電化厨房最前線:ディア・スープ「Dear.SOUP(ディア・スープ) 丸の内新東京ビル店」
スープ専門店の先駆けともいえる「ディア・スープ」では、化学調味料無添加で、野菜がゴロゴロと入った具だくさんスープが、女性客を中心に支持されている。丸の内新東京ビル店では、9割以上が、このビルをはじめ近隣に勤務するOL客で、その半数近くがテークアウトをしていくという。また、毎日、80食分準備する弁当も、すぐに完売してしまうほどの人気だ。これらの商品は、仕込みからすべて、オール電化厨房によって行われている。
具だくさん創作スープ専門店「ディア・スープ」の第1号店は、1993年3月にオープンした銀座店であった(現在は閉店)。
当時はスープ専門店といった業態は珍しかったために、認知度を高めようと特徴のある店舗づくりが行われたという。アメリカ・シアトルにあるデリカテッセンをイメージし、スープサーバーを並べたカウンターでの対面形式で、出来たて感をアピール。そして、お客に試飲を薦めるなどのサービスも積極的に行うことができ、お客との距離を縮めたいとの意図が反映されたこの店舗スタイルは、今回取材に訪れた丸の内新東京ビル店でも生かされている。
(株)ディア・スープ代表取締役社長・稲葉誠治氏によると、厨房スペースが1.5坪と、とても狭いため、ガス厨房にした場合、スタッフにとって、決して好ましい厨房環境とはならないことが想像できたという。
そこで、初期投資145万円をかけて、電化厨房を採用した。現在はIH調理器2口、スープウォーマー8台、スチームコンベクションオーブン1台、ディッシュウォーマー、電子レンジなどを使用している。
必要最小限のこれらの機器を効率よくコンパクトに設置した厨房では、毎日8種類約200食分のスープを仕込みの段階から調理している。
「スープは大量に作った方が、おいしいと思います。この店舗では、スープをIH調理器を使って加熱していますが、熱伝導率がよく、沸き上がるまでの時間も短いことから、ランニングコストの面でも効果的だと思います」と稲葉氏。現在、電気代は月平均12万円ほど。
また、狭いスペースで複数のスタッフが行き交うにもかかわらず、やけどなどのけがもほとんどないなど、安全面でも高く評価している。
「玉川高島屋SC店は、ここよりも、さらに厨房スペースの狭い店舗です。そうした場所では、仕込みの大半はOEMで対応し、店舗の厨房ではIH調理器で加熱するだけ。OEMとコンパクトな厨房設備の組み合わせによって、立地条件に合わせたさまざまな店舗づくりが可能です」(稲葉氏)
一方、デメリットとしては、ガスを使って食材を火であおったときと比べ、カラッとさせるための火の入れ方が難しいという。
「カフェ風の店づくりやスープ専門店ということから、男性客がなかなか足を運びにくい雰囲気があるようだ」と稲葉氏。そこで、男性客でも満足できる「自家製手ごねハンバーグセット」や「カレースープごはんセット」といったメニューも取り入れた。特にカレースープごはんは、同店だけの限定メニューだ。もちろん、ハンバーグも仕込みから店舗で行い、スチームコンベクションオーブンを使って焼き上げる。
現在では、東京2店舗、関西2店舗の合計4店舗を出店。
「7年前からは、レトルトスープも発売し、インターネットやギフトの販売にも注力しています。物販の面からも、ディア・スープの存在を知っていただき、さらに多くのお客さまにご利用いただければと思います」(稲葉氏)
◆現場のコメント:ディア・スープ 店舗事業関東エリアマネージャー 山部浩二氏
スープは基本的に店舗で仕込みを行っていますが、IH調理器は立ち上がりが素早いので、スープの仕上がりが早いと感じています。
ガス厨房では、夏場は汗だくになってしまいましたが、電化厨房を採用したこの店舗では、作業を行う環境がとてもよくなりました。ゴトクの分解などをせずとも、さっとふき取るだけでよいというメンテナンスのしやすさも魅力ですね。
店頭ではスープを保温するために、常にスープウォーマーを使っていますが、この場所もやはり暑くなりすぎることもありませんので、接客するスタッフにとっても快適なようです。また、温度設定が簡単にできますので、常にスープをかきまわしていなくても煮詰まりづらく、手間が省けます。
◆店舗メモ
◇「Dear.SOUP(ディア・スープ) 丸の内新東京ビル店」/店舗所在地=東京都千代田区丸の内3-3-1 新東京ビルB1/開業=2005年11月/営業時間=月~金 午前11時半~午後9時(LO午後8時半)、土・日~午後5時半(LO午後5時)/坪数・席数=145坪・20席/客単価=650円
◇(株)ディア・スープ/本社所在地=東京都渋谷区恵比寿南3-2-17/事業内容=レトルト食品・冷凍食品の製造販売、天然調味料の加工および販売、ディア・スープ4店舗(2009年3月現在)展開/企業年商=4.2億円(2008年3月実績)/http://www.dearsoup.net/
○カラダが喜ぶ具だくさんスープ 「2種類スープセット」(950円)
100種類以上ある創作スープレシピから、常時8種類が店頭に並ぶ。
写真の「2種類スープセット」は、好みのスープSサイズ2種類と、パンまたは麦入りご飯、ミニサラダのセット。スープは一番人気の「ペンネ入りポテトグラタンのせ粒粒コーンスープ」と「ミネストローネ」。
1日約25食出る人気のセットメニュー「ミニスープごはんとSサイズセット」(800円)は、ミニスープご飯、好みのスープSサイズ、ミニサラダ付き。テークアウトはサラダなしで100円引きとなる。
◆使用機器紹介:ニチワ電機(株)「IH調理器 MIR-1033TA」
素早く立ち上がるハイパワーのIH調理器
ディア・スープ丸の内新東京ビル店では毎日、約8種類のスープを2口のIH調理器で使用しているが、立ち上がりが素早いため、手際よく調理を進めていくことができるという。
火力は、火力調整ツマミによって無段階に調節することが可能なため、微妙な火加減の煮込み調理にも大変便利だ。
そのほか、料理の下ごしらえ、煮込み物、湯沸かし、保温、炒め物など各種の加熱調理もできる。
消費電力=3相200V/3.0kW×2