（手前から時計周りに）「おでん盛り合わせ」「牛すじおでん」「ガーリックトースト」と赤ワイン。おでんは丁寧にじっくり煮込まれ、見た目よりあっさりした味わい。口の中に優しくだしと味噌が香る

ソムリエであり店長の橋本さんと、特注で作った鍋とかまど。かまどには、シジミが採れる木曽川の砂を使用し、アクセントにシジミをあしらった。これで、だしが染み込んだ新名古屋風あっさりおでんが出来上がる

　名古屋の味噌料理といえば、甘く濃厚なイメージがある。そんな中、あっさりした味噌おでんとワインの居酒屋「カモシヤ」が人気を呼んでいる。同店名物のシジミだしのおでんは、シジミのほかに、牛すじやテールのだし、味噌と煮詰めた赤ワインを使用。ワインは常時6種類あり「このおでんには、このグラスワイン」とソムリエでもある橋本氏（店主）お薦めの組み合わせを店内ボードで紹介。新名古屋風おでんとワインが、名古屋のワイン通たちを中心に話題を集めている。

　「牛すじおでん＆ワイン」が名物のカモシヤ。同店は、料理人からスタートして、フレンチ、ワインバーのマネジャーなどの経験を持つソムリエの橋本氏が、各地のおでん屋やモツ屋を食べ歩いて研究の末にたどり着いた居酒屋である。

　名古屋の味噌料理や今どきの“濃い味”とは一線を画し、新名古屋風ともいえる。赤味噌を濃厚にしていくと、酸味が強くなるため、砂糖を加えて甘くしないと味のバランスが取りにくい。しかし、同店では赤味噌を使いつつ、砂糖は使わず現代風にアレンジした。

　おでんだしのポイントは、木曽川で採れたシジミ、牛すじ、テールのだしを別々に取ることにある。それに、煮詰めた赤ワインで溶いた赤味噌、仕上げにポートワインを加え、香り、甘み、風味を付けて、隠し味で、しょっつるとタカノツメを入れる。

　試行錯誤の末にたどりついた、秘伝のおでんだしは、どんどん継ぎ足しをして奥深い味を出す。とはいえ、そのまま継ぎ足すのではなく、翌日にすべての具材を出して、こして、火入れをする。その一手間によって、新たなだしを足していっても味が濁らないという。

　おでんの売れ筋は、牛すじ、大根、卵、手作りさつま揚げ、そしてトマト。トマトは、1日15個は出る人気ぶりだ。サイドメニューで最も評判なのがアンチョビポテト。フライドポテトをアンチョビソースで味付けしている。ほかにポテトサラダや筑前煮、チーズの粕漬けなどが並ぶ。また、飲み物は、厳選した6種類のワインとスパークリングワインのほかに日本酒や焼酎もあり、幅広く楽しめるようにした。

　ビジネスホテルが近くに数件ある立地のため、出張族も多く訪れる。オーソドックスな名古屋の味噌おでんを楽しみたい方向けに、甘さとコクのある赤味噌だれも用意。好みにあわせて食べられる。

　カモシヤがオープンするまで、名古屋には、おでんとワインがともに楽しめるお店は、高価格帯が中心。もっと気軽に両方を一緒に味わってもらいたいと、価格を抑えた居酒屋としてスタートした。店内は、昭和レトロの雰囲気を醸し出し、1人だけでも気軽に入れる温かさが漂う。「本当の大衆居酒屋、奥行きのある味わいを追求していきたい」と、橋本氏は語る。

　●店舗情報

　「カモシヤ」　所在地=名古屋市中区錦3-16-8 森万ビル1F、電話052・963・6730/開業=2010年7月/営業時間=月～木午後4時半～午前0時　金・土・祝前日午後4時半～翌午前2時、日休/面積・席数=約14坪・24席/1日来店客数=平均30～40人（金・土は60人前後）/平均客単価=3000円

　●愛用資材・食材

　「ポリフェノールでおいしさアップ　たっぷりサイズの赤ワイン」　サッポロビール（株）　東京都渋谷区恵比寿4-20-1

　カモシヤおでんだしのポイントは、シジミ、牛すじなどのだしと味噌以外にもう1つある。それが、赤ワインである。一般の料理用赤ワインは、酸味やタンニンが弱いものが多いなか、「ポレール　ポリフェノールでおいしさアップ　たっぷりサイズの赤ワイン」は、しっかりした味わいで、煮詰めることによって“おでんだしの芯”になってくれるという。コストパフォーマンスにも優れ、名古屋の名だたる料理人も同品を使っており、薦められて使用し始めた。おでんの味を引き締めてくれている一品である。

　規格=1800ml