一宮のスーパー“1円戦争”終息のめど立たず 賛否両論、2社激闘
昨年から始まった愛知県一宮市での“1円戦争”は、いまだ終息する気配を見せていない。「もうここまできたら、公取(公正取引委員会)が入って決着を図らない限り、落としどころはないだろう」との見方が大勢だ。
一宮市での1円戦争は、アオキスーパー(愛知県津島市)とカネスエ(愛知県一宮市)が青果での地域最安値を競い始めたことがきっかけとなり、現在は両社とも大根やキュウリ、レタスなどを1000円以上買い上げた顧客に対して1円で販売する状態となっている。
1円での販売を継続しているのは同市内周辺のカネスエ4店舗、アオキスーパー3店舗。「景品状態」の販売に対して、周辺の一般消費者からは、これを大いに歓迎するとの声と、生産者を気遣う声とで二分されるが、実際納入している青果の仲卸に聞くと、「流通や生産者に対して今のところそのしわ寄せはなく、逆に商品回転率が上がっているので、ありがたい」という。
確かに1円で販売していても、仕入れ値は相場に合わせての価格であり、売れれば売れるほど、流通や生産者にとっては売上げが伸びる。つまり、この“戦争”は両社の体力勝負の様相を見せているわけだ。
ただ、1円で販売するといっても、それは1000円以上買い上げた顧客に限定されており、他の商品で利益を稼げれば、「青果の3、4品を1円で販売してもトータルで大きな赤字になるようなことはない」との見方もあり、そう簡単には決着しそうもない。
そうなると、大きな痛手となるのは一宮市周辺で展開している他の食品スーパーだ。「もはやこれは商売ではない」「一刻も早く適正な販売に戻してもらわないと、消費者も青果は1円で買えるのではないかと勘違いしてしまう」と危機感を募らせる。
こういった中で、にわかに浮上している終息説は「ここまできたら不当廉売として公取に入ってもらい、強制的に押さえ込んでもらうしかない」といったものだ。確かに青果は仕入れルートに共通した大手企業はなく、仲裁に入れる企業は見当たらない実情からいえば、それしか解決策はなさそうだ。
「次は加工食品での競争が始まりそうだ」という声も出始めており、どちらにしても、1円戦争が加工食品へと飛び火する前に終息することを期待したい。