FCビジネス点検 弁当チェーン「ほっかほっか亭」
「温かいご飯」(弁当)を提供する。今では当たり前のことになっているが、これが登場したころは画期的なことだった。
昭和51年6月、今から二〇年前、埼玉県草加市西町で創業した「ほっかほっか亭」の第一号店だ。
温かいご飯とおかずを提供するテークアウト弁当ショップ。創業者田淵道行氏のアイデアで生まれた、いわば弁当のファストフードショップで、アメリカなどから上陸してきたハンバーガーやドーナツチェーンに触発されての開業だ。
53年4月にはFCシステムを導入し、54年12月には一三〇店を出店するというハイテンポでの店舗展開をみせた。
平成8年1月末現在の店舗数は二九三〇店。すべてFC店で、売上げは今年2月期で一五〇〇億円(前年比七%増)を達成する見通しだ。
日本の外食ビジネスでもトップクラスの企業で、FC展開は年間二〇〇店のペースで伸びている。
FC展開は北海道から九州、沖縄まで全国規模で行っており、きめ細かな出店(FC)ネットワークシステムが完成している。
このネットワークシステムは、総本部を軸に全国を「東部地域本部」「関西地域本部」「九州地域本部」の三ブロックに分け、さらにその下に都道府県別に「地区本部」や「事業部」を置くというシステム。
都市部の街角でほっかほっか亭をよく見かけるのは、こういった出店システムによるものだが、しかし、実際のチェーン展開はFCオーナー一〇〇〇人ほどに依存しているのみだ。
加盟店の複数出店を認めているので、一オーナーで少ない人で二、三店、多い人で二〇店舗くらいを出店しているので、チェーン化は容易なわけだ。
出店数を伸ばしていくのは容易だろうが、問題は店舗の収益力だ。加盟店サイドにおいて着実な利益が確保できなければ、不満が生じる。
弁当販売は専門チェーンばかりではない。ここ数年来の傾向として、街角のレストラン、居酒屋、スナック、パン屋などでも売り出している。
最大の脅威は、コンビニの弁当販売だ。コンビニの出店攻勢はすさまじい。市街地出店はもとより、郊外でも目白押しだ。
「競合関係は同業他社ばかりではなく、異業種、異業態までに広がってきています。とくに、コンビニは集客力が大きいので弁当利用者も多く、私たち弁当チェーンにとっては、強力なライバルという存在です」(ほっかほっか亭総本部管理統括部部長光成新平氏)
ほっかほっか亭のマーケティング力、店舗オペレーションの質が求められるところだが、しかし、同社の考え方は目先にとらわれてハデなことはしない。
経営理念である「損得より常に顧客に喜ばれる商品を追求する」。すなわち、Honesty(まじめに)、Hot(温かい弁当の提供)、Heart(心をこめて)の「3H」の精神で弁当ビジネスを展開していくということだ。
店舗の訴求力を高めるために、平成5年3月、店舗デザインを明るく、クリーンなイメージにし、また従業員のユニフォームもおしゃれな雰囲気に変更した。来店動機を高めているのは言うまでもない。
FC加盟条件は、加盟金一〇〇万円、保証金一〇〇万円、ロイヤルティー月額九万円(定額)、販促費月間売上げの一%、契約期間五年。
店舗開業資金は一五坪規模(自己物件)で一三六〇万~一六一〇万円。売上げは立地条件によって異なってくるので一定ではないが、月商三六〇万~六〇〇万円。原価率は食材(四四%)、包材(六%)を含め五〇%、粗利五〇%。
メニューは幕の内弁当五〇〇円、焼き肉弁当四八〇円、ステーキ弁当五八〇円、唐揚げ弁当四三〇円、かつ重五三〇円、くり・きのこごはん四三〇円、のり弁当三三〇円、とん汁一二〇円など約二〇品目(秋冬メニュー)。
(しま・こうたつ)
同業他社を始め、コンビニエンスストアなど他業態との競合が高まってきているので、平成5年3月、店舗デザインを一新し、ハードの面でも訴求力を強化している(東京・目黒FC店)
基本的には手づくり、おいしさの追求だが、店頭販促も実施。毎週木曜日は「弁当の日」で、幕の内弁当500円が390円(2割強)にダウンする
・企業名/(株)ほっかほっか亭総本部
・ストアブランド/ほっかほっか亭
・設立/昭和53年9月
・所在地/東京都港区海岸三‐九‐一五
・電話/03・3456・6601
・資本金/四五六〇万円
・代表取締役社長/田淵道行
・店舗数/直営六八二店、FC二二四五店
・売上高/一五三一億円(九五年度、前年比一〇九・四%)