特集 お好み焼き・たこ焼き・もんじゃ焼き 2大巨匠が語るお好み甘口辛口

1995.02.06 69号 15面

お好み焼きは庶民的なものですからシーズンを問いません。年間を通じて売上げが大きくバラつくこともありません。日本伝統の味として若い人はもちろん、赤ちゃんの離乳食からお年寄りまで幅広く対応でき、特に具材で簡単に好みのメニューができるので、昨今の外食の多様化時代に向かっての一番の魅力となっています。

栄養面でもそば、うどん、丼物などに比べ非常にバランスがとれています。「ソースと小麦粉とキャベツ」の三要素で、いつでもどこでもおいしく作れることを私の教室のモットーにしています。「簡単に作れ、初期投資も自由自在」がお好み焼き店開店の最大の魅力だと思います。地域や場所によりメニュー構成や店構えの選択肢が広く、出店場所を選びません。

お好み焼きは素人の方でも短期間で技術を習得できます。しかし、どこにでもあるお好み焼きの味では絶対に負けてしまいます。時代に即応した味と伝統の味をミックスすることが大切となってきます。最近では独自にテークアウト用商品を開発。イートインとの併用で経営強化の一策を提案しています。

‐‐教室の受講生にもなぜお好み焼きなのかを聞いてみたところ、食べる側も作る側も年齢制限がない。食材ロスが出ない。作りたてのアツアツが最高なので他の飲食店と差別化できる。お客の顔を見ながら商売ができる‐‐などの意見が出た。中には「調理が簡単なので人に安心して任せられる。余暇を作りやすく趣味を持続できる」と商売と趣味の両立をあげたチャッカリ型の意見もあり、お好み賛美に花をそえた。

お好みなので具は何を使ってもよい。たまたま中華麺、うどんを入れていかに上手に食べさせるかが広島のお好み焼きで、私はこの広島発祥の広島流お好み焼きを広めたいと思っています。お好みに携わって四十数年になりますが、その間、いろいろな方との競演のお話があり、ある時科学の先生とどうしたら最もおいしく仕上がるのか、具や焼く道具を変えたりして焼き比べをしたことがあります。お好みの髄まで知ろうとの意気込みがありました。結論は具は脂ののった豚が一番味も良く、仕上がりもおいしい。キャベツも盛り方で熱の入り方が微妙に違い、味も仕上がり時間も違うなど、体験していることが実証された形でした。お好みはシンプルに見えますが、科学的にも合理的な調理法、栄養などが実証されているんです。

ホテルでは高級感を出そうと競って豪華な素材を使って付加価値を高めていますが、そもそもお好みの本質は日常冷蔵庫にある安い食材をいかにおいしく食べさせるかという商売なんです。新鮮な魚介類は生で食べたり、それなりの食べ方をしたほうが素材そのものの最もおいしい味を楽しめるのです。

マニュアル化不可できたては広島で

ブームに乗ってお好みをしているところは、形はお好みですがお好みの原点を理解していないので全く別物です。一万円でも一〇〇〇円でも“おいしい”という感動に変わりはない。一万円に対抗しておいしいと言ってもらえるにはどうしたらよいかの追求が大切なんです。たとえば、牛肉は鉄板につくが豚肉は脂身があってつかない。

お好みのもう一つむずかしいことは、数字に不向きというところです。粉やキャベツなど具材は計ることができても、鉄板の温度は見えないし、中身の焼き具合も見えず、マニュアル化ができない。どうしてもお好みのおいしい店は、職人気質で人にはまかせられないというオーナーが多い。これがグルメの街東京に、おいしいお好みが広島から進出できないゆえんと思われます。

できたてのお好みはやはり広島に来て広島の風土で味わうのが一番ですが、冷凍・チルドのおみやげ用広島お好み焼きを全国に届けようという協会はあります。広島の味が全国に出る時に味の劣化があってはいけないと、それぞれ努力しています。

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