外食史に残したいロングセラー探訪(41)デニーズ「和風ハンバーグ」
デニーズの第1号店が、神奈川県横浜市にオープンしたのは1974年のこと。その数年後に「和風ハンバーグ」は登場し、以来、多くのファンから支持され続ける超ロングセラー商品である。その理由の一つは、オリジナルのソース。30年にもわたり大きくブレることなく、「デニーズの味」として広く認知されているのである。
◆サラリーマンをはじめ男性客から高い支持
オープン当初は、アメリカの店舗そのままのメニューを提供していたデニーズ。だが次第に、日本に根付くためには、日本人に親しまれるメニューの開発が求められるようになってきたという。そこでハンバーグも、日本人の味覚や好みに合った、そしてご飯に合うメニューづくりが進められたのである。
「当時はまだ、『食後にコーヒー』といった食習慣も今ほどなじんではいませんでしたので、“アメリカンコーヒーにも合う”こともメニュー開発においては大切な要素だったようです」((株)セブン&アイ・フードシステムズ、PR・SP統括マネジャー/山瀬輝子氏)。
和風ハンバーグというと、大根おろしとポン酢といったあっさりと食べられる組み合わせが多いが、デニーズの場合は少し違ったアプローチで作られている。
まず、ソースは醤油をはじめとした発酵調味料の“醤(ジャン)”と、コクと香り付けにごま油を使用し、これらをベースに、数種類の食材を組み合わせたオリジナルである。純粋な和風の味わいというよりも、ややチャイニーズの要素も入った「アメリカ人がイメージする、ジャパニーズスタイル」の味付けといえそうだ。
そして、ハンバーグの上には大根おろしではなく、長ネギのソテー。玉ネギではなく長ネギを使うことで、和の味わいが強調されている。さらに、ソテーすることで引き出される長ネギのうまみや甘みが加わることで、ソースに深みが出る。
「ソースもハンバーグも、デニーズオリジナルの仕様で作るPB商品です。ハンバーグは限りなく手ごねに近い状態に仕上げてあり、チルド配送したものを店舗で焼き上げたときに肉汁もたっぷりと出るのが特徴です」(山瀬氏)。たっぷりと出た肉汁と長ネギのうまみが加わったオリジナルソースとが合って、和風ハンバーグの風味が完成するのである。
お客からは「和風ハンバーグのソースはどこで買えるの?」といった問い合わせも多いというが、現在のところ残念ながら商品化されていない。
幅広い年齢層から人気があるが、男女別で見ると、ほかのハンバーグメニューと比べて男性客からの支持率が高いという。
味覚や好みの方向性を反映させて微調整を行うことで、三十数年もの間、どんなにメニューが変わろうとも、必ず上位10位以内に入る超人気定番メニューであり続けるのだろう。
●店舗データ
「デニーズ」/経営=(株)セブン&アイ・フードシステムズ/本社所在地=東京都千代田区二番町8-8/事業内容=「デニーズ」「ファミール」などレストラン事業595店舗、ファストフード事業140店舗、その他
◆デニーズのロングセラーメニュー
デニーズでは、販売開始時とメニュー名や「顔」(盛り付け方など提供方法)が異なるものの、多くのファンから支持され続ける人気商品が数多くある(一部、季節限定販売、または現在休止しているメニューあり)。
■Denny’sモーニング:卵の焼き方をサニーサイドアップ、スクランブル、ターンオーバーの3種類から選べる
■デミグラスハンバーグ:半熟の目玉焼きがのったデニーズ伝統の定番ハンバーグ
■ジャンバラヤ:スパイシーな味付けが人気。一時休止していたが多くのファンの声により復活
■自家製フレンチトースト
■マンゴー
■キャラメルハニーパンケーキ
■デビルズブラウニーサンデー
■ナタデココ:デニーズがいち早く紹介したデザート