厨房のウラ側チェック(8) 厨房内に潜む細菌達(4)

1992.07.20 8号 4面

厨房のウラ側から見た「厨房内の細菌達」も、今回の連載で器具や設備関係等における汚染状況をいったん終了する。「まな板」と「ふきん」については、その1で、「冷蔵庫の取手」はその2で、そして、「包丁」と「手指」については、その3で述べた。今回は、ボールやバット等の容器類と製氷器やディッシャー等に潜む細菌達について若干の検査データに基づき書き進めてみる。

まず、「ボールやバット」の様な容器は、調理のための下ごしらえなどに使用するものだから、現在ではステンレス製が中心で、一部に高分子化合物の素材のものもある。このような容器の特徴は、掃除しやすく、水切れが良く、場所を大きく取らないで重ねられる形状をしている。

結果、よっぽどきたなく調理容器として使用しないかぎりは、大変にきれいな状態にあるものと考えられるが、検査成績はその反対の結果であった。なぜだろう! 原因は、大部分が再汚染である。問題点としては、ボールやバットの保管場所が、厨房内の洗い場、それも、洗い場の下で、上向きに重ねて置くからである。きれいに洗浄した容器に、その後に洗ったきたない容器のきたない水がかかり、再汚染の構図ができ上がるわけである。

その証拠に、重ねてある真中あたりに、保管されているボールを取り出し、検査した結果は、案の上、悪い成績であった。一般生菌数の数もさることながら、他に大腸菌群や大腸菌の検出率も高くなっている。対処法は、いたって簡単なことである。下向きにボールやバットを重ねて置くだけで、取り出しには若干の不便さを感ずるが、衛生的には満足できる結果となる。

次に、製氷器の取手、内壁、氷用スコップの柄等における拭き取り検査結果をみると悪いことに気づく。製氷器の置いてある場所は、一般的には厨房内というよりは、パントリーにある方が多いようだ。これは製氷器の機能面から考えると、理解できる。製氷器の取手は、冷蔵庫の取手の検査成績と似ており、悪い状態である。使い手は、ホール担当者、その手指汚染の状況と相関しており、ホール担当者の衛生状態をつかむマーカとなり得る。製氷器の内壁は、きたないなと思っていても、拭き取り結果は、案外と少なく、予想をいいほうに裏切られる。しかし、氷用スコップの柄は、きれいそうにみえても、注意、指導しないかぎりは、きたないものである。氷用スコップは、大半が、製氷器内に放置した状態にあり、その検査結果からは、一般生菌数が4 10、大腸菌群や大腸菌も陽性の場合が多く、また、手指から汚染される黄色ブドウ球菌もかなりの頻度で検出されている。

筆者としては、危険な状態にあると思うので、読者の店舗において、速やかにチェックしていただき、改善してほしい。なお、一部の営業店で見かけることがある最悪の事例は、製氷器を冷蔵庫がわりに使用していることである。氷の中に飲料水のPETボトル、チョコレート、レモンのスライス等を入れている場合がある。

このような行為は、絶対にやってはならないことであり、従事者の働く姿勢が遊び半分であることが多く、また、それ以以上に、店舗責任者の管理能力の低下あるいは能力不足からくる無処置等である。本文のタイトルである「厨房のウラ側チェック」としては、必ず本部社員等がチェックしなくてはならない指定場所なのである。

次に、アイスクリームを取るディッシャーの場合は、使用する頻度により差違があるが、適当な間隔で水洗処理をしなければ、大きな細菌のかたまりを作る可能性があるので、清潔をモットーにして取り扱いに注意してほしい。以上の代表的な調理道具、設備及び手指などを例にして具体的な細菌の定性や定量について解説してきたが、その他の道具や設備関係についても、同様な状態にあることを読者の皆さんにご承知いただけたものと思う。くれぐれも、洗浄や消毒をしたつもりにならないように徹底してほしいと思う。

食品衛生コンサルタント

藤 洋

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