FCビジネス点検 珈琲館(マナベ㈱) 2店舗目から加盟金5割ダウンの特典
街中から喫茶店が消え始めて久しい。「一八〇円コーヒー」に代表される低価格でチェーン展開の喫茶ビジネスに、その存在を駆逐されてきているからだ。
喫茶店は、とくに都会生活者にとってはオアシスだが、しかし、個性も主張もない単なるコーヒー売りは淘汰されていくしかない。
無名の喫茶店でもその役割は大きいが、競合・競争に負けて経営が成り立たなくなれば、市場から消えていくしかない。
喫茶業界は、大きくみれば低価格ファストフード的な業態と、ゆとりの空間と高付加価値サービスを売る業態との二極化の方向に進んできている。
このカテゴリーからみれば、珈琲館はもちろん高付加価値サービスの業態だ。
「昭和61年に喫茶店数が減少し始めてから“喫茶店存亡の時代”と言われてきておりますが、私どもは“人の質”“味の質”“店の質”を追求し、常に高品質の商品(コーヒー)とサービスを提供してきております。この結果、当社の店(チェーン)は広い客層に支持されており、全店で一日平均一五万人もの利用者があるのです」(珈琲館チェーン本部)
店舗数は九五年5月期決算で直営六二店、FC三三〇店の計三九二店。売上げは一七三億円(前年比約四%増)。
喫茶ビジネスでは、ドトールコーヒーに次いで第二位の位置にあるが、単独の“高付加価値喫茶”では珈琲館が先行するという状況にある。
店舗出店は年間二〇店前後のペースで推進しているが、九六年度5月期では直営、FC合わせて計四〇七店、売上げ約一七九億六〇〇〇万円を見込んでいる。
FC展開は、出店エリアを東日本本部、西日本本部の「二大本部制」で、北海道から沖縄まで全国規模で推進している。
店舗出店は、都心(市街地)と郊外(ロードサイド)立地の二タイプ。店の規模は市街地立地で二〇~四〇坪、郊外立地で五〇坪だが、出店は九割が市街地のビルインタイプ、残り一割が郊外立地で、ロードサイド出店のウエートはまだ小さい。
FC加盟の条件は、加盟金が八〇万円+坪数×二万円(二〇坪の場合で一二〇万円)、保証金が一律九〇万円、ロイヤルティー三万円+席数×二〇〇円。
加盟金については、二店目の出店からは四〇万円と五割ダウンするほか、店舗資金調達についても金融機関の紹介、あるいは本部が連帯保証人になるといった支援体制も導入している。
契約期間五年。店舗開設資金は自己物件であれば、二〇坪規模で二四〇〇万円前後(内外装工事費、厨房設備費、その他など)。
モデル収支は表に掲げるとおりだが、売上げは二〇坪の場合で月商三六〇万円、減価償却前利益七〇万二〇〇〇円(対売上げ比一九・五%)。
売上げは坪売り換算で月間一八万円(日商六〇〇〇円)。原材料コストが二六・四%であるので、グロスの売上げは小さいが、他の飲食ビジネスに比べ収益力は大きいということだ。
商品(メニュー)一二品目と絞り込んでいるが、貢献度の高いものは炭火コーヒー四五〇円、珈琲館ブレンド四〇〇円、ブレンドNo.3三〇〇円など。
客単価は場所によって異なるが、標準的には都心立地で五〇〇円、郊外立地で六〇〇円前後。営業時間は午前8時~午後10時が基本パターンだが、これも立地によって流動的だ。定休日は設けていない。
(しま・こうたつ)
・企業名/マナベ(株)
・ストアーブランド/珈琲館
・設立/昭和47年6月
・所在地/東京都千代田区神田鍛冶町三‐六
・電話/03・3258・1151
・資本金/三〇〇〇万円
・代表取締役社長/真鍋国雄
・店舗数/直営六一店、FC三一三店(計三七四店)
・売上高/一六五億〇九〇〇万円(九四年5月期)
平成3年4月に看板、ロゴマークを一新し、自然、清潔、明るさ、優しさをアピール。街中のオアシスとして、コーヒーのおいしさと空間の落ち着きにこだわっている(写真は都心タイプ=東京・港区三田店〈FC〉)