過ぎたようだ。ジャンクをまともな料理として取り入れようとしている。だから混乱するのだ。

▽メニュー改悪競争?△

全部が全部とは言わないが、どう見てもメニューをいじくり回し過ぎている筋がある。FFのハンバーガーは、手を加えるすき間さえない完璧なジャンクフードなのだ。現在のFFの混乱は、FFの原点を忘れて、メニュー開発にうつつを抜かしていたツケが回ってきたからだ。

ごはん、サケフライ、おにぎり、和風フライドチキン、テリヤキバーガー。洋風のFFの右往左往がよく見える。自企業のメーン商品を棚上げして、トレンドらしきものを追っかけても、実りは少ない。少ないどころか、マイナスだ。

ここに来て■野家が好調だ。一度倒産の憂き目をみた■野家が、ここまで伸びてきたのは、一つには和風回帰と言われる傾向も手助けしていることがあるだろうが、FFの基本を守ったことだと筆者は見ている。牛■一筋、早くて安くて、ソコソコうまい。

▽元祖も間違えた△

とは言え、元祖FFの米国でも一時期、FFハンバーガーをジャンクから取り出して、高級でヘルシーな食品に仕立て上げようとする動きがなかったわけではない。グルメバーガーがそれだ、ポーションを小さくしようとする動きもあった。しかし、バーガーにそれは似合わない。現在では、大きいことはいいことだ、とばかりにこれまで以上に大きなバーガーが人気を集め、これこそわれらがバーガーさとばかりに、かぶりつくニューヨーカーが多いとか。

ちょっと前まで、バーガーを敬遠し、太っていることはセルフコントロールの出来ない人間だと指摘して止まなかったあのニューヨーカーがである。時代は変わる。変わったのではなく、元に戻ったのだ、という感じは一層強い。

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