電化厨房特集:客席電化厨房最前線=物語コーポレーション「大阪梅田お好み焼本舗」
「焼肉一番かるび」や「丸源ラーメン」などを展開し、ユニークな業態開発を得意とする(株)物語コーポレーション。2005年12月、相模原店(神奈川県)からスタートした「大阪梅田お好み焼本舗」は、現在、全国で41店舗(直営15、FC26)を展開している。2007年からは電気式鉄板による客席電化の導入を始めており、客席環境の快適性が大幅に改善されたことで、好調な売上げアップにつながっているという。
●「夏場に集客できない店」から脱却
主に郊外のロードサイドで展開を進めている「大阪梅田お好み焼本舗」。2007年8月オープンの八王子東中野店(東京都)から客席電化を導入し、現在は約30店舗で電気式鉄板を使用している(うち6店舗がオール電化)。
客席電化を導入する以前は、夏場の繁忙期に入る6~7月にかけての売上げの伸びが、同社で展開する焼き肉店やラーメン店などの他業種と比べると予想以上に悪かったという。
「その原因の一つが、ピークタイムに起きる、油煙による目が痛くなるほどの空調の悪さ。当然、冷房も効きづらくて暑く、『お客さまにとって行きたくない店となっているのでは』と、現場スタッフから指摘されました」と振り返るのは、店舗開発部の鷲野英之さん。
実は、油が気化しない加熱温度ならば鉄板から出る油煙の量も少なく、空調環境が極端に悪化することはない。だが同店のこだわる「中はフワッと表面カリッ」という食感の実現には、油が気化する180℃という高温まで鉄板を加熱する必要がある。また、電化以前は鉄板温度を一定に保つことが難しかったため、油煙が発生しやすかった。そのため、「鉄板の高温を維持して味を守りたい」と「快適な環境を提供したい」のはざまでジレンマに陥っていた。
加えて安全面においても、鉄板脇の排気口に触れてやけどをしたり、マヨネーズの容器が溶ける、メニューが焦げるなどの問題も多かった。そこで、品質確保と店内環境の改善の両立、安全性の確保を考慮した結果、電気式鉄板の導入に踏み切ったのだという。
電気式鉄板に転換した途端、快適性と安全性が大幅に改善された。例えば客席では1年を通して快適な室温を安定して保てるようになるため、お客だけでなく、働くスタッフにとっても快適な環境になったと好評だ。また、油煙が天井や柱に付き、そこにほこりが付着し、さらに油煙が……といった悪循環を断つことができ、掃除のしやすい清潔感のある客席を維持できるようになった。
必要に迫られた客席電化(電気式鉄板)の採用だったが、空調コストの削減、クレンリネスの実現など、当初考えていた以上のメリットを得ている。
「コスト面では、当初のシミュレーションよりもランニングコストがさらに安く、ある店舗では7ヵ月で170万円削減したというデータもあります」と鷲野さん。ランニングコストが予想以上に抑えられ、当初4~5年の予定が、3年で回収の見込みという。
しかし、オール電化について初期投資に上限があるため、賃料が特別に安い、補助金が受けられるなど、条件に見合う店舗から導入する考えだ。
客席電化とともに、メニューの見直しを行ったことで、売上げも確実に伸び、豊川店(21卓96席)では前年対比105%を達成し、平均月商1100万円、2006年オープンの大型店舗、浜松中沢店(30卓134席)では月商1500万円と好調だ。
今後は関東での出店に本腰を入れ、さらに積極的な店舗展開を行っていく予定だ。
◆現場のコメント:お好み焼事業部教育グループ 廣瀬教志マネジャー
お好み焼きをはじめ鉄板料理の商品の出来は、鉄板温度に左右されます。ガス式鉄板では、温まり具合は「勘と経験」が不可欠で、いわば職人的な要素があり、誰でもすぐにマスターできるものではありませんでした。しかし、厨房に導入したIH式鉄板は1℃単位での温度設定が可能で、常に一定温度を保てます。「何℃で何秒」と数値で表しマニュアル化することで、誰でも簡単に一定の品質で焼けるようになりました。1つの商品をマスターする時間も約半分に短縮し、人件費の面からもコストダウンは確実です。一方、客席に導入した電気式鉄板は、高温で焼き上げることで「外側カリッ」の状態にできるので、お客さまにとってはお好み焼きをひっくり返しやすくなったようです。
◆大阪のおばちゃんの味を再現。具材の豪華さ横綱級のお好み焼き 「なにわデラックス横綱焼」(1,134円)
この店のお好み焼きの特徴は、「ふわ・さく・カリ・とろ」の本場大阪のおばちゃんの味を再現すること。そのために高温で焼き上げることにこだわっているという。お好み焼き9種類をはじめ、大阪ねぎ焼き、もんじゃ焼き、モダン焼き、焼きそば、鉄板焼きなど、バラエティーに富んだ魅力的なメニュー構成で、1番人気は「なにわデラックス横綱焼」。豚ばら、牛カルビ、エビ、イカ、ホタテ、卵が入った豪華なお好み焼きで、食べ応えも十分な一品だ。
◆店舗メモ
●「大阪梅田お好み焼本舗 豊川店」/所在地=豊川市牛久保町字城下79-1
●(株)物語コーポレーション/本社所在地=愛知県豊橋市西岩田5-7-11/事業内容=「大阪梅田お好み焼本舗」41店舗のほか、焼き肉店、ラーメン店など全147店舗(直営70店舗、FC77店舗/2009年3月現在)を展開中