話題の飲食施設 品川プリンスホテル新館 (東京・品川) ハワイ感覚のブッフェ

1996.03.04 96号 8面

JR品川、京浜急行品川駅前(西口、高輪口)。このエリアはホテルパシフィック、高輪プリンス、新高輪プリンス、品川プリンス、東武ホテルなどが点在する“ホテル街”でもあるが、九四年12月、品川プリンスホテルに新たに地上三九階、地下二階建て、客室数一七三六室の「新館」がグランドオープン、プリンスの資本力をみせつけている。この新館は客室のほか宴会場、各種レストラン、コンビニエンスショップを展開しており、目的客、フリー客合わせ地域来街者の消費・飲食ニーズを満たしている。これら施設にあって最大の話題は、一階に展開する大型(店舗面積三五五坪、客席数四七四席)のブッフェレストラン「ハプナ」だ。このレストランはハワイをイメージしたリゾート感覚の施設で、朝・昼・夜とバラエティーに富んだ和・洋・中の料理を提供しており、オープン以来連日の盛況ぶりをみせている。昨年12月30日、オープン一周年で女性客を主体に延べ一〇〇万人の利用客があり、この施設の集客力の大きさを物語っている。

品川プリンスホテル新館は、シングル、ツイン、ダブルルームを合わせ一七三六室の客室と一五の宴会場(各一〇〇坪)、五つのレストラン、バー(ラウンジ)を展開する。

女性客を主体にして絶大な集客力を発揮しているのは一階のブッフェレストラン「ハプナ」だが、二階コーヒーラウンジ「マウナケア」、四階中国料理「品川大飯店」、味街道「五十三次」、三九階ラウンジ・バー&レストラン「トップオブシナガワ」もオリジナリティーをアピールする飲食施設で、宿泊客はもとより来館者の利用を大きく喚起している。

・一階/ブッフェレストラン「ハプナ」(別掲)

・二階/コーヒーラウンジ「マウナケア」

店舗面積一一四坪、客席数一一〇席。ホテル特製ケーキが売りものであるほか、パン、コーヒー、紅茶を提供。朝はパン食べ放題、コーヒー・ジュース飲み放題八〇〇円が宿泊客や女性客に人気。

昼・夜はコーヒー・紅茶五〇〇円から。パン、コーヒー豆のテークアウトもおこなっている。営業時間午前8時~午後10時。

・四階/中国料理「品川大飯店」

店舗面積約三四〇坪、客席数四四六席。中国居酒屋「孫悟空」を併設する大型店で、レストランコーナーでは芝海老のチリソース煮、薄切り豚肉とレンコンの炒め、野菜炒め、若鶏のカレー煮込みなど日替ランチの四品セットが一八〇〇円(二名から)という低価格。夜は北京ダック、牛肉と野菜のオイスターソース炒め、小海老のチリソース煮、マーボードーフ、白菜と干し貝柱の煮付け、点心類など限定一〇品目の冷菜盛り合わせ、コーンスープ、とびこ入りチャーハン、アンニンドーフとセットの食べ放題が三九〇〇円。

居酒屋部門の売りものは飲茶と一品料理のランチ(月~金)が八〇〇円、好みの料理の食べ放題「悟空バイキング」一〇〇〇円、土・休日オンリー(午前11時30分~午後3時)の前菜、料理、点心類=二〇品目、飲み物(アルコール除く)=三品目の「よくばりバイキング」が二〇〇〇円。

すべて値ごろ感をアピールした価格設定だ。営業時間午前11時30分~午後2時、午後6時~同10時、ラーメンコーナー午後10時~同12時(ミッドナイト)。

・三八階/味街道「五十三次」

店舗面積約四三〇坪、客席数五五五席。寿司「日本橋」、季節の鍋「品川」、天婦羅「小田原」、しゃぶしゃぶ「藤川」、串揚げ「桑名」、焼鳥・おでん「亀山」、鉄板焼「三条」の文字どおりに、東海道五十三次の宿場名をネーミングした和食料理七業態を展開。

しゃぶしゃぶ食べ放題と鉄板焼(藤川)、焼きたらば蟹食べ放題(三条)三九〇〇円が人気料理。

昼(ランチ)平日(月~金)一〇〇〇円、夜三〇〇〇円から。営業時間午前11時30分~午後2時、午後6時~同10時。

・三九階/ラウンジ・バー&レストラン「トップオブシナガワ」

店舗面積五〇〇坪、客席数五二四席。新館最上階の飲食施設で東京の街を三六〇度のパノラマで楽しむことができる。

昼はブッフェスタイルでデザート、フルーツ、サンドイッチ、夜は肉、魚介類やパスタ、オードブルなどの料理を提供。

客単価昼一〇〇〇円、夜四〇〇〇円前後。今年6月30日(午後6時~同7時30分)まで生ビール、ウイスキー、フローズンカクテル、ソフトドリンクが一五〇〇円で飲み放題。

