地域ルポ “保守の街”月島に時代の波 観光・レジャースポットに変貌

1994.10.17 62号 9面

歩車道のカラー舗装化、アーケードのリニューアルなど商店街の整備には一五年間の努力を費やしたという。この結果において、都の高度化事業の認定を受けて、新しく商店街が生まれ変わったのだ。

しかし、将来展望を考えれば、店舗の大型化、商店街のゾーニング、機能化、文化施設の誘致、建設、土地の高度利用など検討すべきことは多いという。

「古い街並も多く残っていますし、保守的な面も強く残していますから、地域の再開発構想もあるんですが、やはり時間をかけていく必要があるということです」(前出寺本理事長)

一番街をやや行った右手に、下町らしからぬカフェバースタイルの店が目についた。「ムーの子孫」。店名からしてエキサイティングだ。

看板に「もんじゃ食べ放題一二六〇円」とある。もんじゃだけではなく、お好み焼き、焼きそばも時間制限なしの食べ放題だ。

この店のオープンは昨年12月、三階建の店舗で借地しての出店だ。一~三階合わせてトータルの客席数が一五〇席。月島では最大級のもんじゃ焼きレストランだ。

メニューは明太子もち、ナスチーズ、すき焼き各六九〇円、きりイカ四五〇円、エビ、豚各五〇〇円、ミックス五九〇円。このほか、お好み焼きがミックス六九〇円、豚、牛、イカ、エビ玉各六五〇円。

この店のオリジナルメニューもある。デザートもんじゃで、バナナ、リンゴとクルミ、いちごミルク、パンプキン、ぜんざいなど各五〇〇円。

客層はサラリーマン、OLのグループ、学生、カップルなど、平均客単価は一六〇〇円。

この界隈には姉妹店が二店ある。二番街の「天浮船」二号船、清澄通りの「天浮船」一号船がそれ。経営は(株)天浮船グループ(本社=東京・中央区)。すべてここ二、三年の出店で、もんじゃレストランの可能性に挑戦しているものだ。

月島は“もんじゃの街”といわれるだけあって、こういった新顔の店が相次いでいる。新旧合わせると五、六〇軒はあり、もんじゃに限っては日本一の集積度だ。

もんじゃではないが、業態の異なる新顔もある。清澄通り東側(月島四丁目)に今年8月はじめに出店した、一龍グループの「一龍屋台村月島&食ing劇場」月島店がそれで、月島にふさわしい新しい食文化を提案している。

メニューはラーメン、すし、おでん、お好み焼き、浜焼き、大皿料理など約二〇〇アイテムで、客単価三〇〇〇円。月商六〇〇〇万円をクリアしている。

客層は地元ファミリー客から来街のカップル、サラリーマン、OLなどオールゼネレーションだ。

東京ウォータフロントの最前線エリアということもあって、大型の商業施設などは未整備だが、食については新規参入が相次いでおり、エキサイティングな様相を呈している。

今年8月1日オープン。元祖屋台村の一龍グループの直営店‐‐屋台村と劇場をドッキングさせた新しい食文化の提案だ(上)、佃地区では土地の高度利用も進んでいるが、対照的に木造の古い民家も残る(下)

この商店街の店舗数は飲食三三店をトップに、食料品二三店、衣料二二店、菓子・パン・茶一一店、時計・カメラ・家電九店、家具・寝具・インテリア八店、化粧品・薬品七店、金物・食器・雑貨六店、娯楽五店、はきもの・傘四店、美容・クリーニング三店、その他九店の計一五三店。

飲食店舗は二割以上で、このほとんどが月島名物の「もんじゃ焼き」で商店街を一番街から四番街にタテに歩いても、目につくものはもんじゃ焼きの店だ。

もんじゃ焼きは、お好み焼きの変形で、小麦粉を薄く溶かしたものを肉やイカ、エビなどの具と混ぜて、それを鉄板で焼いて食べるものだが、これは食糧事情の悪かった昭和20年代に登場してきたもので、その始まりは駄菓子屋にあるという。

駄菓子屋の隅に鉄板一枚を置いて、それを子供たちが好物にしたのだ。だから、そのルーツをひいてか、現在の店も民家を改造した一〇坪、一五坪程度の小さな店が多い。

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