スパイスカレーの美学 美しさとおいしさが共存!店の個性が百花繚乱

2019.07.01 485号 08面
麻布十番薬膳カレー「2種の合いがけ薬膳カレー(普通盛り)」

麻布十番薬膳カレー「2種の合いがけ薬膳カレー(普通盛り)」

CURRY BAR シューベル「プレーンカリー3種盛り」

CURRY BAR シューベル「プレーンカリー3種盛り」

スパイスカレー 青藍「スパイシーチキンカレー定食」

スパイスカレー 青藍「スパイシーチキンカレー定食」

三日月カリィ SAMURAI. 下北沢店「スパイシーチキンカリィ」

三日月カリィ SAMURAI. 下北沢店「スパイシーチキンカリィ」

ポンガラカレー 赤坂アークヒルズ店「スリランカプレート」

ポンガラカレー 赤坂アークヒルズ店「スリランカプレート」

旧ヤム邸 シモキタ荘「ぜんかけカレー」

旧ヤム邸 シモキタ荘「ぜんかけカレー」

 大阪で人気に火が付き、東京でもブームを巻き起こしている「スパイスカレー」。しかし、スパイスカレーとは、何か。そもそもカレー自体、各種スパイスを使う料理であり、その語義通りに捉えると、何をもってスパイスカレーというのか、イメージがしづらいかもしれない。実際、スパイスカレーがどんなものを指すか、きちんとした定義づけはまだされていないのが実情だろう。

 それでも今回、名店と評される複数のスパイスカレー店への取材を試みた中、共通項として見えてきたのが、「店独自のスパイス配合」と「ニッポンのカレーを感じさせるうま味」、そして「オリジナリティーある盛り付け」だ。また、「小麦粉フリー」の特徴を掲げる店も多かった。そう、スパイスカレーとは、いうなれば「店の個性と美学を前面に打ち出したカレー」なのだ。今号は、「スパイスカレー」とその美学に迫った。

     *

 ◆薬効が期待できる健康スパイスカレー

 2種の合いがけ薬膳カレー(普通盛り) 1,300円(税抜き)

 「胃腸を整えるカレー」を追求し、油脂は極力使わず、小麦粉不使用、17種類以上のハーブとスパイスを配合。砂糖は加えず、玉ネギ、トマト、ショウガ、ニンニクを炒めてうま味と甘味を付け、昆布、チキン、ナツメ、クコの実、ショウガなどを煮込んだ薬膳スープをベースにした4種類のカレーを提供している。ハーブとスパイスの薬効を前面に打ち出しているが、味わいは“薬膳”の持つ薬のイメージからほど遠く、スパイス感が強いやみつき系だ。

 ◎店舗情報

 「麻布十番薬膳カレー」(夜は「Dining BAR Hidden Lounge」)

 所在地=東京都港区東麻布3-8-9 東麻布ビル地下1階/創業=2016年3月/営業時間=11時30分~14時30分、18時~翌1時、金土11時30分~14時30分、18時~翌4時/席数=18席/1日の販売食数=50~60食(カレーメニュー全体)内「2種の合いがけ薬膳カレー」は20~30食

 ◆美的センス必須のトライアングル盛り

 プレーンカリー3種盛り 1,200円(税込み)

 深夜までカレーが楽しめる「ドリンクとつまみが楽しめるカレーBAR」。飲みに来店するお客も、9割以上がカレーを注文するという。店でスパイスを配合し、地鶏とソテーした玉ネギを使った欧風の「チキンカリー」、鶏ひき肉を使いスパイスを利かせた「キーマカリー」、甘エビの頭でだしをとった香ばしさが魅力の「海老カリー」の3種類のカレーを提供。盛り付けが印象的だが、店主いわく「2本のしゃもじを使い、正三角形に仕上げている。意外とセンスが必要なんですよ」。

 ◎店舗情報

 「CURRY BAR シューベル」 所在地=東京都杉並区西荻南1-23-11 日興パレス西荻窪PARTII 1階/創業=2014年3月/営業時間=19時~翌2時、土18時~翌2時、日祝12時~16時、18時~22時/席数=10席/1日の販売食数=「プレーンカリー3種盛り」は10~15食

