シンポ海外事業部発信、アジア焼肉最新事情 広がる日式焼肉 -YAKINIKU-の魅力

2023.07.03 533号 08面
無煙ロースターの換気能力が広く認知されたことでコロナ禍においても他の外食業態よりも落ち込みが少なく、また回復も早かった。皆で卓を囲み、食を楽しめる焼肉は「世界のスペシャルディナー」として有望な業態だ

無煙ロースターの換気能力が広く認知されたことでコロナ禍においても他の外食業態よりも落ち込みが少なく、また回復も早かった。皆で卓を囲み、食を楽しめる焼肉は「世界のスペシャルディナー」として有望な業態だ

コロナ禍の規制がなくなり、飲食店街は活気を取り戻している

コロナ禍の規制がなくなり、飲食店街は活気を取り戻している

香港では他業態からの焼肉参入が増えている。多いのが食べ放題業態だ。写真は「YAKINIKU Guu」店頭

香港では他業態からの焼肉参入が増えている。多いのが食べ放題業態だ。写真は「YAKINIKU Guu」店頭

1年足らずでお一人様焼肉を8店舗展開する「焼肉RUD」

1年足らずでお一人様焼肉を8店舗展開する「焼肉RUD」

2021年の日本国産牛肉輸出実績は、輸出額・輸出量ともに過去最高を記録。1位のカンボジアは同国経由で中国に輸出されているためだ。和牛など日本国産牛肉はアジア・北米での人気が高い。

2021年の日本国産牛肉輸出実績は、輸出額・輸出量ともに過去最高を記録。1位のカンボジアは同国経由で中国に輸出されているためだ。和牛など日本国産牛肉はアジア・北米での人気が高い。

(左)=修業店が卓上コンロであったこと、スタッフの目が行き届きやすいことから上引き+卓上コンロのスタイル/(右)=日式にこだわり部位を細かく提供。肉札の部位名も日本語

(左)=修業店が卓上コンロであったこと、スタッフの目が行き届きやすいことから上引き+卓上コンロのスタイル/(右)=日式にこだわり部位を細かく提供。肉札の部位名も日本語

(左)=高級コースの一品「すき焼き風ロース」。トリュフ付きだ/(右)=「老井焼肉 竹北店」外観。初のロードサイド店なので目立つ外観を意識

(左)=高級コースの一品「すき焼き風ロース」。トリュフ付きだ/(右)=「老井焼肉 竹北店」外観。初のロードサイド店なので目立つ外観を意識

(左)=木材を生かして温かみを演出した外観/(右)=卓を区切る塀を低く設計し、広々とした空間を演出

(左)=木材を生かして温かみを演出した外観/(右)=卓を区切る塀を低く設計し、広々とした空間を演出

(左)=左上の黒板にはこだわりの食材を提供するサプライヤーを紹介。「ぎょれん」は北海道漁連。北海道産魚介類も提供/(右)=メニュー(フォアグラ乗せ焦がしオニオン和牛ハンバーグ)をライトアップしているわけではなく、目の前でガスバーナーで炙って提供

(左)=左上の黒板にはこだわりの食材を提供するサプライヤーを紹介。「ぎょれん」は北海道漁連。北海道産魚介類も提供/(右)=メニュー(フォアグラ乗せ焦がしオニオン和牛ハンバーグ)をライトアップしているわけではなく、目の前でガスバーナーで炙って提供

(左)=鐘店主(右から2人目)とスタッフの皆さん/(右)=メニューは単品が主体

(左)=鐘店主(右から2人目)とスタッフの皆さん/(右)=メニューは単品が主体

 ◆コロナ禍脱し、人気急加速

 2020年1月から始まったコロナ禍は世界的な経済停滞をもたらし、社会やライフスタイルのありようを大きく変えてしまった。コロナ禍の中、日本国内の焼肉店は無煙ロースターにより常に店内換気がされた食事環境を備えていると注目され、他の飲食業態が参入した事例も多い。22年度の客数も前年同月比で平均100%以上と好調だ。では、コロナ禍を経た海外の焼肉店の状況はどうだろうか?現地取材とシンポ無煙ロースター海外輸出台数などから考察してみた。

