お店招待席 「かぼちゃ亭(東京・渋谷)」 カボチャに憑かれて専門レストラン
衰退する喫茶店経営からカボチャ専門レストランに切り替えた結果、二〇~三〇代の女性を中心とした客の輪を広げているのが「かぼちゃ亭」。
「やればやるほど素材の魅力に取り付かれ、カボチャにこだわったことで生まれた人とのつながりが、さらに私をとりこにしたようです」と話すのは、カボチャ大好き人間の井出澄代店長。お店は、昭和60年7月、五年間の喫茶店経営の末、カボチャ専門レストランとして再スタートしたもの。
もともとデザイナーであった井出店長は、食べるのが好き、作るのも大好きな人。転業の際、「誰もやらない新しい分野を模索中、カボチャを取り上げよう」と思いつく。
参考にする同業者もなく、カボチャの知識もない、全くの手探り状態からのスタートだ。
オープン以来の試行錯誤の中、コンセプトは「おいしいカボチャの素材の味をそのまま生かそう」とし、素材を厳選する姿勢は、今も変わらない。
青果物であるカボチャは、収穫が天候に左右されやすく、価格は不安定。しかも地域も一定せず、「カボチャ料理は、素材で味が決まるだけに、仕入れには苦労しました」とのこと。
オープン当初は、メキシコ産が輸入され始めたばかりで、二〇キログラム一万円の時代もあった。今では、冬季でもメキシコをはじめ、ニュージーランド、オーストラリア、アメリカからも輸入されるようになり、「価格、供給の安定とともに、現地での契約栽培も普及し味も安定した」とする。
現在、主に使用するのが「みやこ」「えびす」「くりあじ」などの五種類。一日平均一〇キログラム(五~六玉)を使う。
国産は、地域により異なる旬のものをずらしながら仕入れるが、それでも収穫時の天候により「味が変わるほどデリケートなカボチャ」だけに、当たり外れがままあるようだ。
メニューは、スタート時で五~六アイテム。現在一四アイテムのグランドメニューに、季節に合わせた差し込みメニューとして、肉とカボチャのトマト煮一五〇〇円、カボチャのたぬき豆腐一〇〇〇円など七アイテム。その他、カボチャづくめは苦手という人のために、鰯のグラタン九五〇円、アスパラ明太マヨネーズ七〇〇円など、常時六~七品を置く。
このほか、長年の農家との交流により、国産品の季節物も仕入れ可能となり、期間限定でメニュー化している。
「あかずきん」は、高知産、6~7月収穫、オレンジ色鮮やかな生食に適したもの。「アラジン」は、淡いグリーンの生食、ピクルス用、「錦甘露」は、9~10月収穫、型も小さく水分が少ないため、詰め物用にと使い分けている。
「素材がカボチャだけに、高い値は付けられず、大きな商いにはならないが、カボチャのおいしい料理法、料理への工夫の気持ちを伝えたい」と、創作意欲を燃やす。
「カボチャのチーズコロッケ」(九五〇円)=ゆでたカボチャに調味料とバターでマッシュし、一晩寝かす。そのまま使うと爆発する。クリームチーズを芯にしてカボチャ型にまとめ、きめの細かいパン粉をつけて揚げる
「カボチャのサラダ」(九五〇円)=カボチャを五ミリメートルの厚さに切ってゆでたものに、ソーセージ、玉ネギみじん切り、ワインビネガー、マヨネーズを合わせ、カッテージチーズを散らす。カボチャのうま味を酸味で引き出す
★カボチャのチーズコロッケ(意外に大量のカボチャを使い、充実した1品) …950円
★カボチャのサラダ(カボチャの甘みとワインビネガーの酸味の相性抜群。カッテージチーズでタンパク質を補給したヘルシーメニュー) ………………………………950円
★カボチャのステーキ(輪切りカボチャを、ホタテクリーム、牛肉のトマトソース、生ハムとしめじとチーズの3種類のソースで食す) ………………………………2,600円
★カボチャとアサリのぞうすい ……1,000円
「デザートには目がない」と中原幸代さん。その手の情報誌にはまんべんなく目をとおす。最近はまっているのがチョコフォンデュ。
「このメンバーでは初めてだが、みんなカボチャ大好きなので、のぞきに来た」。自然な甘みと食事に合ったワインが気に入ったという。
週二~三回は外食し、飲むのが目的ではビールを主体に二五〇〇円、食事がメーンでは四〇〇〇円までを予算におく。
「イタリアンは安い店がたくさんあるが、フレンチは数少ない」と、値段にはシビアだ。表看板のメニュー表を見て、入るかどうか決めるという。
「かぼちゃ亭」
〈創業〉昭和60年
〈所在地〉東京都渋谷区渋谷二‐四‐六、Tel03・3409・1184
〈営業時間〉平日午後5時30分~11時、土曜午後5時30分~10時、日・祝日休み
〈店舗面積・席数〉一三坪、一九席
〈従業員数〉正社員三人、パート四人
〈客単価〉二〇〇〇円
〈一日来店客数〉一九人
〈客層〉二〇~三〇代女性が中心