高桑先生の飲食経営クリニックQ&A(8)こりゃ~どうしようもないナ!
●from相談者 ラーメン店主・秋山
50歳の元サラリーマンです。以前一流企業に勤めていましたが、リストラで会社を辞めました。もともとラーメンが大好きで、休みの日に関東全域のラーメン屋巡りをしています。自分流のラーメン屋を経営したいと思い、国道16号沿いに手ごろな物件(15坪)を発見、昨春オープンしました。開店時はお客が入りましたが、半年後お客はほとんど来なくなり閉店しました。しかし、ラーメン屋の夢は断ち切れず、2回目の挑戦として相模原市で今春店をオープン。赤字で、今月末で閉店します。もう退職金も底をつき、あきらめようと思います。でもどうして、開店時お客さまが来て、その後来なくなるのか、プロの目で診断し教えてもらえませんか?
◆ほこりっぽく異臭漂う店内、生臭いラーメン 店の不潔さとラーメンのまずさに客足も遠のき…
前回までは、読者相談にアドバイスをして、その結果成功した例を述べてきた。しかし、そんなうまい話がザラにある訳はない。このコーナーに寄せられる相談で、現場に行って“こりゃ~どうしようもないナ!”と判断する事例は、山のように存在。今回は、そんな全く駄目なケースをご紹介しよう。
相談が寄せられた相模原店へ行ってみた。一目で不振原因が分かった。全く掃除が行き届いておらず、店の玄関はほこりっぽく、異臭が漂う。オーナーの秋山さんに会ったが、昼の12時半だというのにお客は1人……。
筆者「こんにちは、秋山さんですか……?」
秋山「やぁ先生。どうぞ、どうぞ……。ラーメン召し上がりますか?」
筆者「じゃ、お得意の味噌ラーメンいただきます」
秋山「ところで、どうしてお店にお客さんが入らないんでしょうね……?」
筆者「競合店はどうですか?」
秋山「チェーン店がありますが、味はたいしたことないのにずいぶん混んでます」
筆者「このラーメン、スープのベースは何ですか……?」
秋山「煮干しです。うまいでしょう!」
筆者「…………」
出されたラーメンは生臭い。煮干しのからいりが足りないと分かる。何しろ店に清潔感が無い。秋山オーナーは、醤油で煮しめたようなランニングシャツ姿で厨房に立つ。今は何を言っても無駄だと感じ、早々に退散した。
後日、手紙で真実をお知らせし、今後の奮闘を祈念する言葉を添えた。今秋、契約社員のガードマンで頑張っていると葉書が届いた。
((株)日本フードサービスブレーン代表取締役 服部栄養学園マネジメント論講師 高桑隆)