進化する人気定番!ラーメン最前線:ラーメンデータバンク・大崎裕史会長
●自称「日本一ラーメンを食べた男」が語るラーメン市場の動向
7歳の頃からラーメンを食べ歩いてきた大崎裕史氏が、これまでに訪れたラーメン店は少なく見積もっても1万軒以上、食べたラーメンは2万500杯。まさに“身を持って”修得した膨大なラーメン情報を、インターネットを活用して発信する「ラーメン評論家」のパイオニアであり、ラーメン業界の発展に寄与した功績は計り知れない。日本全国のラーメンをとことん知り尽くした大崎氏が語るラーメンの過去、現在、未来とは?
●インターネットの登場で情報量が激増
–ラーメン評論の変遷は?
大崎 ラーメンに関する情報量は、インターネットが登場した1995年を境に「紀元前」と「紀元後」ほどの大差が生じます。95年以前、おいしいラーメン店を探そうとしたら、書店で「ラーメン」の文字がのっている書籍や雑誌を見つけるか、テレビで紹介されるラーメン店に行ってみるか。私は、電話帳でラーメン店を探したりもしましたね。あとは町を歩いて見つけたラーメン屋さんに飛び込みで入る。その場合は、事前情報が何もありませんから、当たり外れがあります。95年以前は、私のラーメンに対する食欲を満たすだけの情報がないというのが実情でした。
–それが、インターネットの登場で激変?
大崎 インターネットと出合った私は、早速、「東京のラーメン屋さん」というサイトを立ち上げて情報発信を始めました。すると、こちらから発信するだけではなく、情報がどんどん集まる。それまでは、少なくとも都内のラーメン店については誰にも負けないと自負していたのが、たとえば中野にあるラーメン店は、やはり中野に住んでいる人にはかなわないわけです。そこに住んでいる人しか知らない地域密着型の情報を、日本中の人が共有できるようになり、誰でも簡単においしいラーメン店を見つけられるようになりましたね。
–店側のネット活用は?
大崎 店側にもネットを意識した経営が求められています。ネットのない時代は、店のマイナス情報はほとんど出回らない。ところが今は、「食べログ」や「ぐるなび」でプラスの情報もマイナスの情報もあっという間に広がります。
店のホームページがあるか、ないかも、繁盛の分かれ目要素です。また、ネット検索ですぐにヒットする店名を付けることも大事。たとえば「麺屋武蔵」も、開店当初は「武蔵」で検索すると「武蔵野市」の情報ばかりが出てきて、なかなか店にたどりつけないということがありました。
–ネットの影響は大?
大崎 有名店の味を模倣しやすくなったのもそのひとつです。たとえば「清湯系ラーメン」で検索して、ヒットした店を回れば、ほぼイメージがつかめる。ネットで有名店の大まかなレシピが公開されている例もあります。
有名店に触発されて出店したり、メニュー開発することを「インスパイア系」といいますが、その典型例が「青葉インスパイア系」。中野にある「青葉」を参考にした出店が、一時期の流行になりました。ネット登場の翌年にオープンした「青葉」の情報が、それだけ広がったということです。「ラーメン二郎三田本店」から「二郎インスパイア系」が日本中に伝播したのもその一例です。
情報量が激増し、伝達がスピードアップしたことで、“ラーメン評論家”としての責任も大きくなってきています。“隠れた名店”を発掘するのが私の仕事ですが、「あの店はおいしい」とひと言言うと、たちまち人が押し寄せ、“隠れていない名店”になってしまう。店が繁盛するのはいいことですが、その店の昔ながらの常連客にとっては迷惑な話でもあるわけです。発言の重みを感じますね。
–ご当地ラーメンが減った?
大崎 ラーメン食べ歩きの醍醐味はご当地ラーメンにあったのですが、今は、九州の繁盛店の味を東京の店がまねしたり、東京の味が地方に出回ったりで、そこに行かなければ食べられない味というのがどんどん減ってきています。地方の地元の人にとっては、東京のトレンド・ラーメンが食べられるメリットがありますが、私のようにご当地ラーメン好きには寂しいですね。
実際、地元のラーメン情報誌のランキングでも、東京の人気店の味が上位を占めるようになってきています。東京のはやりの味をまねれば、手っ取り早くある程度までは店をはやらせる可能性があるというのも否めません。
–繁盛店にするポイントは?
大崎 ターゲットを地元にするのか、それとも“電車に乗ってまでわざわざ食べに来る人”にするかで違ってきます。地元に愛される店を目指すなら、その地域にどういう人が住んでいるかをリサーチして、味を決めればいい。“電車に乗って食べに来る人”を呼びたいなら、限定メニューや珍しい食材など他店にはない話題性が必要。どちらをターゲットにするか、その見極めが肝心ですね。
●プロフィール
大崎裕史(おおさき・ひろし) 1959年福島県会津出身。ラーメン評論家。広告代理店に勤務しながら、95年日本初のラーメン情報サイト「東京のラーメン屋さん」を開設。2005年(株)ラーメンデータバンクを設立。09年日本ラーメン協会の発起人となり、ラーメン業界の発展に努める。
●(株)ラーメンデータバンク
本社所在地=東京都目黒区目黒2-11-11/事業内容=(1)Webサイト及び携帯サイトの企画・運営(2)商品企画、コンサルティング、アドバイス(3)新聞、雑誌、テレビ、ラジオの企画、出演、執筆、コーディネート
◆ラーメンの歴史を変えた3店 「96年組」の画期的な特徴
「麺屋武蔵」
東京都新宿区西新宿7-2-6 K-1ビル1F
(1)おしゃれな店内レイアウトでBGMでJAZZを流す
(2)サンマ節でとったスープ(今は使っていない)
(3)「麺屋」という屋号を店名に付ける
(4)湯切りのパフォーマンス
(5)券売機の導入
「中華そば 青葉」
東京都中野区中野5-58-1
(1)豚骨スープと和風だしスープのWスープ
(2)ラーメンとつけ麺の両方を提供
(3)ラーメンとつけ麺を同じ麺で提供
(4)4品のみの超シンプルメニュー構成
(5)こってりだがしつこくない味で幅広い年齢層に受ける
「くじら軒」
神奈川県横浜市都筑区牛久保西1-2-10
(1)これまでにないコクのある清湯スープ
(2)独学でスープを開発
(3)「くじら飯」「チャーシュー飯」などサイドメニューの開発
◆去年オープンした新顔ベスト3 「2011年組」の画期的な特徴
「牛骨らぁ麺 マタドール」
東京都足立区千住東2-4-17 中村ビル1F
(1)牛骨ラーメン
(2)牛のうま味を生かしながら万人向けに仕上げる
(3)牛チャーシュー
(4)醤油、塩、油そばどれも絶品
「ソラノイロ」
japanese soup noodle free style
東京都千代田区平河町1-3-10
(1)王道の中華そばの他に、ニンジンスープを使った「ベジソバ」という全く異なるラーメンの2本立て
(2)カフェ風の店内レイアウト
(3)「博多一風堂」で修業した質の高い接客
「饗くろき」
東京都千代田区神田和泉町2-15
(1)和食で修業した店長が「和」の繊細さを演出
(2)塩は清湯系スープの細麺、 味噌はこってりドロドロ系の太麺という対極のラーメンを提供