地域ルポ 新百合ケ丘(川崎・麻生区)世田谷・町田線沿いに老舗の飲食ゾーン
北口に出る。南口と異なって、ここは小さな円形の車寄せの広場になっており、前面は二車線道路の交差点になっている。西方向に行けば麻生区役所があるが直進する。
交差点を渡った右角に四階建ての雑居ビルがあり、一階にパチンコ、二、三階にカラオケ、四階には居酒屋チェーンの白木屋が出店している。
このビルの北隣には小田急所有の三、四階建てのビルが二棟並んでおり、ミスタードーナツほかすし、串焼き割烹、喫茶・ワインパブ、焼肉レストラン、うなぎ料理などの店が展開している。
ミスタードーナツは(株)太陽エンタープライズ(本社・横浜市)の直営(フランチャイズ)店で、店舗面積約四〇坪、三七席、平成2年12月のオープン。
同社はミスタードーナツの有力フランチャイザーで、東京、埼玉、神奈川を中心にして計一七店をチェーン展開している。
ミスタードーナツから北へ約五〇~六〇m。ゆるやかなスロープになっているが、その終端は東西を貫く世田谷・町田線(産業道路)とクロスする交差点(新百合ヶ丘駅入口)で、車の往来が激しい。
駅方向を背にして交差点の右角に川崎市多摩農業協同組合ビル、左角が七階建てのホテルパストラルガーデン。
このホテルは地元資本で昨年12月にオープン。ビジネスホテルとシティホテルの中間的機能をもつというコンセプトで、三~七階がホテルで四三室(シングル七八〇〇円、ダブル一万一〇〇〇円)、一、二階は店舗で、二階にはカラオケスタジオ付きのダイニングルーム「竹亭」、居酒屋「鈴の屋グループ」の二店が出店している。
道を挟んでこのホテルの正面、すなわち交差点の角地に立地する形で、二階建ての「新百合ヶ丘ヤサキグルメ街」(駐車場二〇台)が存在する。
一六年前のオープンで地域では老舗格の飲食ゾーンだ。一、二階にそれぞれ六店舗ずつ計一二店、パブ、スナック、居酒屋、串焼き、すし、ラーメン、中華料理、日本料理などを集約するが、オープン当初から出店しているのはわずか三店舗で、他は入れ代わっての営業だという。
駅南口方向に戻る。
駅南口の八階建ての大型ビル「小田急アコルデ」は小田急建設、日動火災海上、フコク生命、第一生命などが入居するオフィスビルだが、一~三階にマクドナルドをはじめ、ラーメン「めんいち」、すきやき丼「つかさ」、生そば「箱根」、洋菓子・喫茶「ジロー」、ビアレストラン「スタジオフレスコ」といった飲食店舗が展開している。
スタジオフレスコはアサヒビールの子会社ピザ・スタジオが経営するビアレストランで、三年前のオープン。
店舗面積約五〇坪、一〇〇席。地域でも本格的なレストランで、自家製パスタや肉料理が売りものだ。
人気メニューはニンニクと赤唐辛子のタリオリーニ八五〇円、和風醤油ソースのタリオーニ九五〇円、チーズリゾット一二〇〇円、イタリア直輸入のデュラムのスパゲティ八五〇~一一〇〇円、ビーフストロガノフ一二〇〇円、ビーフステーキガーリックソース一三〇〇円など。
客単価昼一三〇〇円、夜一八〇〇円で、客層は二〇代の若い女性や学生、カップル、ファミリー客など平均日商四〇万円前後。
地域のダイニングルームとしての使われ方で、夜はビールもよく出る。ビールはスーパードライ生四九〇円、中びんピュアゴールド五〇〇円。
中華料理「福林」はその生き残り三店舗のうちの一店で、大衆広東料理(三〇品目)を売りものにしており、中華そばに牛バラ肉を入れたビーフシチュータイプの「牛肉バラそば」(六〇〇円)はオリジナルで、評判のメニューだ。
世田谷・町田線は交通量が激しいので、地域の再開発事業に伴っては、将来的には拡幅する計画にあるが、ドライブ客の利用を当てこんで、多様な飲食店舗が点在する。
また、この道路沿いには大手自動車ディーラーや中古車センターの存在も目につく。“ドライビングマーケット”が成立しているということか。
駅北口に戻って区役所方向に進む。駅広場に接して西側に建つのは、六階建て「新百合ヶ丘シティビルディング」で、住友銀行や日興証券、セコム、三井不動産事務所などが入居している。
このビルに沿ってやや進むと西隣に地上八階、地下二階建ての「新百合ヶ丘21(トウエンティワンビル)」だ。第二電電をはじめ、富士ゼロックス、富士通ファコム、ジャックス、川崎新都心情報センターなどが入居しているほか、地下一階には和食処「夢庵」、季節料理「三色董」などの日本料理の店が出店している。
夢庵はすかいらーくの直営店で、今年1月のオープン。すいからーくはこのタイプの店を計八〇店チェーン化しているが、ビルインタイプの店は新百合ヶ丘店が初めてのケース。
店舗面積約六〇坪、一八〇席。天ぷら、揚げもの二八〇~六八〇円、煮物三八〇~四八〇円、丼物四八〇~六八〇円、うどん二八〇~三八〇円、焼物・肉料理四八〇~五八〇円などが代表的メニューで、客単価は一〇〇〇~一五〇〇円。
客層は区役所の職員や周辺ビルのオフィスワーカー、カップル、ファミリー客など。ビルイン店舗でありながら、料理やサービス面のクオリティと低価格志向で、集客力を確実にしているようだ。
このビルの正面に麻生区役所、左手(西隣)に九階建て農住(URSIS)ビル。農住ビルには住友林業、新百合ヵ丘農住都市開発、富士通パソコンシステムズ、三井建設などが入居するが、一階に香港飲茶料理「シノワーズ」、二階に鳥料理と釜めしを看板メニューとする「鳥はな」の二店が出店している。
鳥はなの釜めしは、とり釜八三〇円、五目八五〇円、鮭九〇〇円など七種。鳥肉は岩手産のもので、無添加飼料とミネラルによるアルカリ性体質の“自然素材”。
新百合ヶ丘駅周辺における飲食店舗の存在はこのあたりまでが中心ゾーンだが、街はまだ半分が未整備状態ということで、飲食、物販など商業店舗の出店は大きな可能性を秘めている。