総点検-激震下の外食・飲食業 テンアライド「天狗」

1995.09.04 84号 5面

「天狗チェーン」は欧米のビアホールやパブ、カジュアルレストランをイメージしているというだけあって明るい。しかも、木造りの“山小屋風”の内装なのでシンプルな中に温かみがある。

従業員も全員がユニフォーム着用で、接客サービスも健康的でキビキビとしている。店内も常にクリンリネスが行き届いていて清潔だ。

しかし、店の天井が低いせいか、それとも席を詰め過ぎているせいか、満席になると大声を出さないと会話もままならないという“騒がしさ”がある。

天狗は大衆居酒屋チェーンであるので、それだけ客が多く賑わっているということか。

平成6年度店舗数は一四〇店、うち三店が社員の独立開業的なFC店だが、基本的には直営主義で西暦二〇〇〇年を目標に二〇〇店を出店する計画だ。

店舗は五〇坪から一〇〇、二〇〇坪前後と多様だが、標準的な大きさは五〇坪、一二〇席前後だ。この規模での売上げは月商九〇〇~一〇〇〇万円。粗利六五%前後といったところだ。

メニューは、一品料理(二五〇~三五〇円)、串焼き(二四〇~二八〇円)、焼魚・煮魚(三〇〇~四二〇円)、肉料理(三八〇~四八〇円)、揚げもの(二八〇~三五〇円)、煮物(三二〇~三八〇円)、刺身(三八〇~五八〇円)、旬のメニュー(三二〇~四八〇円)、中華街の味(二二〇~四八〇円)、サラダ(三二〇~三八〇円)、デザート(二八〇~三八〇円)、食事メニュー(二五〇~三八〇円)など一三種六、七〇品目を提供しており、徹底して絞り込んであるという印象だ。

アルコールはもちろん、生ビール(大六〇〇円、中四〇〇円)をはじめ、日本酒(お銚子四九〇円、中徳六九〇円、大徳一一八〇円)、生酒(小びん五五〇円、大びん九〇〇円)、サワー&カクテル(三二〇~三五〇円)、このほか、ワイン、ウイスキー、バーボンとほとんどのものを揃えているが、よく出るのは生ビール、日本酒、サワー類だ。

天狗は生ビールについてはオリジナルブランドの「ビア・ブラウン」(大六六〇円、中四四〇円)も提供しているが、びんビールは一切おいていない。

この理由は客に常にフレッシュなビールを提供すること、もう一つはびんビールはストックの面でスペースを取るし、サービス面でも煩わしさが発生してくるからだ。

客層は中高年、若者と広角度だが、平均的にみれば二〇~三〇代が全体の五割前後を占めている。客単価は二二〇〇円。

サラリーマンのポケットマネーで週一、二回は利用できる金額だが、客によっては大ジョッキ一杯で、つまみ二、三品というケースもあり、一四〇〇~一五〇〇円で居酒屋タイムを楽しむこともできる。

居酒屋タイムというと、天狗の営業時間は午後5時から同11時までだが、基本的には定休日は設けていない。

店の売上げを高めるために、営業日数を拡大することは不可欠なことだが、他の居酒屋チェーンのようにランチサービスは導入していない。

しかし、正確にいえばテスト的に新橋店をはじめ、八重州、銀座ナイン、東京駅前、虎ノ門、ニュー虎ノ門店の六店舗でランチサービスを実施しており、今後の成果をみてビジネス街や駅前などサラリーマンの多い立地で、ランチサービスを導入していく考えにある。

天狗の“二毛作経営”ということだが、しかし、目下のところメニューは「すきやき定食」(四八〇円)一品のみで、この点も効率主義の天狗らしいランチメニューだ。

天狗の店舗展開は首都圏を主体に近畿、中部、九州、東北、信越、北陸などで具体化しており、年間三〇店前後のペースで出店している。

売上げは九五年3月期(九四年度)が二六八億円(前年比一九・六%増)、店舗数一四〇店(同一四・八%)で、毎年4月に発表される「日本経済新聞飲食業ランキング二〇〇社」、(九四年度)でも、売上げは四六位に位置しており、高い成長率を示している。

九五年度は売上げ三一〇億円、店舗数は新規に三五店を上乗せして一七五店の目標を立てており、積極経営の姿勢をみせている。

天狗の店舗コンセプトは欧米のビアレストランやカジュアルレストランをイメージし、内装は木造り感覚で明るい

〈テンアライド(株)〉

・所在地/東京都中央区日本橋馬喰町一‐七‐三

・設立/昭和44年12月

・資本金/四二億三三〇〇万円

・代表取締役社長/飯田永太

・店舗数/直営一三七店、FC三店、計一四〇店

・売上高(平成6年度)/二六八億円(前年比一九・六%増)

「庄や」「やるき茶屋」と「天狗」は好対象だ。前者は“和風居酒屋”、後者は“洋風ビアレストラン”。そして、庄や、やるき茶屋は日本的ホスピタリティーが店舗運営の精神。天狗はコックレスシステムに象徴されるように、徹底して効率とシステムの追求。問題は企業(店)のポリシーと客の価値観および感性がどうフィットするかだが、客の最大の関心事は、「おいしさ」「価格」「店の雰囲気」(クリンリネス)ということだろう。

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