炊き込みご飯お店紹介「釜めし春」秘伝のたれ60余年
大正15年創業の「釜めし春」は、秘伝のたれの味を、今も変わらず伝えている。
「だしに鰹節を使うと具の味を損なうので、いっさい使わず、醤油、みりん、酒と具材の味をひき立てるアルカリイオン水だけを使います」(豊田隆社長)。毎日卸売市場で仕入れる新鮮な魚介類を生で使い、炊き込むことでうま味を出す方法は、創業以来の作り方。
ご飯も味の決め手となる一つ。コメは、新潟のコシヒカリ、宮城のササニシキをブレンドしたものを一週間に一回コメ屋で精米して入れる。「味も良い上、虫もつき難いのでもみがら付きで産地から運んでいます」。一俵もみがら付きで六〇kg、精米して五六kgになるが、一ヵ月六俵を使っている。
具材となる魚介類、野菜は、毎朝卸売市場に出向き、新鮮なものを仕入れる。支払いは、すべて現金。「自分の目で確かめられ、わがままが言えます」と、素材へのこだわりを示す。
こだわりのコメと新鮮な具材が入った釜は、一〇〇個のガスコンロにかけられ、三人のスタッフが、付きっきりで微妙な火加減により炊き上げる。
平日四〇〇人、土・日二〇〇〇人になるという店内は、一~三階合わせ二〇〇席。スタッフ五五人、厨房九人で対応。浅草・雷門に近いため、参拝客のほか、季節の行事、三社祭、ほおずき市、酉の市、歳の市には大勢の人出で賑わう。七割は女性客、週末はファミリー客、客単価二〇〇〇円。
注文の一割を占める五目釜めしだが、具材には、エビ、鶏肉、タケノコ、椎茸、青味(絹さや、三つ葉)九五〇円、特上五目釜めしは、カニ、貝柱かホタテ貝、イクラ、シメジが加わり一五〇〇円。そのほか、季節の釜めしとして、竹の子(2~6月)、松茸(9~11月)、かき(10~3月)、栗(9~11月)九五〇円~一五〇〇円がある。
コメから釜で炊くため、二〇分はかかる。一杯飲みながらの一品料理として、また、白飯と食べたいというニーズに応え、ワンタンの皮で揚げた海老揚げしん丈、焼かに、かにつめフライなどを提供。「高くない価格、味覚は万人向けで、これからもやっていきたい」としている。
◆「釜めし春」浅草店=東京都台東区浅草、03・3842・1511