カオスに一旗!外食ベンチャーレポート(1)ウッドボーイ「ばくだん焼本舗」

2008.01.07 337号 26面

 飲食店の売場効率を知る業界人なら誰もが、わずか2坪足らずの小さなテークアウト店舗で「年商9600万円」と聞いて、「そんな馬鹿な!」と驚きの声を上げるに違いない。東京池袋の大型アミューズメント施設に出店するその店舗こそが、今回ご紹介する(有)ウッドボーイの「ばくだん焼本舗」池袋店だ。この圧倒的な売場効率を誇る同社の秘密が、創業者である蓮尾篤社長が作り上げた画期的な商品「ばくだん焼」の中に隠されているという。(FOOD Pro-Net取材班)

 蓮尾社長は、かつては外食業界とはまったく異なるビジネスで独立し、大成功を収めていた。だが、次の展開に向けて大きな設備投資を行った矢先に、一転してバブル崩壊のあおりを受けた平成不況が訪れる。売上げは3分の1になり、事業をたたんで地元へと戻った蓮尾氏だったが、投資返済の負担は重くのしかかった。もちろん、どんなビジネスも成功ばかりではない。決してめげることのない蓮尾氏は熟考の末、「また新たなビジネスをスタートさせるしかない」と、不況に強いと言われる食べ物商売で再起を決意したのだ。

 以前のビジネスを行っていた時に思いついた新商品である「ばくだん焼」を2ヵ月かけて改良し、まずは地元の観光地で移動販売を始めてみた。前回考えたものとはまったく違う、新しい商品として開発された今回の「ばくだん焼」だったが、始めてみるとまずまずの成果を上げることができた。

 そうしてスタートした「食べ物商売」は、それまでのビジネスに比べれば売上げも低く、粗利も少ないという厳しい世界であったが、同時に、経営努力によって繰り返し購入してくれるリピート客が次第に増えていくといううれしい商売でもあった。初めて挑戦したフードビジネスの世界で、蓮尾氏は自ら作り上げた「ばくだん焼」に確かな手応えを感じ始めたのだ。

 この「ばくだん焼」は、そもそも開発当初からフランチャイズ方式による店舗展開を狙った商材である。ファストフードのスタイルで絞り込まれたメニューによって、広い厨房スペースを必要とせず、毎日その日に店舗で生地を仕込み、トッピングなどによって品揃えのバリエーションが広がる。調理作業は簡単そうに見えるが、焼き上げの技術によりおいしさに微妙な差が生まれるため、チェーン店であっても、その店ならではのおいしさを生み出し、小さな店舗で大きな売上げを上げることも可能なのだ。事業として確立するために、大手服飾企業勤務の幼なじみを迎え入れ、ブランド化し、東京へ進出したのは今から7年ほど前。吉祥寺の百貨店で店前のスペースを借り、移動車での販売を始めたのだが、すぐに有力な情報誌で大きく取り上げられ、翌年にはテレビの取材が続いた。「ばくだん焼」という商材の持つインパクトがメディアを動かしたのである。

 それでも、「事業開始から3年ほどのあいだは、いろいろと苦労も多かったですね」と、蓮尾氏は語る。現在は、直営店とフランチャイズ加盟店を合わせて二十数店舗にまで成長した。物件待ちの加盟契約希望者が待機している。唯一の悩みは、「ばくだん焼」をまねたコピー商品を売る店舗が後を絶たないことだ。

 さらに現在、蓮尾氏はある新たな画期的アイデアの実現に向けてその精力を傾けている。まだ発表はできないとのことだが、このアイデアが実現すれば、「ばくだん焼」は急速に日本中に広まることだろう。

 蓮尾氏の頭の中に描かれている夢とは、「ばくだん焼」が、たこ焼き、お好み焼き、もんじゃ焼きに次ぐ、粉焼きメジャーの第4番目の定番として、日本全国に定着することなのだ。

 ◆一玉食べれば元気ばくはつ!!

 小麦粉をベースにした商品は、業界では「粉もの」と呼ばれている。この「粉もの」系ファストフード商材の常識を覆して、何と4割近い原価率を掛けたこの「ばくだん焼」は、直径8cm、重さ200g、中には10種類もの具材を収めた巨大なボール状の食べ物だ。そのボリュームは、たこ焼きのちょうど8個分。一見すると、「巨大なたこ焼きか?」と、誰もがそんな感想をもらす外見だが、この「ばくだん焼」は、決してそんな単純な発想から作られた商品ではない。蓮尾氏が精力を傾け、血のにじむような努力の結果として作り上げた、まったく新しい画期的な商品なのである。

 「一玉食べれば元気ばくはつ!!」をキャッチフレーズとするこの「ばくだん焼」は、外国産の数倍の価格である国産の優良な小麦粉をブレンドした、こだわりのファストフードなのだ。

 ■企業概要

 会社名=(有)ウッドボーイ/ストアブランド=ばくだん焼本舗/代表取締役=蓮尾篤/本社所在地=茨城県筑西市丙213-8、電話0296・25・5009、本部所在地=東京都渋谷区道玄坂1-15-3 プリメーラ道玄坂807号、電話03・5428・8911/創業=1994年9月/店舗数=24店舗/企業年商=2億8000万円

 ■店舗実績(池袋本店)

 店舗面積=2007年7月に2→5坪へ増床/平均客数=1日590人/平均月商=800万円/営業時間=平日午前11時~午後11時、土日祝午前10時~午後11時30分/おもなメニュー=レギュラー(320円)、チーズミックス(370円)、ネギ塩マヨ(400円)、キムチーズ(420円)

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