クローズアップ現在:居酒屋各社が利益確保に向けて奮闘中 「脱アル」「ファミリー対応」…

2021.08.02 510号 06面
エー・ピーホールディングスがクラウドキッチンに参入。「お客さまに料理を自社便で届ける」ビジネスを展開

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サントリーホールディングスの完全子会社となったダイナックHDでは、「オフィス街宴会」を脱した居酒屋「酒場ダルマ」を開発した

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DDホールディングスはランチ限定ブランドの「ステーキ五郎」を展開

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 居酒屋系の外食企業はコロナ禍で業績を大きく落としていて、店舗従業員の一時帰休、人件費水準の切り下げなどによる人件費削減、家賃の減免交渉、新規投資の圧縮、不採算店舗の退店や業態変換に積極的に取り組み、利益確保に努めている。そして、抜本的な収益構造の改善のために大きく動き出している。その多くがこれまでの事業にはない「脱アルコール」「ファミリー対応」「小売業へ参入」となっているが、その顕著な事例を紹介しよう。

 ワタミは不採算店舗159店舗を撤退。国内外食2工場の資産譲渡、賃料減額交渉や経費削減などにより約100億円の固定費削減を実施。昨年5月に1号店をオープンした食べ放題の焼肉店「かみむら牧場」が好調だ。このノウハウを基に居酒屋業態を焼肉業態に転換した「焼肉の和民」の展開を開始し、7月2日に25店舗目をオープン。FCモデルによるテイクアウト・デリバリー主体の「から揚げの天才」の出店を強化。日本最速100店舗を達成(1号店のオープンから2年7ヵ月)、7月2日現在で107店舗となっている。また、韓国に本部がある「bb.qオリーブチキンカフェ」を展開、7月16日に10店舗目をオープンした。渡邉美樹会長は「から揚げの天才は500万円(月商、以下同)、焼肉の和民は1500万円、かみむら牧場は2500万円が目安」と語っており、日本政策金融公庫から118億9800万円を調達し、出店などの投資に充てる。

 エー・ピーホールディングス(2020年10月エー・ピーカンパニーから商号変更)では、生産者の産品を消費者に届ける事業でパートナーとなっていたオイシックス・ラ・大地と資本業務提携し、この事業分野を推進していく。新規事業では、まず「キッチンクラウド」でクラウドキッチンを開始。地域に根差した定期会員制(サブスクモデル)を導入した。次に「つかだ食堂」でAPグループの食材を使用した昼飲みも夜の食事もできる大衆食堂を展開。さらに「すし屋つかだ」でAPならではの今朝獲れ鮮魚を使用した、一人客からファミリーにも対応できる低価格高品質寿司店を、そして「地どり屋つかだ」で「塚田農場」の新型店舗をそれぞれ展開。全体的には「外食から中食へ」「居酒屋から専門店へ」シフトして事業ポートフォリオの転換を推進する。

 三光マーケティングフーズでは20年12月、沼津我入漁業組合に加入。この産品を既存直営店舗で使用するだけでなく、他の外食事業者または小売事業者に法人営業を行なう。中間マージンを最小化した価格競争力と飲食事業で蓄積した食材調達力を掛け合わせて、沼津の鮮魚や加工品などをブランディングしていく。

 串カツ田中ホールディングスでは20年7月に外食チェーンでは初めての試みとなるネーミングライツ(施設の名前を付与する命名権と付帯する諸権利)を執行。タレントの宮迫博之氏が2000万円で購入し、270店舗を1カ月間「串カツ宮迫」として営業した。これ以降この試みは随時執行している。また、串カツの冷凍品を小売店やECで販売し、家電製品をセットにした「おうちで串カツ卓上フライヤーセット+串カツ50本セット」(1万2980円・税込)が7月1日の発売当日で100セットを完売、8月中旬再入荷としている。

 鳥貴族ホールディングスではチキンバーガーチェーンに参入、この8月に「トリキバーガー」の1号店を東京・大井町に出店。「鳥貴族」同様に国産の食材にこだわり、1000店舗構想を描いている。

 (フードフォーラム代表 千葉哲幸)

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