電化厨房特集:大手外食チェーンの最新電化厨房=吉野家行徳相之川店
電化厨房検証店舗の第1号店として、吉野家では昨年9月に行徳相之川店(千葉県)をリニューアルオープンした。部分的な電気機器の導入や、施設の条件下で電化厨房での出店実績はあったが、本格的な導入は今回が初となる。補助金によるコスト面での負担減だけでなく、導入しやすい環境が整いつつあるようだ。
「これまで本格的な電化厨房導入に至らなかった原因の一つは炊飯ラインでのオペレーションの問題」と、CSR推進本部の榎本博政氏は言う。ピーク時には150~200食分の牛丼を提供する店舗もあり、短時間で白飯を次々と大量に炊き上げるのだが、品質を落とさずこのサイクルに電気炊飯器を組み入れる難しさがあったようだ。
今回、行徳相之川店では4kg炊き(約30食分)のIH炊飯器を4台導入。炊き上がりには蒸らし時間を入れ、40~45分間要する。「ガスよりやや長めの印象だが、炊飯のタイミングなど炊飯器に慣れることにより解消されるはず」(榎本氏)
また、内釜に持ち手がないため保温ジャーに移しづらかったが、メーカーに相談し炊飯器と保温ジャーで共有できる内釜を用いることに。しかし、持ち手がないための運びにくさは変わらず、改善が必要な点の一つだ。
使用している主な電気厨房機器は、IH炊飯器4台、IHコンロ2台、IH肉鍋2台、保温ジャー1台、食器洗浄機。今回は、キュービクル設置のために駐車場2台分のスペースを割いた。「プロパンガス置き場のスペースを活用する予定だったが、今回は電気容量に余裕を持たせたため大掛かりなものに。しかし、店舗ごとに適切なサイズのものを置けば、さらにイニシャルコストは抑えられるはず」(同)
リニューアル店舗のため、あらゆる面での比較が容易に行えるといい、コスト面では予想以上の結果が期待でき、初期投資は3~4年で回収の見込みだ。ただし同店は客数の入りが比較的多いため、次のステップとして標準店舗での検証を行う予定だ。
また、ほとんどの店舗ではキャスト(アルバイト)が1年間で半数以上入れ替わるため、オペレーションの教育とともに、省エネや環境問題への意識付けも必要だ。ほかにも、省エネモードなど各機器の機能の使いこなしを周知させるなど、ハードとソフトをうまく合わせて対応していきたいという。
◆現場のコメント:吉野家行徳相之川店・杉野明店長
これまでは、ガス・電気という2つの要素を気にしなければなりませんでしたが、電気に一元化したことで、例えばトラブルが起きた場合でも、その対処法をスタッフと共有しやすいなどのメリットがあると思います。
また、食器洗浄機がこれまでは1日に2回、部品の洗浄が必要でしたが、今回導入したものは1回で済むのも手間が省けました。
炊飯器に関しては、従来の機器と比べると、炊き上がり時間をはじめ多少違和感があるような気がしますが、今はそれが単なる慣れの問題か、あるいは改善余地があるのかを見極めている段階です。
◆店舗メモ
●「吉野家 行徳相之川店」/所在地=千葉県市川市相之川2-6-2-3
●(株)吉野家/本社所在地=東京都新宿区新宿4-3-17/事業内容=「吉野家」1176店舗(2010年1月末現在)
◆使用機器紹介:ニチワ電機(株)「IH肉鍋MITR-20YLJ」
生産性の高いIH式肉鍋。肉を煮込み、保温する。品質管理のために、温度設定の操作も簡単。吉野家の味を守り、作り上げるために開発された。外形寸法=620×550×800mm。消費電力=3相200V×5.0kW