海外通信 外食ビジネスの新発想(25)新時代の代替肉バーガー 植物性が人気

2020.01.06 491号 11面
バーガーキングのインポッシブル・ホッパー

バーガーキングのインポッシブル・ホッパー

ウマミ・バーガーのインポッシブル・バーガー。パティはダブル

ウマミ・バーガーのインポッシブル・バーガー。パティはダブル

デニーズのビヨンド・バーガー

デニーズのビヨンド・バーガー

マクドナルドも、ビヨンド・ミートを使ったPLT(プラント・レタス・トマト)バーガーを一部で試験販売している

マクドナルドも、ビヨンド・ミートを使ったPLT(プラント・レタス・トマト)バーガーを一部で試験販売している

TGIフライデーズもビヨンド・バーガーを導入

TGIフライデーズもビヨンド・バーガーを導入

植物ベースの代替肉でも、普通の肉のように焼き色が付く

植物ベースの代替肉でも、普通の肉のように焼き色が付く

スーパーでもインポッシブル・ミートは購入できる

スーパーでもインポッシブル・ミートは購入できる

ビヨンド・ミートも、スーパーで買える

ビヨンド・ミートも、スーパーで買える

 ●変貌するアメリカのハンバーガー事情

 アメリカの国民食、ハンバーガー。アメリカ人は、年間500億個のバーガーを食べている。週に3個のバーガーを食べている計算になる。これは乳児やベジタリアンも入れての計算なので、実際にはもっと多い。そのアメリカのバーガー市場に大きな変化が起きている。

 アメリカの人口の5%から8%がベジタリアンだと推測されている。つまり推定百数十万~二百数十万人のベジタリアンがいるということだ。かねてから、ベジタリアン用には、植物性のものをパティとして使ったベジーバーガーが存在した。ただし、べジーバーガーは、バンにパティを挟むというバーガーの形状はしていても、味は別物で、店によって千差万別。べジーバーガーは、とにかくパティの材料が植物性であればいいことから、豆類やナッツ、コメ、サツマイモ、コーンなどを使った、オリジナリティーに富んだメニューが揃っている。

 が、ここで登場したのが、植物ベースの代替肉を使った肉なしバーガー。ベジーバーガーと異なり、こちらは、見た目も味も食感も、そして、焼くと赤みが茶色く変色するという調理具合も、とにかく肉そのものだ。バーガー市場を駆け抜けている代替肉の現在の双璧が、「インポッシブル・バーガー」と「ビヨンド・バーガー」だ。

 インポッシブル・フーズの経営陣は、トップの大学で博士号を取得した頭脳集団。タンパク質を大豆やジャガイモ、霜降り部分をココナツ油とヒマワリ油で作った代替肉に、大豆の根からDNAを取り出し、遺伝子組み換えをしたイーストに植え付けて培養させたものを混ぜている。

 一方、ビヨンド・ミートの方は、タンパク質としてグリーンピース、緑豆、ソラマメ、玄米、ヒマワリの種、霜降り部分としてココナツ油とココアバターで作った代替肉に、肉の色を付けるためのビーツ、焼くと茶色く焼き色が付くリンゴのエキスを加えて作っている。こちらは遺伝子組み換えなし。

 ついに、ラボで作る代替肉が市場に出回り始めたのだ。すでに全米各地の個別のレストランが採用しているが、さすがにこの流れに逆えず、「デニーズ」「TGIフライデーズ」「バーガーキング」「マクドナルド」など、チェーン店までが導入し始めた。

 実は、蓋を開けてみると、代替肉のバーガーを食べている人は、ベジタリアンやビーガンではなかった。ある調査によると、代替肉バーガーの購入者の95%が、肉も食べるが、植物性のメニューも選択する弾力的な食者だった。

 アメリカ人の肉離れは続き、牛肉消費量は、1976年の1人当たり42.8kgをピークに、80年代、90年代を通して減り続け、2018年には25.9kgまで落ち、実にピーク時の4割減となっている。アメリカの消費者は全般的に以前に比べて、肉をより少なく、野菜をより多く食べている。

 10年前に「ゼン・バーガー」という店ができたが、この店でも、大豆でできた肉そっくりの代替肉を使ったバーガーを提供していた。だが、時期がまだ熟しておらず、いつの間にか消滅してしまった。それから10年の間に、一般の人も植物ベースを好んで選択する時代になり、意識の変化はアメリカの国民食にまで及んでいる。肉離れが続くアメリカでは、これからも代替肉が広まっていくことだろう。大手の食品メーカーも開発中とのことだ。

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