食品メーカー開発奮闘記(17) ニチレイ、個性的商品ジャンル形成
《コンセプト明確化》 低温物流サービス事業、加工食品の製造販売事業、農・水・畜産品の流通事業から不動産事業、バイオテクノロジー関連事業など、国内はもとより広く世界各地に拡大させているのが㈱ニチレイ。同社は加工食品でも知名度高いが中でも売上高で、約一五〇〇億円(うち業務用‐約九〇〇億円)に達する冷凍食品事業は大きな柱と位置づけ、その拡充・強化に努めている。
業務用、外食市場向けの商品開発でも、単に冷凍化した食品を提供することだけではなく、使用シーズンごとに明確なコンセプトを確立し、個性的な商品ジャンルを作るとしている。
九二年3月に発売、昨年には約一〇億円近い商材となるなど、大ヒットした「棒ヒレカツ」はその典型商品。
原料にこだわり新鮮な豚ヒレ肉を使用、これに荒めのパン粉をつけるなどの工夫をこらすとともに、下処理と適温加熱技術により冷めてもジューシーでやわらかいという今までになかった商品に仕上げている。和食人気という追い風はあったものの、まだまだ今後もブーム(ヒット)は続きそうな勢いだ。
《中食市場でも人気》 また、北海道の十勝特産の男爵芋を一〇〇%使用するなど原料にこだわり、加えて冷めても衣のサクサク感が失われないほか、ヘルシー志向にあわせて味付をひかえめにした「十勝サクサクコロッケ」も弁当チェーン店、スーパーの惣菜売場などの中食市場で人気があり、売れ筋商品となっている。
帝国ホテル、ニューオータニといった一流のホテル、レストランなどでも、商品によっては冷凍食品を抵抗なく受入れるまでになるなど、冷食の技術的な進歩には目ざましいものがあるが、同社はスープ用煮出し汁のブイヨンについても、これら外食ユーザーとのタイアップにより、早くから生産を開始、今ではこの分野での大型商品にまで育成されている。
一般的に、ブイヨンはチキンなら鶏肉の生ガラから血を抜き洗浄、これに各種の野菜をカットして水煮したものをあわせ煮出しするなど、作るまでに大きな時間と労力がかかるもの。これらまで手がけるというのも同社の外食向け商品に対する技術力の高さの一つの表れということもできる。
さらに、コメ、水、醤油、焼き方、すべてにこだわり、若者がスナック感覚で食べられるように五〇㌘(小型)で商品化した「焼おにぎり」も大手F・Fの定番メニューとして定着しているほか、レンジで加熱してすぐ食べられることから居酒屋、ビアホール、うどん店など外食の幅広いユーザーから支持されている。
《高い技術力の成果》 不況が長期化する中でも同社は、業務用冷凍食品で昨年一〇五%台の成長を遂げている。約三〇兆円といわれる幅広い末端外食市場それぞれの部門で明確なコンセプトに基づき個性的な商品ジャンルを形成した。いいかえればユーザーがもっている潜在的な不満を高い技術力でカバーしたことになる。
まさにマーケティングの基本を忠実に実行した結果の勝利ともいえよう。