 ●台湾の日式焼肉の未来明るい 月2万人来客、週末7回転の繁盛店も

 今回、現地取材先として台湾、中でも近年特に焼肉店が林立している激戦区「台中市」を選んだ。取材先の企業規模はさまざまで、特に規模が大きい企業は焼肉業態を含めて鍋料理、寿司など7ブランド、計14店舗運営している。中規模として焼肉店3~5店舗と別ブランド飲食店を運営、小規模は焼肉店1~2店舗とバランスよく選定した。コロナ禍が始まった20年1月から台湾は国民すべてにマスクが行き渡るようマスク供給制限などコロナ対策をいち早く始めた一方、20年~21年の2年間は特に店内飲食禁止という厳しい行動制限はなかった。

 しかし、22年5月から約3ヵ月間、店内飲食の全面禁止措置が施行された結果、売上げは少なくとも50%以上を失った。コロナ対策が緩和された後の客足の戻りはどうだろうか? 大好きな外食への我慢を強いられた反動からか、今回取材した5店舗共にコロナ禍以前の売上げには早い段階で戻り、中には売上げが毎月平均30%以上の成長を遂げている店もあった。コロナ禍中にオープンした店舗では、毎日約600人、月約2万人が来店、2時間の時間制限を設け、週末は7回転という大繁盛店になっている。同じくコロナ禍中にオープンした44席の小規模な焼肉店では、2週間以内の週末はすべて満席、3週間前に予約しても希望通りの座席が取れないというほどの大人気だ。これでもまだ予約が取れやすいほうで、中には1、2ヵ月前に予約を取らないと、1ヵ月以内はすべて満席という繁盛店もある。

 これほど繁盛している理由は、コロナ規制が緩和されたことによる解放感や、待ちに待った海外旅行という消費力が大きくなり、その消費力が国内にも向けられたことである。その消費力が飲食業に向けられ、コロナ規制で会えなかった友人や親戚とみんなで賑やかな食事に最適な焼肉、それも日式焼肉が必然的に選ばれるのも納得いくだろう。取材先のスタッフへ飲食業として日式焼肉を選択した理由としてよく聞くのは、他の飲食業と違い、接客中にお客さまと交流する機会が多く、みんなでお肉を焼くあの楽しい雰囲気が好きだから、日式焼肉を選んだという。このコロナ禍後の繁盛は今年中続くだろうとどの取材先も口を揃えて話す。台湾の日式焼肉の未来は明るい。

 ●香港、他業態からの参入急増 無煙ロースター輸出件数 コロナ前比15%増

 他のアジア地域の中でコロナ禍でも焼肉店のオープンが相次いだ地域がある。それは香港だ。シンポのコロナ禍以降のロースター輸出件数はコロナ禍前の19年比較で約15%の増加だ。コロナ禍でも出店が止まらない理由は何か? 去年9月、香港現地にて飲食店オーナーによると、「香港でも飲食業に対して厳しい営業制限措置があり、撤退した飲食店も多くあった。しかし、それに伴う家賃の下落に目を付けた体力のある企業が空いたスペースにこぞって進出した」という。傾向として、焼肉業態(主に食べ放題式)へ新規参入した飲食企業が多い。それも、1年で2店舗以上をオープンしている企業が多数ある。その中で最も出店ペースが速いのは「焼肉RUD」だ。焼肉業態新規参入にも関わらず、お一人様焼肉スタイルの焼肉店を1年足らずで8店舗と驚異的な速さでオープンしている。

 最後に日本の牛肉輸出からアジアの焼肉市場を考察してみたい。21年の日本の牛肉輸出額は537億円(前年比86%増)と過去最高を記録している。 日本国内の焼肉店が海外進出する事例も少しずつであるが、増えている。もちろん、中国・上海「老乾杯」や台湾・台中「俺達の肉屋」のようなミシュラン一つ星を獲得したレベルの高い焼肉店もあるが、日本から進出した焼肉店が現地で店舗を構えて和牛を提供することで、日本へ行かずとも同じ味とサービスが楽しめるのである。また、それに触発されてかマレーシアで現地の人が日式焼肉店をオープンした事例もある。肉食は国の経済発展が向上するにつれて、消費量も増えていくといわれており、東南アジアの経済発展成長率は5%以上と高い数値が予測されている。

 消費力が上がれば、そこに日本の高級食材「和牛」をおいしく提供する焼肉店が受け入れられるのは必然である。どの業界でも先駆者が流行の起点になりやすく、業界をリードできる。日本の誇れる焼肉は世界のスペシャルディナー「YAKINIKU」として、アジア圏で急速に定着しつつあり、これからますます発展が期待される業態だ。

