フードコンサルティング 上場企業にモノ申す(24)ダイナック M&A活用で食事業態の強化を

2013.08.05 413号 06面

 ◆サントリーの子会社

 ダイナックは、酒類大手サントリーホールディングスが6割以上を出資する連結子会社であり、ダイニングバー「響」や居酒屋「鳥どり」、イタリアン「Papa Milano」、バー「THE ROSE&CROWN」などの外食事業を主軸として、全国各地の有名ゴルフ場のクラブハウス(レイクウッド、厚木国際ほか)、リゾート施設のレストラン(ガーラ湯沢、東京ドイツ村ほか)などの運営受託を手掛けている。

 機会があれば一度、同社HPをご覧いただきたいが、さすがサントリーのグループ力とネットワーク、歴史を反映した豊富な実績を有している。

 ◆株価は好調、されど、業績は?

 その一方で、業績面はここ数年、足踏み状態が続いている。直近では、2009年9月期が売上高378億円、経常利益2.7億円から、決算期変更を経た2012年12月期は売上高332億円、経常利益6.2億円と、赤字店舗の閉鎖やリニューアルが奏功して収益力は回復してきているものの、売上高は足踏み状態が続いている。

 また、足下の既存店舗の売上推移についても、今期(2013年1月~)に入ってからは、3月(前年比100.7%)を除き、現時点で確認できる直近5月までの平均が98.9%と、今ひとつパッとしない。

 つまり、売上構成のうち約9割を占めるレストラン・バー業態の伸び悩みが、そのまま全体の足踏み状態につながっているのである。

 ◆アルコール離れへの対応

 業績の足踏みはさまざまな要因が考えられるが、その中でも消費者のアルコール離れという大きな消費トレンドは、当社にとっては見逃せない要因の一つではないか。

 若者のアルコール離れと言われて久しいが、これに加えて仕事をリタイアしたシニア層も、さすがに現役時代ほどは飲まなくなるわけで、これから人口減少社会が本格化していく流れの中では、現状のアルコールをメーンとする業態構成のままでは早晩、ジリ貧に陥ってしまうであろう。

 もちろん、酒類大手の外食子会社のためアルコール業態が得意であることは強みであり、今後もサントリー子会社という位置付けは変わらないのであるから、その強みを維持しつつ、得意の業態開発力をもってすれば、食事性の高いダイニング業態の開発と展開は、決して難しくないのではないか。

 ◆M&A活用を

 以上の内容は、当然ながらダイナック社内でも議論はされていると思うが、食事性の高い新たな業態がなかなか出てこないところを見ると、内部で開発することは難しいのかもしれない。そうであるなら、思い切ってM&Aを活用して、外部の経営資源を取り込むことで大きな環境変化に対応していくことも、今後の選択肢に入るのではないだろうか。

 しかも長い間、非上場を貫いた親会社グループの「サントリー食品インターナショナル」が、遂に東証1部に上場するタイミングでもある。

 同社も今こそ、上場会社としての最大のメリットである、市場からの資金調達とM&Aにおける資本政策の活用に積極的に取り組み、再び成長軌道を取り戻してほしいものである。

 ◆フードコンサルティング=外食、ホテル・旅館、小売業向けにメニュー改善や人材育成、販売促進など現場のお手伝いを手掛ける他、業界動向調査や経営相談などシンクタンクとしても活動。

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