デリバリーの最前線を行く(1)「ピザック」 若手の感性原動力に
(株)フェローズが手掛ける「ピザック」は、神奈川県藤沢市を拠点に首都圏、東海地区で一二店舗(直営二、FC一〇)を展開するデリバリーピザチェーンである。激戦区、藤沢市で勝ち得たチェーンノウハウと、小規模ならではの小回りの効いた商品開発力、サービス力には定評がある。創業八年目を迎えた同チェーンは、今年中に三〇店舗体制を敷き、本社を東京に移転するなど、本格的に全国展開へ乗り出す意向だ。
店舗数が飽和状態を迎え、ヘビーユーザーの定着したデリバリーピザ業態は、品質勝負のサバイバル時代に突入している。流行時のようなビッグセールスが期待できない状況下、既存システムのさらなるスリム化と、ヘビーユーザーのリピーターキャッチが各チェーンの最重要テーマとなっている。そんな渦中、ピザックは地道に積み重ねてきた地力を発揮し始めている。一般的なピザチェーン店の月商が流行時の八〇〇万円から五〇〇万円前後にまで落ち込んでいるのに対し、同チェーンは五〇〇万円から六〇〇万円前後のアップ基調にある。
「品質に優るものなし」これが同社代表の荒川正人氏のモットーだ。氏には一〇年前、他チェーンの店長として現場で采配を振るっていたが、突然チェーンが崩壊しオーナーから店舗経営を譲り受けた経緯がある。デリバリーピザ全盛期、まったく無名でバックアップのない状態で成功を得るためには、品質へのこだわりしかなかったという。黒みがかった香ばしい生地、ブレンドにブレンドを重ねたソース、そしてデリバリーピザではおろそかにされがちなトッピングのフレッシュ感に対する気配りなどはすべて荒川氏とアルバイトを含めた若いスタッフで開発されたもの。
「私自身が当時二〇代(現在三四歳)で、ピザのメーンユーザーである若者の味覚に敏感だった。周りの若いスタッフの提案にも柔軟に対応できた。小規模で若輩ばかりのスタートであったが、それだけに小回りが効いたし年齢的にもユーザーのニーズを熟知していた。若手の感性を尊重し、大手チェーンの対極に構えたことが、繊細な商品開発力とサービス力を養う結果となった」とチェーン育成の源を語る。
若手ならではのアイデアの一つにドリア、スパゲティのメーンアイテム化がある。デリバリーピザ業態では、一時オーダーアップの手段として弁当や飲茶などをアイテム化するチェーンが増えたが、ピザックはあえてそれを見送った。「ピザ店がピザ以外のメニューを届けるのは格好が悪い」というスタッフの声を聞いたからだ。専門店のイメージが崩れると判断したというわけだ。
専門的なイメージを維持したままアイテム化できるピザ以外のアイテムとしてドリア、スパゲティに着目、ピザと合わせてイタリアンイメージを打ち出した。ドリア、スパゲティのメーンアイテム化はまだ珍しく、また保温を目的とするワンウエーの陶器皿も受けて、売上げ一〇~一五%増を達成した。もちろん弁当や飲茶に走ったチェーンのもくろみが外れたのはいうまでもない。
ピザックはいままでのノウハウを凝縮した新システムを完成させ、今年中に三〇店舗体制を敷く計画。スケールメリットはすべて商品開発とFCオーナーの利益還元に注ぐ方針。「本部の儲けが出たからといって事業の多角化にでることはない。ピザ屋はあくまでもピザ屋、ほかに気を取られていたらフランチャイジーに顔が立たない」と品質一筋の熱意をみせる。
そして東京への本社移転については、ピザの発祥地であり品質勝負の激戦区でもある港区を候補に物色中。「デリバリーピザのメッカともいえる地で一番店となって全国展開に拍車をかける」という。
“叩き上げ”をイメージさせるピザ一筋のピザックが今後どのような展開を見せるのか楽しみだ。
【社名】(株)フェローズ
【所在地】神奈川県藤沢市善行
1‐21‐18Tel0466(83)1601
【屋号】ピザック
【代表者】荒川正人
【資本金】1,000万円
【創業】昭和63年7月
【設立】平成4年7月
【店舗数】12(直営2、FC10)
【モデル店舗】善行店
【1店舗平均月商】600万円
【客単価】3,100円
【決算期】6月
【平成7年度年商見込み】9億
3,000万円(直営2、FC13)
【FC店舗開店資金】加盟金50
万円、保証金150万円、その
他1,800万円(900万円分はリ
ース可)