2023年9月度、外食動向調査 フードコンサルティング

2023.12.04 538号 05面

 ●前年比増収は22ヵ月連続に

 日本フードサービス協会が発表した外食産業市場動向調査によると、2023年9月度売上げは、前年同月比115%となり、22ヵ月連続の増加を記録。客数は前年同月比7.5%増、客単価も7.0%増と、いずれも絶好調であった。

 9月も厳しい残暑が続いており、家庭で火を使う調理を敬遠する流れもあり、前月に続いてファミリー層の利用が増えたことによる客数増に加え、酷暑の影響から野菜類の高騰を反映した値上げも続いたことが客単価アップにつながり、2桁増収につながった。13ヵ月平均推移を見ても、惜しくも微減となった「がんこ炎」(99.3%)以外は、すべて100%を超える状態となった。

 ●続く倒産、大型~小型まで規模問わず

 5月に、いわゆる第5類に移行したことでコロナが明けたと喜んだのもつかの間、飲食店の倒産が規模の大小を問わず増加している。今回は、大型倒産にフォーカスを当てたい。

 いわゆる「パクり業態」により、外食チェーン大手の鳥貴族や物語コーポレーションから訴訟を受けたこともある(株)ダイナミクスが2月、東京地裁に破産申請し破産開始決定を受けた。

 ダイナミクスは、もともと京都府内をはじめ関西地区を中心に、お好み焼き「いっきゅうさん」、焼き鳥「鳥二郎」、日本酒居酒屋「きさらぎ」など、多角的なブランド飲食店を展開していたことに加え、「赤から」など有名外食チェーンのFC店舗も運営。17年6月には、投資ファンド大手のユニゾンキャピタルが買収したことで出店が勢い付き、19年5月期には、全国100店舗以上に拡大、売上高は77億円と拡大していた。

 しかし、新型コロナウイルスの影響で業績悪化。20年5月期以降は大幅な減収と債務超過に転落し、経営の立て直しに取り組んでいたが、直近の22年5月期は売上高15億円にまで落ち込み再建を断念した。負債総額は約110億円となり、コロナの影響を受けた倒産では、最大規模となった。

 続く3月には、宅配ピザチェーンの(株)シカゴピザ(大阪府茨木市)が、大阪地裁に破産を申請し、保全管理命令を受けた。負債総額は約15億円。

 7月になると、こちらも投資ファンドの投資先だった(株)OUNH(旧・(株)TBIホールディングス、新宿区)と関連会社6社が東京地裁に破産を申請、その負債総額は約92億円。

 旧TBI社は、先日上場した大手投資ファンドのインテグラルから出資を受け、主に若者向けのカジュアルダイニングやダーツバーを中心に幅広く展開。インテグラルの幹部も取締役として経営支援を行っており、17年には個室居酒屋を展開するホリイフードサービス(株)(東証STD、茨城県水戸市)の発行済み株式の52.5%を取得して子会社化するなど、コロナ前は破竹の勢いで成長を続けていたかのように見えていた。

 ところが、コロナ禍をきっかけとして業績が急速に悪化。直近のピークとなる17年3月期には、売上高193億円を計上していたが、新型コロナウイルス感染拡大により20年3月以降、業績が急激に悪化。21年3月期は売上高39億円まで急減し、31億円の赤字となり債務超過に転落した。

 今回は、業界的な知名度も高い大型倒産3社を取り上げたが、実は3社いずれもコロナ前から、徐々に経営が厳しくなっていた共通項もあった。

 投資ファンドの投資先2社は、ファンドの資金力を得たことで出店優先の経営となり、不採算店舗の整理や、集客力の弱くなった業態のテコ入れが後回しとなっていたところに、コロナが直撃して立て直しの機会を逸してしまった。

 また、シカゴピザは創業がバブル初期の1986年で宅配ピザ業界の老舗チェーンだったが、コロナ前から同業者や他の宅配チェーンとの競争が厳しくなっており、こちらも不採算店舗の整理が後手に回っている間にコロナ禍に巻き込まれてしまった。

 コロナという想定外の危機が引き金となったものの、バランスを欠いた経営が命取りになった原因ではなかろうか。結局のところ、平素より攻めと守りのバランスは大事なのである。

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