厨房のウラ側チェック(68)PL法と飲食店(その1)
Product Liability(製造物責任)は、製品が原因で人の生命、身体または財産にかかわる損害の責任をさすもので、PLと略されます。このPLの制度化がPL法(製造物責任法)と呼ばれている法律です。PL法は昨年7月1日に公布され、本年の7月1日に施行される運びとなっております。
条文はわずかに六条です。その法理は、無過失責任主義で、民法第七〇九条(不法行為責任)の過失責任主義とは一線を画するものです。なぜ、民法の第七〇九条かと申しますと、今回のPL法が施行されるまでは、飲食業のPL事故の代表である食中毒の民事罰を、七〇九条によって判決されていたからです。
まず、PL法を簡単に理解してもらうために、条文タイトルなどを記述してみます。
第一条は目的。PLの制度化に関する被害者の保護。第二条は定義。製造物は動産、欠陥は社会通念上の安全性欠除、製造業者の範囲。第三条は製造物責任。損害や賠償の範囲。第四条は免責事由。開発や部品・原材料の抗弁。第五条は期間の制限。賠償の請求権は三年で時効。また引き渡しから一〇年で時効。もちろん特例もあります。第六条は民法の適用。その他、製造物責任法案に対する附帯決議が衆参の各商工委員会から本法の円滑な実行を図るための諸点があります。
次に、われわれがPL法を考える基本としては、その法案提出に至った背景を理解しなければなりません。(1)二年も前から国民生活審議会などにおいて検討をされてきたこと(2)生活者重視の考え方が非常に普及してきたこと(3)規制緩和の動きが強まってきたこと(4)製品輸入が非常に増えてきたこと(5)ヨーロッパの各国でも立法化が進展してきたこと。以上の五項目が大きい背景になっていることでしょう。
特に、規制緩和の問題は、法的な強制ではなく、自主規制の自己責任に転換しなければならないのです。それは消費者保護基本法の精神であり、自主規制・自己責任のますますの重要性が問われるものです。この消費者保護基本法は昭和43年5月に制定された法律です。その目的は、消費者の利益の擁護および増進に関する対策の総合的推進を図り、もって国民の消費生活の安定と向上を確保することです。
そして、第四条には事業者の責務についての条文がありますので、次回に説明したいと思います。
食品衛生コンサルタント
藤 洋