メニュートレンド:賞味期限30分の「生キムチ」
キムチをサラダ風にアレンジした「生キムチ」のメニュー化が増えている。キムチと名乗っているが、正しくは韓国料理の浅漬けや和え物に分類される「コッチョリ」の場合が多い。つまり生キムチは新たな料理ではなく、伝統的な韓国料理のリメーク版。歴史や根拠があるだけに、また、鮮度に敏感な日本人に響くネーミングでもあり、焼肉との相性やポテンシャルは抜群といえよう。いち早くメニュー化に乗り出している「焼肉レストラン 一心亭」の事例を紹介する。
●コッチョリ(浅漬け)を焼肉向けにアレンジ! ネーミングで成功を直感
青森県を拠点に10店舗を展開する「焼肉レストラン 一心亭」の小野敦司社長は、噂で聞いた「生キムチ」のネーミングに直感し、生キムチのメニュー化を即決。2021年6月に発売以降、昨年のお試しキャンペーンでは全店月販3000食を突破する人気ぶりを見せた。
「早い話、韓国浅漬けのコッチョリなのですが、生キムチという語呂のよさが耳に響き、すぐに成功を予感。噂の生キムチを視察する前に情報収集と試食を重ね独自メニューを完成させました」(小野社長)。
作り方は白菜の芯を切って生キムチ専用タレに絡めるだけ。シャキシャキとした新鮮な食感を訴求するため、メニュー案内には「賞味期限30分」と記している。また、作りたてのおいしさを手軽に味わえるよう、白菜と専用タレを別々にパック詰めしたセルフ調理のテイクアウト販売も行っている。
一方、最も苦労したのは専用タレの粘度だ。白菜の芯にタレが染み込みにくいので、バランスよく絡ませる粘度の調整が難しかったという。しかし、そのかいあって専用タレの汎用性が飛躍的に向上。現在は「ヤンニョムダレ」と名づけて広く使われている。
小野社長は「ヤンニョムダレは、口当たりが甘く、ごま油の風味が軽く立ち、後から辛味が出てきます。とりわけ合うのが鶏唐揚げ。絡めてヤンニョムチキンとして提供しています」と明かし、さらに「生キムチで残ったタレは『焼肉のつけダレの味変としてもご活用ください』とおすすめしています」と胸を張る。
キムチは焼肉のおいしさアップに欠かせない副菜だが、日本では昔から「発酵の酸味が苦手」という声もあり、本場のキムチより発酵を抑えたタイプも出回ってきた。また、日本は海産物が豊かなため素材の鮮度に敏感。新鮮を意味する「生」という表現を好む。生ビール、生チョコ、生ワサビなど、生の先達同様に「生キムチ」が普及する日も近い!?
●コッチョリ 表面だけ漬けた浅漬け
コッチョリの“コッ”は「表面」を意味し、“チョリ”は「漬ける」を意味する。つまりコッチョリとは、表面を漬けた「浅漬け」を意味する。コッチョリの代表格は白菜をヤンニョムであえた白菜コッチョリ。見た目は白菜キムチに似ているが、キムチが漬け込み工程を経た発酵食品であるのに対し、コッチョリは無発酵で酸味が弱くサラダ感覚で食べやすい。一般的に「日本人にはコッチョリの方が合う」と言われ、実際、日本で売ってるキムチを韓国人が食べると「キムチではなくコッチョリ?」と感じるらしい。保存食として伝統あるキムチに比べ、コッチョリの歴史は浅く、朝鮮王朝末期に発酵させず簡単に食べられるキムチの一種として登場。収穫に恵まれた韓国南部を中心に広がったとされる。
●店舗情報
「焼肉レストラン一心亭」
経営=一心亭/店舗数=10店/所在地=五所川原本店・青森県五所川原市一ツ谷507-16/設立=1985年10月/席数=140席(宴会場70席まで)/営業時間=11時30分~15時、17時~22時(土日祝は通し営業)/平均客単価=昼2400円、夜3500円/月間平均集客数=5000人
※数字は五所川原本店
●愛用食材・資材
「ヤマサしょうゆFこいくち」ヤマサ醤油(千葉県銚子市)
三拍子揃ったバランスよい味覚
同店は焼肉のタレの原材料として「ヤマサしょうゆFこいくち」を長年使用しており、今回の生キムチの調味ベースにも活用している。本品はじっくりと時間をかけて熟成された本醸造醤油。澄んだ赤い色、香ばしさ、コクのある味など三拍子揃ったバランスよい味わいが特徴。使い勝手に優れる業務用醤油の定番として業種業態を問わず幅広く活用されている。
規格=18L