アポなし!新業態チェック(81)「ハンドベイクス(HAND BAKES)」ルミネ新宿2店
●若手クリエーターのコラボチームで話題の立地に次々出店
中目黒の「Beef Kitchen(ビーフキッチン)」をはじめとして、丸の内「LeAF KITCHEN」、渋谷ヒカリエ「シズルガズル(SIZZLe GAZZLe)」など、最先端のロケーションで話題の飲食店を展開する外食企業、サムライが今春出店したのが「ハンドベイクス」というスイーツ主体のカフェ。同店の売り物は、店内で焼き上げるフルーツパイと、ピスタチオを使用したクリームブリュレが入ったフルーツタルトなど、女性を中心に人気の高いアメリカンベーキング系のスイーツ。その他、パスタやリゾット、ハンバーグなどのようなカフェ系の料理も取り揃えている。
同店の魅力は、こうしたメニューだけではなく、各分野のクリエーターがコラボレーションしてつくり上げた店舗デザインのクオリティーの高さだ。全体を統括するのは同社の大矢社長だが、クリエーティブ・ディレクションを担当したのはファッション系のデザイン会社であるプレイフォード。店舗デザインには、商業施設デザインのスワンズ・アイ・ディー、中目黒のアンティークショップであるジャンティークらが参加。BGMやユニフォームも、それぞれ個別にクリエーターが担当し、ゲストとしてニューヨークの写真家であるトッド・セルビー氏がイラストを描いて、その作品が店内のデザインやコースターなど消耗品の印刷物に使われている。
同社は、こうした店づくりのスタイルでこれまで、焼肉店、韓国料理店、和食店など、さまざまな業種の店を出店してきた。今後、都心型の商業施設において注目される外食企業のひとつだ。
★けんじの評価
プロデュース型の飲食店が増えている。特に、カフェスタイルのような、店づくりにトータルで高度なセンスが要求される飲食店の場合、単に“商材を決めて、店舗デザイナーに依頼すればそれなりの店が出来上がる”というわけにはいかない。もはや、そんなカフェに目の肥えた女性たちは見向きもしないからだ。
そんな中で、外部のクリエーターを交えた店づくりが増えているのは当然のことだと言える。
今回臨店した「ハンドベイクス」は、数年前から話題の飲食店を次々と立ち上げている会社、サムライの新業態だ。経営者の大矢氏は、もとグローバルダイニングの出身であるという。長谷川耕造氏がつくり上げたこの会社は、バブル期を背景にして東京のナイトスポットのシーンを塗り替えてしまった。しかしグローバルダイニングのほんとうのすごさは、卓越した店づくりよりも人材の発掘と育成能力にあった。現在の飲食業界で活躍する数多くの経営者が、同社の出身者から輩出されているという事実がそれを裏付けている。
東京最大のターミナル駅、新宿の駅ビル「ルミネ2」の物販フロア内に登場した同店は、ファッション系のデザイナーがディレクションしただけあって、レディース系のフロア内に何の違和感もなく収まっている。サムライの店舗はみな、飲食業界専門ではない各分野のクリエーターたちがチームを組んでつくり上げた店ばかりだ。オープニング時には、そうした異業種のメディアが多数取り上げることで、プロモーション効果もさらに高まる。こうしたスタイルも、今後はひとつの流れになるのかも知れない。
(外食ジャーナリスト・鷲見けんじ)
◆鷲見けんじ=外食チェーン黎明期からFFやFRなどの動向を消費者の目線で見続けてきたアンチグルメな庶民派ジャーナリスト。顧客の気持ちを外食企業に伝えるべく甘口辛口を取り混ぜた乱筆乱文でチェーンの新業態をチェック。朝マックとロイヤルホストのカレーフェアをこよなく愛する外食ウォッチャー。
●店舗情報
開業=2013年4月18日/所在地=東京都新宿区新宿3-28-2 ルミネ新宿2 3F