ハプナは「モーニングブッフェ」(午前6時30分~10時)で、和・洋のメニュー提供で一六〇〇円。

メニューは和が塩ざけ、さば、イカ大根、筑前煮、焼のり、松前漬け納豆、味噌汁、おかゆ、白いご飯など。

洋はスープ、スクランブルエッグ、ハム、ベーコン、ソーセージ、サラダ類、フルーツ、パン、ジュース類など。

客層はもちろん宿泊客なとビジネスマンが主体だ。

「ランチブッフェ」(午前11時30分~午後3時)は大人二〇〇〇円、子供一〇〇〇円の食べ放題、飲み放題。

メニューはしゃぶしゃぶ、茶そば、スパゲティ、カレー、グラタン、魚と肉料理、イタリアン料理、和風、中華メニュー、サラダ、フルーツ、ケーキ、デザート、アイスクリーム、コーヒー、紅茶、ジュース、ウーロン茶、その他。

「ディナーブッフェ」(午後6時~10時)は大人三九〇〇円、子供二〇〇〇円。

メニューはにぎりずし、カニ、しゃぶしゃぶ、ローストビーフ、茶そば、魚と肉料理、おでん、いか飯、イクラご飯、イタリアン料理、和風、中華メニュー、サラダ、フルーツ、ケーキ、アイスクリーム、コーヒー、紅茶など。

一部ランチブッフェと重なるものもあるが、これもすべて食べ放題だ。

ディナーブッフェはまた一一〇〇円をプラスすると、生ビール、ウイスキーなどのアルコール、ジュース、ウーロン茶が飲み放題となっている。

まさしく、ポストバブル(成熟消費)時代の価格政策だ。

営業は朝の6時30分からだが、ランチタイムともなると、一時間前から人が列を成し、11時ごろには四〇〇人前後もの客が入口に並ぶ。

客席が約四七〇席だから、ほぼ一回転分の客数が営業前から集客できるということだ。

客は無理には詰め込まないし、時間制限(入れ替え)もない。一度入店すれば気のゆくまで食を楽しむことができる。

効率は考えない。すべては客本位。客席キャパシティが大きいので、いろいろと手が打てる。

「広い空間、リゾート気分でゆっくりとくつろいでいただく、“ウインドショッピング的”に、料理ボード(ディスプレー)を目でも楽しんでいただく、いわば五感へのアピールでもあるのです」(前出笹本課長)

天井高九m、壁面内装は明るくガラス張り、地上高一八mのアトリウムの空間に、六mの高さのハワイ産ケンチヤシが六本。常夏のハワイの気分。

客席(ホール)にはドリンクコーナーに、和・洋・中をホールディングする三つの料理ボード。

料理は定番、日替わりメニュー合わせ朝三〇、昼三〇、夜五〇品目前後。一品目当たり常時二〇~三〇人分を盛付ける。

だから、客が料理を取り急ぐことも、一ヵ所に集中して盛付けを醜く崩すこともない。

客層は平日の日中は九割前後が女性(主婦)客、夜は男女カップル、グループ客が多く、土・日はカップル、ファミリー客が主体になる。

一日平均約二七〇〇人の利用。客単価二三〇〇円。日商六〇〇万円以上という計算になる。

品川プリンスホテル新館の飲食施設は、ハプナ、品川大飯店、五十三次、トップオブシナガワの四店舗、ともに四〇〇~五〇〇席の大型店だ。

これは国内のホテルレストランでは有数の客席規模だ。ホテル経営は一般的には宴会、レストラン部門の売上げが全体の五、六割以上を占める。

このため、これら部門を強化、充実することは、ホテルビジネスにおいては重要な課題だ。プリンス新館のレストラン部門においては、ポストバブル時代の消費者意識を念頭において、独自の運営方針を導入している。

まず、施設の運営コンセプトは、施設・料理(ハード)においては「デラックス」、営業・価格設定(ソフト)においては「エコノミー」ということだ。

フランクにいえば、「高品質、低価格志向」ということだが、これは基本的には、仕入れ、店舗規模などスケールメリットが発揮できるからこそ可能であるのだ。

「まず店の運営としては、お客様にとってリーズナブルであることが第一。企業の論理、売上げ主義では考えない。料理の質、バリエーション、適正価格、もちろん接客面にも優しさ、温かみがなくてはダメです。これはプリンスの企業理念でもあるのですが、施設規模(収容キャパシティ)が大きいことによるスケールメリット、とくに、食材関係は旬のものを量的に仕入れ、コストを大幅に削減できるというメリットが発揮できるのです」(品川プリンスホテル笹本猛企画部広報課長)

客席のキャパシティが大きく、料理の質、内容、価格がリーズナブルであれば、それだけ集客力を発揮し、絶体客数(ペイライン)を確保することができるという考え方だ。

ブッフェレストラン「ハプナ」はそれをシンボリックに証明している。

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