お好み焼き・たこ焼き・もんじゃ焼き 幻の食材ブラックマッペ細モヤシ
お好み焼きの人気の秘密は“安価で栄養満点でうまい”につきる。食材は何でも“お好み”次第で相性よく商品化でき、使う食材によって大衆価格から高級価格と変化自在も特徴だ。しかし、だからこそ元祖の味にこだわりたいという要望も根強い。特に広島風お好みのポイントは関西以西にのみ使用される青ネギとブラックマッペの細モヤシだが、生鮮品である上に安価すぎて西から運ぶには運搬コストがかりすぎ、東では幻の食材であった。しかし、東京で広島風お好みが普及するにつれて独特の風味を出すこれら食材を要望する機運が高まり、オタフクソース(株)が2月から関東地区で細モヤシの提供を開始した。お好み専用モヤシの特徴、流通などについて同社東京支店に聞いた。
■なぜ細モヤシなのですか。
広島では緑豆モヤシとブラックマッペの二種が主流で、特にブラックマッペの細モヤシが多く使われています。関東では緑豆の太めです。広島のお好みはモヤシを五〇~六〇g使うが、モヤシが香ばしく風味も生かされて味がおいしい。これが太モヤシ同量だと少し生臭みが残り、水っぽくなり風味がなく味が落ちるので、使用量が少量となる。このように、本場広島と東京ではモヤシで味に差が出てしまう。東京の広島風お好み焼屋はブラックマッペを望んでいるのですが、一キログラム一五〇円前後のモヤシを一店舗あたりせいぜい使って一日五キログラムぐらい。これを毎日西から運んでいたのでは運搬コストがかかりすぎて使えないというのが現状でした。
■2月から関東で細モヤシの提供を開始しましたが、流通の問題をどう解消したのですか。欲しい時にはどこに連絡を取ればいいのですか。
関東圏での細モヤシ生産を埼玉県の三和農林に依頼しました。従来のモヤシは太くするためにエチレンガスを室内に充満して五~六日で生産されますが、細モヤシの場合、冬場で一〇日、夏場でも七日が必要。三和さんには細モヤシを作るための新しい室を作って試行錯誤を重ねてもらい、ブラックマッペでやっと関西と同様のものができたという経緯があります。
製品ができて今度は配送ですが、この分野は宅配惣菜を全国展開しているタイヘイに協力願いました。モヤシだけでは配送コストが取れないことは事実なので搬入する月額取引条件が若干あります。取りあえず2月から三ヵ月間のお試し期間としてスタートしました。取引先を回ったところ反応は十分にあり、1月中旬で三十数店舗から試しの引き合いが入っています。
実際に商品を持って回っているのですが、ほとんどの方がサクサク感があって香ばしくおいしいと細モヤシは好評です。知っている方には念願のモヤシが手にはいると大変喜んでいただきました。
■細モヤシをタイヘイさんから引くことで若干仕入れの制約が生じますが、それでもメリットは大ですか。
店舗で仕入れ価格はまちまちなので一概には言えないが、店サイドの発注を絞り込んで手続きが簡便になることはあるかと思う。モヤシの価格に限って言えば、生産日数など太モヤシより手がかかるが同価格。何より、お好みのおいしさを追求でき、他店と差別化できることは大きい。
また、一社でできないことでも数社で取り組んで不可能を可能にする時代。細モヤシへの取り組みには惣菜のベンダーさんにも大変注目してもらっており、隠れたニーズがある。本物の時代だからこその商品と思っています。今後も根の短いモヤシなど研究を続けておいしさを追求、提案していきます。