中国料理特集:ベトナム産スリッパロブスター、低価格の伊勢エビ感覚

1994.08.01 57号 11面

エビは、中国料理にとって欠かせない食材として古くから使われて来た。川エビ、大正エビ、車エビなど、種類は豊富で、調理法もさまざまだが、なかでも伊勢エビ(ロブスター)はエビの王様的存在だ。

かつては、お目にかかることも珍しかったその食材も、冷凍技術の発達と輸入増加にともなって手も届き易くなってきたが、「まだまだ高い」というのが共通した調理人の本音。

そこで注目したいのが、日本にはまだ入って間もないベトナム産のスリッパロブスター。オーストラリア産、ブラジル産、キューバ産のロブスターと比べて価格は約半値。弾力性に優れ、品質も遜色のない食材だ。

この注目の食材がこのほど、商品化された。鮮度直送のシーフード食材を得意とする(株)シンポフーズのベトナム産「スリッパロブスターテール」(加熱調理用)がそれ。同品は、ライブ(活)スリッパロブスターの背わたを取り除いてむき身にし、テール(尾)の殻だけを残したもの。解凍後、殻むきの手間がかからないのが特徴となっている。

スリッパロブスターを冷凍する一次加工の際、同社のノウハウを蓄積した調味液と一緒に瞬間凍結。エビの体液の流出を防ぐため、おいしさはとりたてそのまま。プリプリとした身質の弾力性は、従来の冷凍品の常識をはるかに越えている。

スリッパロブスターの殻は加熱すると赤く発色するので、伊勢エビの感覚、代替として利用できる。また、仕入れ価格が伊勢エビの半額以下という値ごろ感も魅力。安い食材で低価格のメニューを提供するのではなく、普段手に届かないメニューを、驚くほどの低価格で提供できる食材として利用価値は大きい。

現在使用する車エビや大正エビの代替として利用すれば、コストはそのままだが、ダイナミックでインパクトの強いメニューも開発できる。まさに用途満載の新素材である。

「新世界菜館」(東京・千代田)のオーナーシェフ・傳健興さんに、このスリッパロブスターを使ったメニュー提案をお願いした。

(協力=(株)シンポフーズ、03・3472・8351)

作り方はエビチリとほとんど同様だが、味の決め手となる豆のかわりに辛子を使って、日本人好みの薄味に仕上げた。豆よりもあっさりとし、素材の持ち味が良く生かされている。

適当に切ったロブスターテールに塩、コショウで下味をつけ、乳粉をまぶして揚げる。ソースは辛子をベースに、老酒、上湯スープ、五香、乳粉をからめたもの。ケチャップを少々加えるのがポイント。

冷やしてもおいしいロブスターテールの特徴を生かした。夏場の冷物メニューとして加えたい一品だ。

グリンピースのうらごしを寒天で溶いて冷やし固める。一口大にカットしたロブスターテールを、上湯スープ、塩、老酒、菜種油をミックスしたスープで軽くゆがく。スイカを挟みながら盛り付け、色どりを整える。マヨネーズを周りに盛り付ける。洋食、和食のオードブルにもピッタリだ。

中国では一般的なメニューだが、日本ではあまりお目にかかれない。下ごしらえが楽で、作り方もいたって簡単。前菜や、それに続く軽めのメニューとして活用したい一品だ。

塩、コショウで下味を付けたロブスターテールに、乳粉、老酒をまぶしてミンチする。

麺機で麺状にし、菜種油で軽く揚げる。仕上げに上湯スープをまぶす。ピーマンなど色の濃い野菜を添えると、見た目が一層ひきたつ。

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