地域ルポ 市ヶ谷(千代田区) オフィス街、学生街が同居

1994.05.02 51号 6面

JR市ヶ谷(千代田区)は靖国通りが正面からぶつかる形で位置している。ホームは外堀(市ヶ谷濠)に沿ってレイアウトされており、北側に広い空間が拡がっている。

乗降者数一日平均一五万人。JR(総武線)のほかに営団地下鉄有楽町線(一一万人)、都営新宿線(九万人)が乗り入れており、交通の利便性は高い。

これら路線に加えては営団地下鉄七号線が建設中で、平成8年から9年にかけて開業する予定。この路線は赤羽‐目黒間を結ぶ地下鉄で、現在赤羽‐駒込間九・二kmが開業している。

ホームから上がって駅改札口に出れば、二階建ての駅ビルで、飲食店舗では一階にハンバーガーチェーンの「ロッテリア」、二階にらーめん亭「ゆうかり」、喫茶「ロイヤル」が出店している。

駅ビルに接して東西方向に前記の靖国通りが伸びており、そして、駅ビルの正面を直角に右に曲がって外堀通りに出る。

駅ビルの右手には南北方向に“日テレ通り”が伸びている。五〇〇mほど先に日本テレビがあるので、通称そう呼ばれている通りだ。

市ヶ谷駅周辺は行政地番では、靖国通りに面した地域が九段北三、四丁目および九段南三、四丁目で、日テレ通りが四、五、六番町だ。外堀は千代田区と新宿の境界で、外堀通りに面しては市谷八幡町、市谷田町一、二丁目が展開する。

地域の商業集積はこのエリアに限られているが、しかし、市ヶ谷はビジネス街という位置づけにあるので、面としての集積はなく、通り沿いのビルの地下や地上一、二階に点在するという形だ。

だが、市ヶ谷は一方においては法政大、東京家政学院、二松学舎、上智大(比較文化)などのキャンパスが点在するので、文教区であり、若者の街でもある。

このため、前記のロッテリアをはじめ、マクドナルド、モスバーガー、森永ラブ、ダンキンドーナツなどファストフードが出店しており、地域のFFニーズに対応している。

靖国通りは地域のメーンストリートであるが、道路に面し店舗が存在するのは、駅ビルから二〇〇mの範囲内だ。

駅から六、七〇m先の左側に二階建ての市ヶ谷プラザがある。このビルは飲食ビルで、ここに森永ラブはじめ、二毛作経営のプロント、SBカレーが経営するカレーの王様、深大寺そば、焼肉ソウル、ピザハウス「PINOS」、パスタ&カフェ「Petit‐1」、カフェビストロ「プュッケ」、とんかつ・割烹「うちの」、めし処・酒処「だるま」、中国レストラン「HASE」など一〇店舗が集中出店している。

このビルの東側は地図の出版で知られる昭文社が入居する一〇階建てのビルだが、一階に焼肉の店「木甫」、酒蔵「駒忠」、中国レストラン「百珍亭」が出店している。

さらに東側に一〇mほど進めば、婚礼、宴会、会議、宿泊機能を有する一〇階建ての「アルカディア市ヶ谷」「私学会館」があり、この二階フロアにレストラン「フォッセ」、日本料理「いちがや」、中国料理「翠」、喫茶・バー「スリーゼ」の四店が出店している。

靖国通りに面して飲食店舗がボリューム的に存在するのはこの辺りまでだが、市ヶ谷プラザやアルカディアの向い側には、ダンキンドーナツが出店しているくらいで、目立った飲食店舗はない。

日テレ通りは駅前からゆるやかな上り坂になっているが、この両サイドのビルの地下や地上一、二階に飲食店舗が点在する。

チェーン店では居酒屋「ニュートーキョウ」や「ニュー浅草」、「串八珍」、喫茶「ルノアール」など、個店では点心・らーめん「汁番」、酒亭「瓢箪」、焼鳥「鳥幸」、レストラン「葡萄の木」などが出店している。

靖国通りを外堀通りに出れば、そこはT字型の交差点になっているが、正面ビルの一、二階にモスバーガーが出店しており、そこから右隣にスーパーのジャスコの居酒屋チェーン「チムニー」、持ち帰りすし「京樽」、京樽の上二階と三階に中国レストランの「王府井」、この隣のビルの一、二階にマクドナルド、さらに道路を隔ててルノアールと、居酒屋チェーンの「庄や」が出店しており、偶然にして大手外食チェーンが軒を連ねる形となっている。

市ヶ谷での店舗出店は靖国通りにしろ、日テレ通りにしろ、すでにビル化が進んでいるので、新規出店の余地は少ない。しかも、オフィス街であるので、土・日は会社が休みになり、来街者も平日の三分の一以下に減少する。

このため、店舗も大手外食チェーンを除けば、八、九割が休業するという状態で、平日で稼ぎ取るといった街の性格にある。

しかし、逆にみれば、店が開いていないから人が来街しないということもいえるわけで、この考えに立って無休で営業している店も存在する。

「たしかに最近は土曜日でも会社が休みになるという状況になってきていますが、しかし、土・日でも人はいるわけで、店を開けていれば利用していただくチャンスはあるわけです。

商売というのは“あきない”というくらいですから、常に客のために店を開けておくという考えは大切なことではないかと思います」(市ヶ谷プラザ・めし処&酒処だるま市ヶ谷店沼尻英晴店長)。

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