高桑先生の飲食経営クリニックQ&A(21)自信持って適正価格で勝負しよう!

2011.03.07 384号 17面

 ◆from 相談者

 家庭料理食べ放題800円 運営経費苦しく実質赤字

 農協生活改善グループです。長年活動し昨年、仲間7人で農家レストランを開業しました。廃校になった小学校の給食室を利用したレストランです。家庭の主婦ですから、お店で出せる立派な料理など無理と考え、農家の家庭料理で、食べ放題(バイキング)800円で店開きしました。開店当初1日10万円も売りましたが、1年後の今、運営経費さえ苦しくお店は実質赤字です。私の給与は月2万円。この先どうすればいいかご教授下さい。

 (茨城県・農家レストラン代表 A子さん(52歳))

      *

 ある農業雑誌の読者相談である。最近はやりの、農家レストランを開業する女性グループからの相談にこの手のものが多い。彼女らは全くの素人である。故に、当紙のようなプロ向けの業界紙などは読んでいない。

 農業関係者が、安全・安心の地元食材を使用し、おいしい農家レストランを開店することは大賛成だが、ほとんどの人々が、ろくに飲食店経営の勉強もせずに店を始めてしまう。その結果、赤字で行き詰まる……という構図である。

 「家庭の主婦ですから、農家の家庭料理で……」という言い訳が多い。だからといって、バイキング=食べ放題にすべきではない。なぜなら、自然を大切にし、栄養バランスを考え、地元で取れた安全・安心な野菜や食材を使用した料理コンセプトなら、食べ放題などという、食べ過ぎと、不健康を増進させるような食事スタイルを奨励すべきではない。食べ放題にせざるを得ないなら、せめて1200円くらいに価格改定するべきだ。

 「こんな田舎で、そんな高い値段は……」と思うなら、近くのはやっている農家レストランに見学に行き値段を見てきなさい。絶対に安い値段ではやっていない。勉強と調査が足りない。

 もう一つの解決方法は、自店の特徴のある料理を生み出すことだ。郷土料理にヒントがある。創作料理を考えなさい。まだ工夫が足りない。商売はそんなに甘くないことを分かってほしい。

 今都会では、飲食店の価格破壊がまん延している。もしもお客さまが、農家レストランに激安「破壊価格」を求めているなら、こんな田舎までわざわざやって来ない。農家レストランにやって来るお客さまの85%は女性客。彼女らは、都会にまん延する激安価格、どこの安い食材を使用しているのか分からないような、そんな料理にへきえきしている。だから、田舎の、素朴だが本当に身体にいい安全・安心な料理を食べに、遠くまで来ているのだ。自分の仕事に自信を持ち、笑顔でお客さまを迎えることである。

 ((株)日本フードサービスブレーン代表取締役/服部栄養学園マネジメント論講師 高桑隆)

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