飲食店成功の知恵(73)繁盛編 時間帯別営業方針の徹底(1)
いま、一般的な飲食店の一日の売上げの時間帯比率は、昼が四割、夜が六割くらいである。昔は昼三割、夜七割というのがふつうだったが、いまは競争が厳しく、夜の苦戦が恒常化してきている。とくに小規模店は、昼と夜が五分五分というケースも珍しくはない。
つまり、小規模店になればなるほど、昼の売上げ比率が高いわけだが、ここで大事なことは、昼と夜とではお客の来店動機が変わるということだ。昼のお客の大半は「腹ごしらえ」が目的であり、夜のお客は「食事を楽しみたい」という気持ちが強い。したがって、効率よく売上げアップを図るためには、来店動機別に絞り込んだ方針をはっきりさせる必要がある。
まず、ランチタイムから考えてみよう。ランチタイムはいま、飲食店のいちばんの稼ぎ時である。昼食は外食が当たり前の時代だ。ところが、ランチタイムの売上げアップが意外と実現できていない。短時間にお客が集中してしまうため、入ってくれるはずのお客もみすみす逃してしまうからだ。席数の少ない小規模店にとってはとくに、この機会損失は大きな問題である。
ふつうランチタイムには、午前11時か11時半から午後2時までに設定されている。しかし、実際にお店が満席状態になっているのは正午から午後1時までの一時間でしかない。つまり、午前中と午後一時すぎの一時間は売上げが上がらないばかりか、人件費までムダになっている。
しかし、一見不可抗力に見えるこの問題にも、解決策はある。お客の誘導だ。短時間に集中してしまうお客の来店時間を分散させるようにし向けることだ。それには、タイムサービスを導入するもいい。午前中と午後1時以降に来店したお客に特典を付けるのである。たとえば、午前中に来店したら五〇円割引き、1時以降はコーヒーを無料サービス、という具合だ。こうすれば、実質的なランチタイムは少なくとも倍以上に伸びることになり、客数も一・五倍程度は見込めるはずである。
もちろん、客回転をよくするための態勢づくりは不可欠だ。料理は少しでも早く出せるようにし、食べ終えたお皿は素早く下げる。こういうお店のリズムがあると、お客も自然と長居しなくなるものだ。
ランチタイムのお客は「腹ごしらえ」の気持ちが強いということは、それだけ価格に対して敏感だということだ。したがってこの時間帯は客単価ではなく、客数で稼ぐ必要がある、ということになる。お客来店時間を分散させるのはその客数を確保するためだが、肝心の商品に魅力がなければ、わざわざ時間をズラしてまで来てくれない。これも大事なポイントである。ひと口にランチといってもいろいろなニーズがある。それをできるだけすくい上げるようなメニューづくりが不可欠なのだ。
たとえば、量があってしかも毎日食べて飽きないランチの欲しい男性客が多ければ、日替わり幕の内弁当などのボリュームたっぷりランチを提供する。若い女性客が多い立地なら、量は少なくてもお値打ちでかつヘルシーなメニューが必要になる。忙しいビジネスマンに対して、早くて安いスピードランチ(カレーなど)をつくる、という具合である。とにかく、ランチは毎日でも来てもらわなければならないのだから、何かひとつ、強烈なアピール力を持たなければダメだ。
また、客単価が低いという前提がある以上、ロス、ムダの排除も大きいテーマになる。安くてボリュームのあるメニューにするには、前夜の残り材料を上手に活用することが必要だ。その点、日替わり弁当にすれば、どんな材料もムダにはならない。
フードサービスコンサルタントグループ
チーフコンサルタント 宇井 義行