 ◇台湾繁盛店紹介 他業態からの参入続々

 台湾は日本人に親しみがある地域であり、インフラが整備され、なおかつ外食文化が盛んなことから日本の外食企業がアジア展開する上での重要拠点として位置付けられている。焼肉も2015年前後から急速に店舗拡大しており、他業態からの進出も増加している。台湾で話題の繁盛店5店を紹介する(客単価は、1ニュー台湾ドル/元=4.3円換算、2023年4月時点)。

 ◆「俺達の肉屋(おれたちのにくや)」

 2年連続ミシュラン一つ星獲得 和牛メインの高級店

 台北、新竹にある日式焼肉店で修業したオーナー兼総料理長のサムさんは、まだ台中では馴染みがない上引きフード+卓上コンロのスタイルを貫き通し、2020年にミシュラン台中エリアの焼肉店で初のミシュラン一つ星を獲得(2021、2022年共に獲得)。日本の各産地から厳選された和牛を、店員がフルサービスで焼いてくれる。同店は和牛メインの高級路線、徒歩5分の所にある2号店「焼肉本気」は米国・豪州牛メインと価格帯が異なるコンセプトで展開している。

 ●店舗情報

 「俺達の肉屋」

 9卓(36席)/客単価:3,500元(日本円:1万5050円)/住所:台湾台中市西區公益路194-1號/営業時間:17:00~23:30

 ◆「老井焼肉 竹北店(ろういやきにく たけきたてん)」

 統一メニューで幅広い客層に対応 初のロードサイド出店

 台中2店舗、竹北1店舗を展開。3店舗ともに連日満席だ。竹北店(3号店)は初のロードサイド店。近くに半導体産業などサイエンスパークがあり、収入の高い客層が多いため、高価格帯のコースメニューが飛ぶように売れていく。出店地が違えば、客層も異なるが、3店舗共に統一メニュー・統一単価で提供しており、アッパー層からミドル層まで幅広い客層に受け入れられている人気急上昇の繁盛店だ。

 ●店舗情報

 「老井焼肉 竹北店」

 26卓(154席)/客単価:1,300元(日本円:5,590円)/住所:台湾新竹縣竹北市文興路一段31號/営業時間:11:00~24:00

 ◆「茶六焼肉堂 公益店(ちゃろくやきにくどう こうえきてん)」

 鍋ブランド名店が焼肉に進出 多業態ドミナント展開でシナジー発揮

 鍋料理ブランド「軽井沢」で有名な「軽井沢グループ」が展開する焼肉ブランド。1号店から大型店をオープンし、最新の5号店は356席と最大規模だ。本業の鍋料理「軽井沢」は5店舗、他ブランドの鍋料理店6店舗、麺料理店2店舗、寿司店1店舗と多数の飲食店を運営している。特に台中グルメ激戦区「公益路」には5店舗を出店しており、シナジー効果を発揮。軽井沢ストリートと呼ばれることもある。

 ●店舗情報

 「茶六焼肉堂 公益店」

 51卓(288席)/客単価:1,300元(日本円:5,850円)/住所:台湾台中市西區公益路268號/営業時間:11:00~翌2:00

 ◆「風間焼肉 公益店(かざまやきにく こうえきてん)」

 激戦区で地元に愛される名店 一線画すメニュー・演出

 台中グルメ激戦区「公益路」で2015年にオープン以降、長く愛されている日式焼肉店だ。バタービールを提供して話題を呼ぶなど他の焼肉店とは一線を画すコースメニューや提供の演出が人気だ。2021年になって老虎城ショッピングモールへ待望の2号店を出店した。他に2ブランド3業態を展開している。

 ●店舗情報

 「風間焼肉 公益店」

 29卓(146席)/客単価:1,600元(日本円:6,880円)/住所:台湾台中市南屯區公益路二段171-1號/営業時間:11:30~16:00(毎週火曜日ランチ休),17:30~24:00

 ◆「叙禾焼肉(じょいねやきにく)」

 映える盛り合わせが人気 単品メニューを拡充

 高校卒業後、焼肉店で10年以上働き、独立した鐘店主のこだわりが詰まっている。飲食店が多い台中市美術館エリアに店舗を構え、外装が目立つ店が多い中で、グレーの落ち着いた壁がかえって人目を引く、個性ある外装になっている。台中の焼肉店はほとんどがコースメニュー中心だが、叙禾焼肉はすべて単品構成。SNSでの映えを意識した盛り合わせが人気だ。もちろん味の評判も上々で、毎週末は予約で満席。

 ●店舗情報

 「叙禾焼肉」

 10卓(60席)/客単価:1,500元(日本円:6,450円)/住所:台湾台中市西區五權西三街111號/営業時間:11:30~22:00

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