 ◆注文後にスパイスを炒ってブレンド

 スパイシーチキンカレー定食 900円(税込み)

 同店では、注文を受けてからホール状のスパイスを炒り、カレーに加えて提供。「スパイスは直前で炒った方が、よい香りが立ちますから。香りを食べるカレーライス、というのがうちのカレーのコンセプト」と、梶田店長。ベースのカレーは、玉ネギ、緑黄色野菜、鶏がら、鰹節、昆布だしを合わせ、花椒で麻辣味を加えている。華やかな盛り付けは、「各種の野菜料理をたっぷりとワンプレートで盛り付けたら、意図せず見栄えのする一皿になった」と、梶田店長は話す。

 ◎店舗情報

 「スパイスカレー 青藍」

 所在地=東京都杉並区高円寺北2-41-15/創業=2017年11月/営業時間=11時30分~14時、18時~20時/席数=13席/1日の販売食数=90~100食(カレーメニュー全体)

 ◆三日月に盛り付けた“映えるカレー”

 スパイシーチキンカリィ 1,100円(税込み)

 北海道のスープカレー店「Rojiura Curry SAMURAI」の姉妹店で、「野菜を食べるルウカレー」を提供。鶏がらと香味野菜のスープをベースに、クミンの香りを中心に自家焙煎したスパイスをブレンドした。スパイスの香りが個性的だが、味わいはまろやか。素揚げ野菜と福神漬けの役割を果たす各種副菜の彩りがよい。「野菜がたっぷり取れて、映えるカレーにしたかった」と、出川店長。赤・緑・黄色と色バランスよく副菜を付け合わせ、店名にちなんで三日月形に盛り付けている。

 ◎店舗情報

 「三日月カリィ SAMURAI. 下北沢店」 所在地=東京都世田谷区北沢3-34-2/創業=2017年12月/営業時間=11時30分~15時30分、17時30分~22時30分/席数=17席/1日の販売食数=「スパイシーチキンカリィ」は30~40食

 ◆スリランカの日常食をイメージ

 スリランカプレート 1,100円(税込み)

 スパイスカレーブームは、もとは「スリランカカレー」がルーツといわれている。同店のカレーは、スリランカカレーを日本人向きにアレンジ。ココナツミルクを使用したまろやかなタイプから、スパイスの利いたタイプまで、味が異なる13種類のカレーをすべて手作りで提供している。「スリランカカレーでハズせないのは、レンズ豆のカレーですね」と奥原店長。各種副菜がワンプレートで盛られており、「途中から混ぜて食べると、複雑なおいしさが楽しめます」(奥原店長)。

 ◎店舗情報

 「ポンガラカレー 赤坂アークヒルズ店」 所在地=東京都港区赤坂1-12-32 アーク森ビル3階/創業=2018年9月/営業時間=11時~23時、土日祝11時~22時/席数=27席

 ◆具材にタブーなしの自由な創作キーマ

 ぜんかけカレー 1,350円(税込み)

 カルダモンの香りを利かせ、ブラックペッパーとカスリメティをパラリとかけて仕上げた3種類のキーマカレーを用意している。メニューは月替わりで変えており、「うちのカレーは何でもありの自由なカレー。使う具材にもタブーはない」と、調理スタッフの西嶋氏は言う。取材当日のメニューを見ても、鶏軟骨やイカ、タケノコ、揚げナスを使ったり、煮干し、トマトで味をアレンジするなど、ユニークだ。キーマカレーを味わった後は、鶏がらベースに和風だしを加え、スパイスを利かせた「ヤムカレースープ」をかけ、スープカレーに味変して、楽しめる。

 ◎店舗情報

 「旧ヤム邸 シモキタ荘」 所在地=東京都世田谷区代沢5-29-9 ナイスビル1階/創業=2017年7月/営業時間=11時30分~15時、18時~22 時、土日祝11時30分~15時30分、17時30分~22時/席数=14席

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