気を吐くお好み焼き 「たこ焼き」居酒屋とマッチング、酒のつまみに人気

1994.02.07 45号 14面

気軽に頼んでみんなで分けられるたこ焼きは、おつまみとしても好評で、定番メニューとしている居酒屋も多い。だが、いままではそのたこ焼きは主力メニューというよりもサイドメニュー的に扱う店がほとんどだった。理由は手間がかかることが第一だが、最近冷食たこ焼きの普及とともに、工夫をこらしたオリジナリティーあふれるたこ焼きでオーダーを増やす店も増えてきた。たこ焼きチェーンが現在絶好調で、他の外食を尻目に出店を伸ばしている。そんなブームのなか、居酒屋でのたこ焼きの動きを探ってみた。

いままでたこ焼きといえば、テキヤ、スーパーのフードコートもしくは専門店で扱われ、おやつ感覚のイメージが先行していたが、ここにきて酒のつまみとして人気が出てきた。アルコールとたこ焼きの相性は定かでないが、不況のあおりで、腹にたまるつまみが受けている昨今、まさにたこ焼きはピッタリ。「個数物はみんなで分け易いので、『あと一品何か』といった時に、グループからのたこ焼きの注文が多いようだ」(ニュートーキョー)。アツアツのたこ焼きをほおばり、冷めたいビールで口をしめらす。そんな飲み方がはやっている。

「うちは居酒屋ではない」とは言うものの「たこ八」(東京都中央区銀座、03・3573・1508)は、連日アルコール片手の女性客でにぎわっている。目当ては関西風たこ焼き(八個八八〇円)。食事がてらに一杯と、ガード下の屋台と同じ雰囲気だ。近ごろ忘れかけたオヤジギャルはたこ焼きに場を移し、女性だけの酒の文化を構築していたとは…。「目の前で作るたこ焼きで食前酒(ビールのことらしい)が一日の句読点」と、並んで待つ女性客も多く、これが銀座の流行のようである。

専門店なので出前、テークアウトもOK。周辺のクラブからの注文はほとんど常連である。

勝藤秀人店長はアルコールとたこ焼きの相性を一貫して否定するが、店内売上げの約半分はアルコールで占められる。本業とする居酒屋も顔負けである。

空き地を利用してビアガーデンを開業したのは「たこ焼亭新橋店」(東京都港区、03・5472・6183)。きっかけは昼時、ビールの売れ行きが良かったこと。好調なので仮設テントを張って現在はビアホールとして展開している。

セルフサービスで屋台村と同様な雰囲気は、開放的で軽く一杯と立ち寄る客が多く、セットメニューが人気。ビール大ジョッキと京風たこ焼き四個、フライドポテト(もしくは枝豆)一〇〇〇円。とき卵のスープでたこ焼きを煮込んだたこ焼きスープ(六〇〇円)がお勧めだ。

たこ焼きは作り置きなので冷めないよう、できたたこ焼きは油でサッと掲げておくのが秘訣という。

同店では「一つのメニューにこだわりを持っていれば、他のビジネスチャンスもある」(■乃田葉子ゼネラルマネジャー)とし、昼時のランチメニューも考案。たこ焼きをメーンに、テークアウト、ランチ、ビアホールと、三毛作店へ挑戦している。

創意工夫なら専売特許とばかりに「ニュートーキョー」では各店でオリジナルたこ焼きを展開する。特に売れているのが神田東口店の「たこ焼き風味揚げ」(五個四〇〇円)。同店のいそべ揚げの人気をヒントに考案。一日四、五皿売れれば上々と見たが、平均八皿強と予想を上回った。同店一〇〇アイテムの中で一二番目の売れ行きとか。

串焼きが上位を占める同店は九割が男性客だが、女性に人気のたこ焼きがこれほど売れるとは店長も驚き。「メニューアイテムが多く手間ひまかけられないが、冷食をそのまま出すのは芸がない。他のメニューレシピと重複できるように工夫してオリジナリティーをPRする」(高橋晴次店長)と居酒屋編メニュー開発のコツを語る。

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