惣菜弁当研究所:ローカル名物紀行 しずてつストア「桜海老たっぷり天丼」
◆桜海老をバラバラにしたサクサク天丼 逆転発想で地元に響くネオ定番が誕生 売場が華やぐアッパー天ぷら
桜海老入りの「かき揚げ」はごく普通。桜海老の含有量は1割ほど、価格は100円程度だろう。ところが、桜海老の本場・駿河湾を有する静岡県中部では、桜海老100%かつ300円が相場。桜海老の価値を知る地元民は、たとえ高価であっても地産100%を選ぶのである。そんな「桜海老愛」を象徴する新名物が「しずてつストア」(静岡県内34店舗)の「桜海老たっぷり天丼」だ。
●発祥と普及:ロス問題を逆手に開発 開き直って天丼に
かねて「桜海老かき揚げ」を販売してきたが、桜海老100%だと揚げ方が難しく、まとまらずにバラけてしまうこともあり、それらはロスになるか、弁当の飾りなどに使われていた。そこで「どうせなら全部バラして天丼にしよう」と思い立ち、2017年に桜海老1尾1尾をバラバラにした「桜海老たっぷり天丼」を売り出した。
●調理概要:手早く余熱で火を入れる 生食用の上質を厳選
桜海老に天ぷら粉をまぶし、天ぷら衣を付け、1尾1尾がバラバラになるよう油槽(キャノーラ油・約170℃)に投じ、約30秒揚げる。生食用の上質な桜海老を使っているため、余熱で火が入るよう、短時間で揚げるのがコツだ。桜海老は1食・約60g(白飯220g)、ミニは約30g(同150g)。
●販売概況:丼部門で最優秀賞受賞 不漁でミニ丼に注力
発売後「お弁当・お総菜大賞2018」に出品。丼部門・約5000品の応募商品の中で最優秀賞を獲得した。その効果もあって大ヒット。ピーク時は日販100食以上も珍しくないほど売れた。昨今は桜海老の水揚げが少なく原価高騰のため、赤字スレスレで販売数を限定。日販10~20食程度にとどめている。代替策として、普通サイズを減らしてミニ丼を増やしており、ミニ丼の日販は20~30食程度。
●ポイント:駿河湾由比産に敬意 高価でも本物は買う
スーパーの天丼で680円。しかも具材は桜海老だけ。地元以外の人が見たら不思議に思うだろう。だが、静岡の人は違う。駿河湾由比産であれば、豪華で「お買い得」と感じる。同じ桜海老でもオレンジっぽい外国産だとスルーされる。静岡の人は、真っピンクの駿河湾由比産でなければ、桜海老と認めないらしい。食材に恵まれ、食材の価値を知る静岡の人は「高価でも本物は買う」。ただし、その文化は富士川と安倍川に挟まれた静岡県中部に限られるとか。
●「桜海老たっぷり天丼」
販売実積:日販・10~20食
ミニ・20~30食
●店舗概要
しずてつストア 経営:(株)静鉄ストア 所在地:本社・静岡市葵区末広町95