フードコンサルティング 上場企業にモノ申す(36)フレンドリー 経営不振でついにファンド傘下へ
◆10年前の「すかいらーく」状態
大阪府内の64店舗を中心に、関西圏で96店舗を展開するファミレスチェーン「フレンドリー」。創業は1954(昭和29)年8月なので、今年でちょうど60年を迎えた老舗外食チェーンだ。
首都圏に店舗がないこともあり、東証2部上場企業ながら全国的な知名度は低いが、関西圏では昔から地域に根ざした「地元のファミレス」なのだ。
ところが、老舗チェーンかつファミレス業態の宿命ともいうべきなのか、主な利用客であるファミリー層が減り、高齢者の姿が目立つようになっていった。
これはまさに約10年前、苦境に陥り瀬戸際まで追い込まれていたかつての「すかいらーく」グループと同じ姿である。
◆9期連続の赤字決算で白旗
同社の業績を見ていくと2006年3月期から直近の2014年3月期まで9期連続で当期純損失の状態にあり、しかも、2008年3月期からは営業損益の段階から赤字を計上し続けている(7期連続)。このような状態が長く続いては、とても自力での再生は望むべくもない。
実際に、2011年2月以降は取引銀行に借入の返済猶予(いわゆるリスケ)を要請しており、今年3度目の返済猶予を受けるなど資金繰りも厳しいままで、上場企業とは思えない低迷状態が長く続いていた。
◆地域経済活性化支援機構(政府系ファンド)の傘下に
そして今年8月、ついに自力再建を断念し、政府系ファンドの地域活性化支援機構から10億円の出資を受けるリリースが発表された。
長期にわたる業績低迷→自力再建の失敗→ファンド傘下という流れは、まさに「すかいらーく」がたどった道と同じである。唯一の違いは、「すかいらーく」が野村證券系の投資ファンドに買収されたことに対して、同社の場合は政府系ファンドであり、これが意味するのは、民間の金融機関はもはやさじを投げており、事実上、救済先がなかったということである。
同社を救済買収することになった地域活性化支援機構は、JAL(日本航空)の破綻時にスポンサーとなった政府系ファンド、つまり間接的にはわれわれの税金が当社の救済に充てられるわけである。
◆出店なくして成長なし
では、10億円もの資金を使って、どのように再生を目指すのだろうか。今回調達する資金の使い道(資金使途)が同社より発表されている。
この約10億円のうち、「店舗の業態転換」に6億3900万円、「店舗の改装」に3億4400万円、そして「新規出店」に900万円を充てる予定となっている。待てよ? 「新規出店」にはたったの900万円? それでいいのだろうか。たしかに、不振の既存店を新業態に転換すること自体は間違いではない。老朽化した店舗の改装も必要なことは理解できる。それにしても、である。
同社の「失敗の本質」は、長期にわたる競争力の低下を打開できるような、実力のある新業態開発に失敗したこと→赤字店舗の増加、店舗閉鎖→減収、赤字決算→資金繰り悪化→リスケという一連の対症療法ばかりの縮小状態が続いていたことにあるのではないか。
そうであるならば、いくらファンドから外部人材が入社するとはいえ、かつて失敗を重ねた新業態開発にせっかくの貴重な資金の3分の2もつぎ込むことは、果たして適切だろうか。
それよりも、ファミレス復活の流れを取り込むべく、主力業態「フレンドリー」のリブランディングを敢行すべきではないか。
「すかいらーく」の復活だけでなく、一時期低迷していた「ロイヤル」も、リブランディングに近い大胆なテコ入れにより、ここ数年で勢いを取り戻したことを考え合わせると、同社再生の軸足は、不確実性の高い新業態の開発や小手先の改装よりも、「フレンドリー」のリブランディングと新規出店に移すべきなのである。
◆フードコンサルティング=外食、ホテル・旅館、小売業向けにメニュー改善や人材育成、販売促進など現場のお手伝いを手掛けるほか、業界動向調査や経営相談などシンクタンクとしても活動。