バブル崩壊後の外食企業決算に見る現状と今後の動向

1994.01.03 43号 18面

平成5年度の外食産業界は、九一年4月からの「平成不況」による個人消費の低迷、法人需要の減少、さらに長雨、冷夏などの影響を受けて厳しい状態が続いた。当センターの月次売上動向調査をみても営業給食平均の一店舗当たり売上高の伸び率は、平成5年9月までの時点で、平成4年3月以来一九ヵ月連続で前年実績を下回っており、客数は、平成2年7月以来三九ヵ月連続で前年実績を下回っている。

このような厳しい経営環境の中で外食産業の上場・店頭公開企業二四社の平成5年度中間決算の状況をみてみることにする。

外食産業の上場・店頭公開企業二四社中間決算の売上高(表1)をみると、平成4年度の中間決算では、前年同期実績を下回った企業は、京bM、サーティーワン、フォルクス、ホッコクの四社であったのに対して、平成5年度中間決算では、二四社中一四社に増加している。また、売上高が前年同期実績を上回っている藍屋、吉野家ディーアンドシー、グルメ杵屋、テンアライドの企業でも平成4年度中間決算より増加率が小さくなっている。

個別にみると、すかいらーく、ロイヤルが平成5年度中間決算で、上場以来初めて減収減益になった。また、その他の企業では、新規出店はしているものの、モスフードサービス、元気寿司、吉野家ディーアンドシー(ドーナツ部門「ダンキン」)以外の企業では、既存店ベースでの売上高が、前年同期実績を下回った企業が多かった。ただ、デニーズジャパンのように、既存店ベース売上高は減少であったが、既存店ベースでの客数の増加がみられた企業もあった。

二四社全体では、平成4年度中間決算が前年同期五・〇%増加、平成5年度中間決算が「平成不況」による個人消費の低迷、長雨、冷夏などの影響により前年同期〇・八%減少している。

各社の売上原価および販売管理費、すなわちコスト面をみると(表2)平成4年度中間決算では、前年同期実績を下回った企業はフォルクス(対前年同期増減率〇・九%減)、ホッコク(同二・四%減)の二社にすぎなかったが、平成5年度中間決算では、すかいらーく(同四・五%減)、ロイヤル(同三・五%減)、京bM(同七・二%減)、サーティーワン(同一四・〇%減)、フォルクス(同二・八%減)、サト(同三・五%減)、木曽路(同一・一%減)、フレンドリー(同一一・四%減)、銀座ルノアール(同〇・八%減)、ホッコク(同〇・六%減)の二四社中一〇社が前年同期実績を下回った。

特にサーティーワンとフレンドリーは二ケタ減少しており、フォルクス、ホッコクは二年連続前年同期実績を下回った。さらに、平成5年度中間決算で前年同期実績を上回った企業についても、平成4年度中間決算の増加率に比べて小さくなっている企業が多くなっている。

二四社全体でみると、平成4年度中間決算が前年同期増減率五・二%増加、平成5年度中間決算が前年同期増減率〇・六%増加し、各社コスト削減のための経営努力をしていることがうかがえる。

各社の営業利益をみると(表3‐1)、すでに平成4年度中間決算で前年同期実績を下回った企業は、二四社中一五社であり、そのうち二ケタ減少企業はジョナス(対前年同期増減率二六・九%減)、ロイヤル(同一五・六%減)、フォルクス(同一五・九%減)、リンガーハット(同一四・五%減)、サト(同一九・〇%減)、木曽路(同六一・七%減)、フレンドリー(同一二・八%減)、元気寿司(同二三・六%減)、サンデーサン(同二七・八%減)の一一社であった。

平成5年度中祖決算では、売上高の減少以上にコストを大幅に削減したサーティーワン、コストは増加しているもののそれ以上に売上高が増加した吉野家ディーアンドシー、モスフードサービス、売上原価の低減、仕入コストの合理化、新規出店や人件費の削減をしたフレンドリー、元気寿司の五社が前年同期実績を上回ったが、その他の企業は前年同期実績を下回り、そのうち二ケタ減少は一九社中一八社にのぼっている。

二四社全体の営業利益は、平成4年度中間決算が前年同期増減率一・四%増加、平成5年度中間決算が前年同期増減率一九・〇%減少した。

経営利益をみると(表3‐2)、平成4年度中間決算では前年同期実績を下回った企業は、二四社中一四社であり、そのうち二ケタ減少企業は一〇社であった。平成5年度中間決算では、前年同期に実施したCI関連の広告費がなくなったため増益となったサーティーワン(対前年同期増減率三・〇%増)、金融収支の改善で増益となったテンアライド(同一四・四%増)のほか吉野家ディーアンドシー(同一〇・九%増)、モスフードサービス(同三三・二%増)、元気寿司(同六九・二%増)の五社で前年同期実績を上回ったほかは、すべての企業で前年同期実績を下回り、すべての企業で二ケタ減少している。

二四社全体の経常利益をみると、平成4年度中間決算が前年同期増減率四・二%減少、平成5年度中間決算が前年同期増減率一七・七%減少した。

以上のように、平成4年度中間決算と平成5年度中間決算を比較しながら売上高、売上原価および販売管理費、営業利益、経常利益を簡単にみてきたが、いずれも平成4年度中間決算に比べて平成5年度中間決算が悪化しており低迷状態が続いている。ただ平成5年には、ジョイフルが上場、王将フードサービス、ココスジャパン、プレナス、ハチバン、ドトールコーヒー、東京小僧寿しが店頭公開、また藍屋が店頭公開から二部上場するなど活発な企業もあるが、いずれにしても平成5年度の中間決算をみるかぎりでは、通期決算も厳しい状態になると考えられる。

((財)外食産業総合調査研究

センター研究員 堀田宗徳)

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら