外食史に残したいロングセラー探訪(52)中華料理 新京「ベトコンラーメン」

2011.06.06 387号 08面
1人前平均で、ニンニクは8個くらい入っており、見た目にもインパクト大。さらに素材にこだわり、翌日臭いにくい新メニュー「あっさり味ベトコンラーメン」(880円)もある

1人前平均で、ニンニクは8個くらい入っており、見た目にもインパクト大。さらに素材にこだわり、翌日臭いにくい新メニュー「あっさり味ベトコンラーメン」(880円)もある

昭和イメージの店構え。JR尾張一宮駅から徒歩10分。駐車場有り

昭和イメージの店構え。JR尾張一宮駅から徒歩10分。駐車場有り

 愛知県、岐阜県では、名前も味も個性的で有名なラーメンがある。その名も「ベトコンラーメン」。たっぷり入ったニンニクやニラ、モヤシを唐辛子で、しっかり辛く味付けした具材に特徴がある。インパクトのあるネーミングとクセになる味わいに、地元の人はもちろん、遠方に引っ越しをしても、また食べたくなって訪れるという根強いファンも多い。

 ベトコンラーメンの元祖は、愛知県一宮市にある「中華料理 新京」といわれている。そのラーメンの特徴は、蒸した後に揚げ焼きしたニンニクがゴロゴロと入り、ニラやモヤシ、そして、たっぷり唐辛子のかなり辛い味わいである。麺は中太麺で、スープは、鶏がらと豚骨、ばら肉、鶏肉から抽出した醤油ベースで、辛さの中にもしっかりとしたうま味が広がる。

 同店は、1969年に満州生まれの稲垣稔氏が創業。開業してから1年後、子どものころに満州で食べたラーメンの味を思い出し、アレンジして作ったのがベトコンラーメン。始めは、まかないとして作っていたが、疲れていたお客に提供したところ、好評となり、「お客さまの、これを食べるとベストコンディションになるよ、という言葉から、ベストコンディション・ラーメンを略してベトコンラーメンと命名されました」と、現在の二代目店主である稲垣賀彦氏は語る。

 現在では、ベトコンラーメンは同店だけのメニューではなく、ご当地ラーメンとして他店でも提供している。また、新京からのれん分けした店舗は、愛知県を中心に13店舗あり、岐阜、大阪、岡山、福岡と各地に広がっている。

 新陳代謝がよくなり、スタミナ満点になりそうな素材がたっぷり入ったベトコンラーメンは、標準でもかなり辛い。食べ終わるころには、体がしっかりと温まり、気持ちのいい汗が出ているだろう。ただ、同店では、「好みは人それぞれ。多くの方においしく食べていただきたいので、標準以外に4種類の辛さ、激辛、倍辛、辛さ控えめ、辛さなしを加えました。麺の太さも、標準以外に、極細麺、中太熟成麺、極太麺を用意しています」(稲垣氏)

 さらに同店では、サイドメニューの「ゲソから」(750円)と「とりから」(880円)のファンも多い。ゲソの唐揚げである「ゲソから」はプリプリの食感、鶏の唐揚げ「とりから」はジューシーで、ともに大きめ。ベトコンラーメンに次ぐ人気メニューだ。

 ニンニクのうま味と香り、唐辛子のピリッとした辛味と、鶏がらと豚骨などから取り出したスープのコクとうま味が、濃い味を好むといわれる愛知、岐阜エリアの人々の心を40年以上とらえ続けている。店主の稲垣氏は、「ベトコンラーメンを食べることで、少しでも多くの方々をベストコンディションにして、元気な方を増やしたいですね」と、今後は会社化を予定しており、関東や関西地方にも出店を検討している。

 ●店舗データ

 「中華料理 新京」/所在地=愛知県一宮市松島町5/店舗数(のれん分け含む)=13店/開業=1969年/営業時間=午前11時半~午後2時半(LO2時)、5時半~10時半(LO10時)、火曜定休/席数=22席/平均客単価=昼850円、夜2000円

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